「いざとなればFIREできる」という状況をつくるための新NISA活用
いざとなれば生き方を変えられる、組織以外に個人でも活動できる――。
そのような自由度があると、精神的に余裕が生まれますね。
意義を感じたり、たのしんでいる活動(仕事)があると、日々も充実しやすくなります。
「なにかあったときにFIREできる」という状況をつくるために投資をしている方から、以下ご質問をいただいています。
題名: 新NISA制度について
メッセージ本文:
いつも楽しくブログを読ませて頂いております。
以前 PFFを全株売却した理由 や 「セミリタイア達成までインカムを追求したい」という気持ちでコメント、質問を取り上げていただいた みずがきと申します。
今回は表題の通り、新しいNISA制度についてご見解を伺いたく
2022年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」
これまで私は積立NISAおよびiDeCo枠の年間70万円弱をいわゆるインデックス投資の枠として確保しつつ、余剰金はほぼ全額を高配当個別株および高配当ETFの購入に充ててきま
投資目的はFIREではなく、なにかあったときにFIREできる
しかし、来年よりNISAが拡充されるにあたり
- 高配当株を選好する身としては1,200,000(NISA積
立枠)+276,000(iDeCo)円/年で合計150万円弱/ 年をインデックス投資に振ることは少々抵抗があるものの、税制優 遇のメリットは捨てがたい - 2,400,000(NISA成長投資枠)円/年は高配当個別
株/ETFで利用したいが…トータルリターンで劣ると考えられる 高配当株でこの枠を使って良いものか、 また外国税控除が死んでしまうのも気になる - 年間入金力>360万円 なのでNISA枠(1800万円≒360万円×5年)を最短で埋
めきるまでは成長投資枠も含めてインデックス投資に集中し、 NISAの枠を埋め終えてから改めて高配当に全力で振る/必要に 応じてNISA枠を売却→購入で高配当株へと入れ替えるべきか?
このような悩みが生じました。
これまでは『税制優遇枠はインデックスで合理的にちゃんと使い切
しかし、新しいNISAをどのように使っていくかに関しては、これまで非
もし穂高様がこれからセミリタイアを目指す立場であったなら、ど
新刊の準備でお忙しいとは思いますが、どのようにお考えになるか
投資目的別の新NISA戦略
「もし私がこれからFIREをめざして新NISAを活用する」ならば、以下がその目標別の戦略です。
- 1日でも早く経済的自由を達成したい
→ 成長投資枠で、高配当株に全振り - ある程度近い将来に達成したい
→ 成長投資枠で、高配当株+増配株や無配株など - 急がないけどいずれ達成したい
→ つみたて投資枠で、インデックスなど
「もし私ならどうするか」ということなので、私なら①の戦略をとります。その理由をまず前段で述べます。ご質問者さまのご事情としては、③に該当するかと思います。よって、後段で③について述べます。
1日でもはやく経済的自由を達成したい場合
まず、なぜ私なら①の戦略となるのか。
それは、「配当金>生活費 = 経済的自由」という状態が明解でわかりやすく、「経済的自由感」という実感を生むからです。
配当金というフローが、「経済的自由感」を生む
あくまで私の感覚にすぎませんが、資産というストックよりも、配当金というフローがしっかりあるほうが、経済的自由感を強く感じられます。経済的自由感は、心と消費に「余裕」を生みます。精神に余裕を生むには、まず「仕組み」を作ることが大切ですね。配当金は仕組みとして好適です。
結局、資産は大きく変動します。資産が増えるほど変動額も大きくなります。成長株が強いときもあれば、配当株が強いときもあるので、常に「ベスト」となる銘柄はほぼないので、水物感が強まります。
「家計が赤字にならない水準」を明確に認識できる
対して配当金はある程度計算できます。そのため、たとえば配当金が月に30万円あれば、「月に30万円お金を使っても、家計が赤字にならないなぁ」という明確な指標になります。
実際に以下①・②のどちらも経験した結果、「経済的自由の明確な指標となるのは、ストック(資産額)よりも、フロー(配当金)」とあらためて実感しています。
- FIRE達成時
配当株(高配当株・連続増配株)に投資して、「配当金>生活費」の状態 - FIRE後の現在
配当を気にせず投資して、「配当金<生活費」の状態
以上は私が実感したことなので、人によって異なる部分もあると思います。あくまで一例としてご参考まで。
注意点:ワナ銘柄に注意
注意点も申し添えます。
配当金を重視しすぎて超高配当(たとえば、配当利回り7%超え)の商品ばかりに投資をして、継続的に元本割れとなってしまっては本末転倒、バランスが必要ですね。
あくまで一定の成長性と配当のある銘柄(たとえば、配当利回り3〜5%)が有力な候補です。銘柄選びに自信があれば、個別株。なければ米国高配当株ETF(VYM、HDV、SPYD等)など、といった整理でよいと思います。
「新NISAで高配当株」:効率性か、精神的な充足感か。観点で異なる発想
補足
また、理論や効率性のお話としては、「配当金は部分的に利益を確定することに相当するので、NISAで高配当株に投資して配当にかかる税金を非課税にするのは、結局配当を出さないことと同じで意味があまりない」といった考え方もあるでしょう。
配当金を「効率性」という観点でみると、そういった発想につながると思います。
配当金を「経済的自由感」という観点でみると、効率性以外の精神的な充足感を見いだすことになると思います。
これも人によって、考え方は分かれますね。
急がないけど、いずれ経済的自由を達成したい場合
ご質問者さまは、現在のお仕事をたのしまれているとのことなので、③に該当するかと思います。
つみたて枠でインデックス、または高配当との二刀流が一案です。インデックスは全世界株式や全米株式がオーソドックスですね。「米国株が近年よかったので、次は新興国では?」と考えて、新興国の中でも発展余地が大きい「フロンティアマーケット【FM】」をトッピングするのも面白いとは思います。
いずれにしても、「何かあったときにFIREできる状況をつくりたい」とのことなので、平均点をねらう戦略でも十分ですね。「1日でも早く〇〇したい」といった切迫性があると、高成長など、なにかを平均から乖離させる(高得点をめざす)動機と必要性に駆られやすくなります。その動機や必要性がないのであれば、市場平均に沿う運用(=市場平均に連動するインデックス投信:たとえば、楽天・全世界株式インデックス・ファンドや、楽天・全米株式インデックス・ファンド)でも良いかと思いますよ。高配当を選好されていますから、インデックスと高配当の二刀流を新NISAでも続けるのも一案ですね。「迷ったら半々」です。
具体的な戦略
以上をふまえ、基本的な戦略として下記のとおりでよいかと思います。
年間入金力>360万円 なのでNISA枠(1800万円≒360万円×5年)を最短で埋めきるまでは成長投資枠も含めてインデックス投資に集中し、NISAの枠を埋め終えてから改めて高配当に全力で振る/必要に応じてNISA枠を売却→購入で高配当株へと入れ替えるべきか?
申し添えますと、「市場に過熱感があるときは、一時的に投資額を減らしてみる」といったことも選択肢として考えておきたいですね。経済的自由への切迫性がない以上、急ぐ必要はないので、無理に一気につぎ込む必要もなくなり、柔軟にできます。
なお、のちにインデックスから高配当に入れ替える場合は、2022年のように「インデックスは不調、高配当は底堅い」といったタイミングで入れ替えると、効率としては落ちます。2019~2021年のような「インデックスが好調、高配当が劣後している」といったタイミングで入れ替えたほうが、効率としてはよくなりますね。
もしそのようなタイミングに振られるのを好まないのであれば、どちらかに絞る、つまり「①インデックスを積み立てて取り崩すか、②高配当株から配当金を得続けるか」といった整理になると思います。
新NISAの概要
最後に、NISA拡充の要目を以下のとおり載せておきますね。
「つみたて投資枠」の120万円は投資信託にかぎられるので、投資信託ならば、「年間360万円」「限度額1,800万円」という枠をフルに活用できますね。
ご参考なりましたら幸いです。3度目のご質問ということで、ありがとうございました。
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以下のご相談も、資産形成の切迫性がない場合です。同様に、切迫性がなければ柔軟性が生まれます。
継続のためにはモチベーションも大切ですね。
インデックスから高配当へ切り替える場合、「投資スタイルが異なるものに乗り換える精神的リスク」と「乗り換えたときに税金が発生」といった側面がありますね。