【林業の現実】企業訪問・現場作業に従事してわかった13(7つの良い点と6つの大変かもしれない)のこと。
「林業って実際どんなことやってるのか、実態・現実・現場はどんな感じなのか」
という自らの問いにも答えるべく、色々体験してきました。私自身、自然に関わる仕事に興味があってきたことはご案内の通りです。
そこで、
- 林業企業訪問
- 現場での作業体験
- 自治体管轄局のセミナー
- 担当者への聞き取り
を実施、以下ご参考までレポートです。
- 林業とは
- 作業内容
- 人によってはやりがいに繋がりそうな点
- 人によっては大変そうだと思った点
なお、自治体は林務課、企業は林業関係の方々にうかがった情報が含まれます。
林業や山、そして自然に関わる仕事を魅力に感じる方は、ご一読してみるとイメージが少し湧くかもしれません(ただし、実態を全て把握しきれたわけではなく、あくまで表層的な考察に留まっている可能性もあり。ご留意いただければと思います)
林業ってどんな仕事?
まず、林業の概要から。
苗木 → 木を育てる → 木を収穫 → 製材 →(繰り返し)
以下4つのサイクルを回していくのが林業です。
- 苗木を植える
- 木を育て、森に
- 木を収穫
- 丸太などで販売
これらだけでなく、以下の「森の働き」を守ることも、大事な役割です。
森の働きを守る
森には、主に以下5つの役割があります。
- 木材生産
- 防災
- きれいな水を醸成
- 生き物の住み家
- 人々のやすらぎ
たとえば、これは農業をやっていて知ったことですが、松は流木になりやすく、どんぐりの木なら地中深く根を張るため、どんぐりの木を植えた方が防災・津波防止に役立つのだとか。
全体の作業流れ
では、以上を踏まえて作業内容を具体的に紹介です。
① 種を畑にまいて、苗木を作る
畑に種を蒔いて、苗木に育てていきます。
② 苗木を植える場所をつくる(地拵え/じごしらえ)
苗木を植える場所を作るべく、雑草などを刈ります。(刈り払い機・機械も利用)
③ 植林
春・秋に苗木を山に植えます。
④ 下刈り・つる切り・枝打ち
苗木の生育を妨げる雑草を刈り、幹に巻き付いたツル・不要な枝を除去。(枝が多いと太陽光を得にくく、害虫増)
⑤ 主伐・間伐
特定の木を健康に育てるべく、間伐(木の本数を減らし間引く)を経たのち、収穫(主伐)します。
伐採する年数は、カラマツ30年~エゾマツ60年など。
⑥ 搬出・運搬
伐採した木材を製材すべく、工場へ運びます。
以上が、俯瞰的な作業内容です。これらに付随してチェーンソーで木を切りだしたり、ハーベスタ・フォワーダ等の機械で実際の作業を行います。
林業の仕事まとめ
一旦ここで、林業の仕事内容について概念的にまとめると、以下の通り。
ただし、もちろん大変な点もあります。後述。
★林業について、魅力・やりがい等に繋がりそうな点
では、企業訪問・現場作業・セミナーを通じて、良いと思った点を7つ挙げます。これらは、人によってはやりがいに繋がりそうです。
① やる気があれば、数年でひと通りの作業を習熟可能
九州から林業のために移住をして、やる気が大いにあり、3年ほどで一通りの作業をこなせるようになった傑物もいます。
作業内容としては、「枝払い、ハーベスタ(林業機械)の操作、刈り払い」など、色々な作業があります。
なお林業における草刈りは通常の畑や田んぼの草刈りとはまったくの別物で、斜面や苗木の周りの雑草だけを刈り取るような作業を指すため、平地での草刈りよりも難易度ははるかに高い模様。
通常は2~3年かけて一通りの作業を学び、草刈りを個人でやりたい人は請け負いでやる形となる模様。この作業は請け負い形式で自由度が高く、成果主義みたいなんですよね。林業の中でどれか選べと言われたら、私はこれでしょうね。
ちなみに、通常の平地での草刈りについては、私も今夏よりオイル系刃形、ワイヤー系などの刈り払い機を用いてやってきましたが、これ自体は慣れればそんなに難しいことはないです。
② 人手不足ゆえ、雇用環境は「売り手市場」
とかく林業に従事する人は多いとは言えないでしょう。
そのため「やる気さえあれば、とりあえずは採用」と言う形が多いようです。
「やってみて、合わない人は3年以内に辞めていく、次に5年の壁がある」といった感じです。
実際にコロナ禍で失業した方々の、一部受け皿にもなっている現実が垣間見えました。
③ 仕事がなくなるということはない、とのこと
- 国有林は政府の入札で苗木の職員や造林・造材などを請け負う企業が決まります。
- 社有林は自身のタイミングで造林・造材を進めます。
「仕事がなくなるという事は無い」業態との由。(社長談)
コロナ禍であっても仕事は途切れず、むしろ人手不足という状況。社有林・国有林・道有林など苗木植えから製材まで、作業はいくらでもあるのだそう。
ちなみに、製材後は地域の体育館や公民館などの建築に使われたりと、公共性が垣間見えます。
これら背景には、以下の社会的意義も要因として関係してくるでしょうね。
④ 社会的意義が大きい
林業はチェーンソーなどを使うことから、危険なイメージもある一方、昨今荒れてきていると言われる山林を次の世代へ森林を保全し、継承するという社会的意義が大きい産業です。
金銭面でのみ同産業が語られるものではなく、事実、90%は補助金で賄っているという企業もあります。
「それだけ補助金を出さないと地産地消の木材の生産はマクロ的には難しい状況である」とも言えるでしょう。
また昨今は、継承者がいないことから山林を破格の値段で売りに出している事業者や民間人も多く、安価に購入できるというケースもあるようです。
しかし、ノウハウや技術を持った事業体が管理しないと、森林の保全もままならないといった側面もあります。
そういったことから、林業の会社は山林を買い進め、国土の保全を担っているという意義も。
こういった側面が、補助金や公共性の高い事業、そして前述の「仕事がなくなることはない」といった事象として表出しているのだと考えます。
また、補助金・公共性・社会的意義などに起因する安定性から、金融機関の融資もつきやすい環境。
林業の主な取引先
ちなみに、林業のイメージを持つべく、主な取引先も聞きました。以下の通り。
- 製紙
- 鉱業
- 材木
- 森林組合
- 素材
- 土木
- 各自治体/市町村
⑤ 自然と密接に関わりながら仕事ができる
基本的に現場はケースバイケースながら、国道から林道に入って車で10分ぐらいは林道走って到達できるような場所です。
そのため当然ながら現場の側では川のせせらぎが聞こえ、広葉樹いや針葉樹等は傍にあり、常に自然の息吹を感じる事が可能です。匂いも素晴らしく良いです。
逆に言うと大して興味がない人にとっては、可もなく不可もなく、といった現場環境かもしれません。
むしろ少し歩きにくかったり路面が泥でぐちょぐちょになっていたりします。これは数日前の降雨であっても、なかなか撥水されないために数日間泥だらけ、という状況はままあるとの由。
作業靴でそのまま車に乗り込むと車が泥だらけになるレベルなので、別途ビニール袋なので作業靴を格納することが必要です。
⑥ お昼ご飯も自然とともに
お昼ご飯については私が訪問した企業は基本的に、現場の車の中で各自お弁当を食べる形です。
社外の木陰に座ってお弁当食べるもよし、自分の車の中で食べるもよし、自由です。
⑦ 朝早く作業を始め、夕方前には退勤
会社によるものの、現場は基本的に7時から8時ごろから始まり、午後3時ごろには退勤するような形です。
人によっては
- 「家族との時間が増え大満足」と言う人もいれば、
- 「朝が辛い」と言う人もいますし、
- 「アフターファイブは近くの山でスキーや、カヤックをする」、
など、自然と近い環境ならではの楽しみ方をされている従業員もいました。
自然に近い仕事現場ならではの楽しみ方ですね。これは、ほかの業種にはあまりない部分かもしれません。
★林業について、大変かもしれない点
次に、実際に作業に従事したり見聞きしてみて、「人によっては、大変かも」と思った点を6つ挙げます。
① チェーンソー作業に従事する場合は、人によっては荷物は少し重いか
現場でチェーンソーのオイルが切れるたびに土場(拠点みたいなもの)へ戻ることができないので、リュックに約4リットルのオイル、そして自分の飲み物を携行することになります。
よって、荷物を背負いながらの移動となります。
ちなみに、一通りの作業の習熟したら、チェーンソー専業・機械作業専門など、作業内容が特化・分化していくので、全員がチェーンソー専門になるわけではありません。
② チェーンソーは果たして危険か
林業やる際は、必ずこの写真のような服装を着用することになっています。(特に下半身は着用義務あり)
この服の生地はチェーンソーが当たっても刃が回らずに止まるようになっている素材であり、それで切断されることは無いようです。
ただし間違った使い方をすると、肌を切断する際の反動で傷を負うような事故も過去にはあったのだとか。
これはどの機械や作業に関しても言えることなので当該産業に限ったことではないでしょう。
実際にチェーンソーを扱った感想
ちなみに、私も木材をチェーンソーで切って思ったのは、「最後の切り落とす段階で刃を入れる角度を適度に変える」というコツさえつかめば、大きな力は必要ありません。木の葉が飛び散るのは、フェイスガードで防御可能ですし、あとはちょっと音がうるさい程度です(笑)
ただ、チェーンソー自体はそこそこの重さあり。
③ トイレはその辺で
現場には仮設用のトイレを持ってきているわけではありません。そのため基本的に現場ではトイレは「その辺で」という形になるとの由。
女性作業員もいるのでどうしているのか私は不明ですが、少なくとも男性に関してはその辺でということになっています。
④ 週休1日の時期があることも
これはあくまで会社によりますが、技術力のある会社は、手広くやればやるほど利潤が出るケースもあることから、業務は活況。
必然的に休日出勤が増えることも時期によってあるそうです。
⑤ 個人プレーに至るまでは、職人化の男社会か
色々聞いててわかったのは、林業で個人プレーできるのは、2~3年の経験を経て一人前になった後で「請け負い形式での斜面の草刈り」でしょうね。
少なくともそれまでは、1チーム6人などで、20代~70代の方々と役割を分担(チェーンソー・切り出し・運搬・製材など)して1日中、行動を共にする形です。それぞれの得意分野で職人化した方々といったイメージです。
良くも悪くも、濃密な男同士の関係を築けるか。逆に言うと、自由で個人でやりたくて、こういった感じが合わない場合は、デメリットになり得ます。
⑥ 機械化ゆえに、座っている時間が長い
ハーベスタ、フォワーダ、グラップルなど林業機械を駆使して木材の切り出しや運搬などを行います。
チーム内の役割や、どういった作業に特化するかによって異なりますが、人によっては1日の多くの時間を機械の運転席で操作することになる人もいます。
機械ものが好きな人に適する一方、「座っている時間が長い」といった身体的影響に関する懸念を持つ方には、デメリットになり得るでしょう。
収入
ちなみに、同企業については収入は可もなく不可もなくといった形でしょうか。
初年に18〜26万ということで極端に低いわけでもなく高いと言うわけでもないと思います。
実際に従業員の方に聞いてみてもそうでしたが、あまりお金のためにと言うよりかは、仕事環境やアフターファイブ自然との関わりなどトータルで見るような形。
当たり前といえば当たり前ですね。
まとめ:その職業に、どれだけの魅力を自ら見いだせるのか
以上、あくまで私なりの観点ですが、林業の紹介および体験談でした。
もしご興味がある方は各自治体の振興局や林務課に問い合わせてみることが一案です。
管轄局には、地元の林業企業と関わりがあったり、セミナーを実施しているところがあるからです。林業について問い合わせることもできますし、別途ハローワークで募集をかけている企業もあります。
いずれにしても、やる気次第、興味次第といったところでしょうか。
「林業の魅力を自ら見いだす」といった気概がある人や、「とにかく好き」という人にとっては、非常に魅力的だと思います。結局はやる気次第であり、どれだけの魅力を自ら見いだせるかが重要かもしれないですね。
そういった方にとっては、上述した「大変そうな点」というのは、枝葉末節に類することかもしれません。
(追記)読者の方からのコメント:自伐型林業
いつも拝読しています。林業でいうと、私は自伐型林業というものに注目しています。大型機械を使わない小規模、少人数の山守スタイルです。
もちろんチェーンソーは使いますが、作業量の自由度やサステナビリティが高く、穂高さんにも合うような気がしています。
貴重な情報、誠にありがとうございます。
これは存じ上げませんでした。作業量の自由度など魅力的ですね。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone!
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「仕事を選ぶ際に、金銭要素を完全に抜ける」というのが、FIRE後の醍醐味の1つかもしれません。
自由を得てからが、真の(就職)活動が始まるといった解釈も可能でしょう。
雑草を抜くだけでも、なんだかんだ色々な発見あり。笑
コメント
いつも拝読しています。林業でいうと、私は自伐型林業というものに注目しています。大型機械を使わない小規模、少人数の山守スタイルです。もちろんチェーンソーは使いますが、作業量の自由度やサステナビリティが高く、穂高さんにも合うような気がしています。
いつもブログを読ませていただきます。
貴重な情報発信ありがとうございます。
三菱サラリーマンさんが、FIREした後の生活がとても気になっています。
特に今回の記事にあった林業です。
私は嫁と子供と3人で暮らしており現在は、都心に住んでおります。私と嫁は田舎で育ったという背景もあり、なるべく早くFIREを成し遂げ、嫁と子供と3人で田舎へ引っ越したいと考えております。
ただFIREし田舎に帰った後、どんな仕事をやろうか模索中で、まだ答えが見つかっておりません。(具体的に仕事を探す行動が出来ていないという事もありますが)
そんな中、三菱サラリーマンさんが林業に携わっている事がとてもびっくりしました。
私の実家はとても山奥にあり、山も所有しております。祖父が長年林業に携わって仕事をしており、現在の管理も祖父がしてくれています。林業は資産を繋いでいくリレーの様なものだと教えてもらい、お金をえるまでに3世代掛かると祖父に教えてもらいました。
私も山が好きで、父も健全な事から、いつかは林業をと思っておりましたが、なかなか具体的な行動が出来ておりませんでした。
そんな時に三菱サラリーマンさんの記事を拝見して、質問をしたくなってしまいました。
1.なぜ林業に興味を持たれたか
2.今後、林業に携わって仕事をされていくのか
3.携わっていくなれば、どのくらいの割合(週何回くらい)で働くのか
4.林業をビジネスとして拡大していけるのか
もし可能でしたらお答えいただけますと幸いです。今後の人生の参考にさせてください。
突然のコメント失礼いたしました。
こんにちは、いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
こちらの返答は、後日記事にさせていただきますね!
よろしくお願いいたします。