低金利に40年恵まれた米国株、高金利時代のS&P500とMMF

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40年にわたり低金利に恵まれた米国株、高金利時代のS&P500とMMF

2022年から米国株は「4%を超える高い金利が続いている」という新たな局面に入っています。

近年は長らく高いインフレが起きなかったことから、「低金利でもインフレは起きない」とまで言われていました。

ところが昨年、約40年ぶりの高インフレが起き、FRBも当初は「一時的なもの」と静観していましたが、のちに急速な利上げに転換し、インフレのピークアウトが続く今に至ります。

現在は、FRBは「すぐ利下げはしない」と表明し、市場参加者は「今年後半にFRBは利下げをする」と見込んでいる状態です。

今後、高金利が続く場合を想定して、過去の金利と株価、そして株式以外に何が投資候補となるか確認しておきましょう。

金利:1980年から2022年まで低下

下図は米国の政策金利(=FFレートと言います)の推移です。

米国の政策金利の推移

上図をながめると、「1981年頃から2022年まで金利が低下してきた時代」とわかります。

過去40年、米国株は金利の追い風を受けていた

株価を簡易的に表現すると、「金利が上がると株価は下がり、金利が下がると株価は上がる」となります。つまり、「金利が下がってきた過去40年間において、株価は金利の追い風を受け、上がりやすかった」と言えます。

2022年に起こったこと→「過去40年で最も高いインフレ」

物価上昇率(前年同月比)の推移

昨年から米国で起こったことは、40年来の高インフレ(=物価上昇率の高まり)です。

米国の政策金利(2010~2023年)

そのインフレを退治するために、FRBは金利を引き上げました。

高金利時代、米国株は成長したが、低成長

S&P500
低金利時代
(1981~2022年)
年率 9.0%
(136.3 → 4,677)
高金利時代
(1966~1981年)
年率 2.6%
(93.1 → 136.3)

上表の通り、高金利時代に米国株(S&P500)は成長したものの、低金利時代より低成長です。

物価上昇にも負け、米国株の実質リターンはマイナス

「年率2.6%ならプラスじゃないか」と思うかもしれませんが、上表はインフレを加味しない名目の数値です。高金利時代は、いわば物価上昇率が高い時期でもあり、インフレを加味して確認してみましょう。

物価上昇率の推移(1965~1982年)

  • 物価指数:31.8(1966年1月)
  • 物価指数:87.2(1981年1月)

高金利時代(1966~1981年)にS&P500は1.5倍になった一方で、物価は2.7倍になっています。つまり、S&P500のインフレを加味した実質リターンはマイナスであったことを意味します。

私たち日本人は日本に住んでいるので米国のインフレは直接関係ありませんが、インフレ通貨は理論的には減価するので、本来はドル安円高という形で関係してきます。

為替市場で起きたこと→本来インフレ通貨は減価(ドル安)、ところが現実は円安だった

ただし、現実には、

  1. 日銀による実質的な円安政策
  2. 原油価格の上昇を主因とした貿易収支の悪化
    (=実需面で円安要因)
  3. FRBの利上げ

によって円安ドル高が進んでいた、というのが為替市場において2022年に起きたことです。

高金利時代の投資対象の選択肢

今後金利が高止まりする場合、株式以外の選択肢として、格付けの高い短期証券に投資する投資信託「MMF」が挙げられます。

FRBの利上げによってFFレート(=短期金利)が高い時代は、短期債の金利が高いことを意味します。MMFの金利は短期金利に連動するため、MMFに投資することで高い金利収入を得られます。

たとえば、SBI証券が扱う米ドル建てMMFは、以下の通り現在は利回りが3.7%ほどと近年まれに見る高い水準です(なお、MMFは過去の傾向としてまれではあるものの、元本割れの可能性もゼロではないこと、および為替リスクに留意)

現在、市場は今年中の利下げを見込んでいますが、FRBは何度も否定しています(ただし、市場参加者は額面通りに受け止めていません)。仮にFRBが言葉通りに利下げせず高金利を維持する場合は、MMFから高い金利収入を得られる期間が長くなります。

まとめ

  • 2022年に起きたことは、40年来の高いインフレ
  • 同年、FRBはインフレ退治のため、短期金利を上げてきた
  • 1981年以降の約40年は、金利が下がり、株価が上がりやすい時代
  • 過去の高金利時代では、株価は低成長。物価が株価より上昇し、実質マイナス。
  • 今後、高金利が続く場合、米ドル建てMMFの金利収入も高まる傾向

個人的には昨年10月に、米国株の一部の個別株を選別して再び買いはじめ、金とともに当面は買い持ちの予定です。FXで適時為替ヘッジをしつつ、米ドルの現金はMMFに入れてもよいと考えています。

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