2021年テーパリング開始で、政策大転換となるか
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は27日のオンライン講演で、新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた雇用情勢は「(政策目標に向けて)明らかに進展した」との見解を示した。
9月3日に発表される8月の米雇用統計が好調であれば、早ければ9月下旬に量的金融緩和策の縮小を決める可能性もある。
FRBはリーマンショック以降10余年にわたってバランスシートを拡大させてきました。
下図はFRBバランスシートとS&P500の関係を示したグラフです(2002年12月~2021年8月末)。
ご覧のとおり、リーマンショック以降FRBは非伝統的な政策、つまり未曾有の規模で金融緩和を進めてきました。伴い、S&P500も一貫して最高値を更新。現在のFIREムーブメントの一因とも言える「米国株の力強い上昇」を描いてきたとさえ言えます。
イエレン女史時代に一時金融緩和縮小しましたが、コロナショックで結局バランスシートは再び急拡大したことがわかると思います。
現在は市中の国債のうち実に25%を中央銀行であるFRBが保有(日銀は50%超え)しており、今までになかった状態(まさに非伝統的な金融政策)が続いてきたと言えます。
S&P500もリーマンショック前の高値と比べても、実に3倍になりました。このリターンの高さの一因には、FRBの大規模金融緩和があるでしょう。
短期金利が抑えられることで債券と株式を比較して株式の高騰/バリュエーションが正当化されやすくなりますし、企業の債券・借入による資金調達等の負担も小さくなります。バリュエーションと、(一部業種を除く)業績/株主還元の双方が刺激されやすくなります。
さて、今後テーパリング(緩和ペース縮小)から、さらには金融正常化(利上げ、金融引き締め)まで本当に実現するのであれば、この10年のような絶好調リターンは期待しづらいでしょう。そればかりかマイナスリターンに警戒した方がよいレベルです。理由は上述の通りです。
今までが異常といえば異常で、金融緩和によって資本家は大いに富み、労働者へは恩恵が行き渡っていないのが現状だと思います。
いわば資本主義のいびつな状態が加速され、格差拡大装置としての性格が顕著に出たとも言えるでしょう。むしろ本来的には労働分配率(付加価値に占める人件費の割合)を今より上げないと格差拡大につながってしまいます。バランスですよね。
格差拡大は長期的には社会不安を拡大させることに歴史上高い確率で繋がってきました。ゆえに金融緩和縮小・引き締めによってたとえリターンが落ちたとしても、資本主義のいびつな状態を加速させないという意味でむしろ歓迎すべきことでしょう(実際は多くの投資家はリターンを求めたくなるでしょうが)。
いずれにしても、今までのリターンを前提に将来を描いたり、金融市場に過度に依拠していないか、一度チェックされてもよさそうですね。
保守的に構えすぎるのも微妙ですが、ある程度の保守性は投資でのメンタルや継続性において肝要と思います。
Best wishes to everyone.
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