今後、米ドル資産をどのようにしていくか

今後、米ドル資産をどのようにしていくか

「中長期的にはドル安」というリスク想定のもと、資産を米ドル建てに偏らせず、現物資産(コモディティや不動産)へ引き続き分散を続ける方針です(ただし、ドル安以上に円安が進めば、ドル円相場は円安ドル高にはなります)

ドル安要因としては、以下が挙げられます。

  • SWIFT制裁によるSWIFT離れ
  • 貨幣増発
  • インフレの継続
  • 双子の赤字、基軸通貨離れによって海外投資家からの財政ファイナンスの維持困難、通貨信認低下

まず今回のロシアに対する公然のSWIFT排除によって、米国の絶対的な金融面での影響力において、徐々に翳りが見えてくるシナリオを考えておきたいところです。

具体的には、中国やロシアを軸とした米ドルに頼らない経済圏の形成でしょうか。

米ドル・SWIFT経由で資金決済をすれば、経由銀行で資金の流れが把握される(後述)ので、安全保障の観点から、賢明な指導者ならば「脱・米ドル依存」はもともと考えていたとは思います。

特に中国が中心となって脱・米ドルの動き自体は以前から続いています。

まず中国の脱・米ドルが先鋭化・表面化したと感じたのは、2018年に中国がWTIに代わる原油先物市場の国内創設です。

この目的は人民元の国際化だけにとどまらず米国を中心とする国際金融市場への依存脱却・挑戦、そして米ドル基軸体制に対抗する橋頭堡とも考えられます。

2015年に既に人民元国際決済システム「CIPS」が創設されています。SWIFTとは別枠の国際決済システムが構築されてきました。昨今ではデジタル人民元ですね。

経済制裁で国家体制(レジーム)が崩壊する類例がみられない以上、米ドル以外の経済圏が勃興し、存在し続けることは可能なのでしょう。

SWIFTというものは、SWIFTコードなるものが存在します。国際決済の際に、たとえば日本企業であれば邦銀の先に経由銀行というものがあって、そのコードを用いて経由銀行(中継銀行とも)を通して決済されます。これは私自身もサラリーマン時代にそのような手続きを踏んで決済手続きをしたものです。

今後このCIPSまたはCIPSに相当するものの存在感が一定以上あり、相対的に米国を中心とする国際決済体制「SWIFT」の存在感が低下するシナリオが考えられます。

なぜなら、今般、米国がロシアに対する制裁手段としてSWIFTを利用したからです。

この米国の行動は諸刃の剣であるとも考えられます。なぜなら、これを見た諸外国は嫌でもSWIFTによって金融の首根っこがつかまれていることを痛感せざるを得ないでしょう(中国は確実に以前から承知していると思いますが)。

SWIFTに参じている限り、米国の意に沿わない国は「SWIFTからの排除」「資産凍結」という形で常に金融制裁をチラつかされているようなものです。そして今般の制裁により、有事の際、その制裁が執行されてしまうことが、事例として決定的になったということです。

この手の金融制裁は以前からイランに対しても行われていたとされるため、反米アラブ諸国も以前から脱・米ドルを模索していたと指摘されています。

何度か述べていますが、米ドルが基軸通貨であるからこそ、米ドルまたはグローバルアセットとしての米国債への継続的な需要があると考えられます。

貿易決済などの国際決済に米ドルが使われるからこそ、決済に用いたり決済で得た米ドルを米国債へ(再)投資する余地が潜在的に増えるわけです。その担い手となってきたのは対米貿易黒字を量産してきた日本、そして近年は中国であってきました。

このような構造があるからこそ、財政赤字と経常赤字の双子の赤字を垂れ流す米ドルの通貨としての信認が保たれやすくなってきたと考えられます。国際決済に伴い、継続的な需要が必ず存在するからです(ちなみに、米国債へのグローバルアセットとしての需要は、米長期金利の低下要因にもなります)

参考:蘇る米国双子の赤字問題 – NRI

逆に言えば、米ドル基軸通貨体制が怪しくなれば、米国の財政ファイナンスは海外から呼び込みづらくなることが想定され、米国の優位性の一角が瓦解することになります。

既に特定の中国企業やロシア系などを締め出したあたりから、イデオロギーの対立がある国や覇権国を争う国に対して、「自由で開かれた金融市場」ではなくなっています。

そしてさらにこのタイミングで重なったことが、米国のインフレです。インフレが起きれば、現地通貨の価値は相対的に下がることを意味します。

現在のインフレ水準は高進したカーター政権時代と同じ水準ながら、長期金利は当時よりはるかに低い値。金利がインフレ率よりも低位で推移するならば、引き続きインフレが継続する想定はしておきたいところです。スタグフレーションとなれば、FRBはまた金融緩和という劇薬に頼るかもしれません。

このように国際情勢を詳しく見ていくと、米国の状況は近年急速に変わってきています。

そして、私自身がこのように考えるということは、同時に同じようなことを考える人は部分的に一定数いるでしょう。

この現実が既に、潮流の一部を成し始めているとも考えられます。つまり、米国による金融制裁が諸刃の剣である負の部分(SWIFT排除により、米国が自らの金融的優位性を侵食してしまっていること)が既に具現化し始めているとも解釈できるということです。

過去の傾向はあくまで過去の傾向であって、残念ながら将来を保証するものではありません。

日本人の米国株投資家は、為替リスクを負って米国株へ投資することになります。ドル安になれば為替差損が発生します。

ではリスク回避行動としてどのようなことが考えられるかと言えば、通貨の分散、資産クラスの分散、コモディティや不動産などの現物資産への分散でしょう。

特に以下でも述べた通り、地方の拠点確保や食・ライフラインの自給向上をめざすことは、安全保障の観点からも重要でしょう。

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都市というものは、近代化された結果、逆にリスクに脆弱になったという皮肉な側面も見られます。

地方移住は、現物資産への分散という意味でも、有事の際のリスク分散の意味でも意義が感じられる行動です。

  • 湧き水、井戸水
  • 薪ストーブ、薪などの燃料
  • 自家菜園

以上のようなものは、地方では得やすく、そのような観点もふくめて土地を探していました。自分や家族の身は、政府に守ってもらうのではなく、自分たちでも守る必要がありますね。

「いざとなれば、貨幣経済に依存せずとも生きていける状態を構築すること」が、真の経済的自由であり、精神的自由でもあると私は思います。

本記事は、リスクを煽っているわけではなく、「投資をするのであれば、このようなテールリスク(可能性としては高くないかもしれないが、実際に発生すると甚大な結果を伴うリスク)を頭に入れた上で投資をした方が望ましいのでは」ということです。その方が、中立的な判断・思考に資するからです。

他者の美辞麗句やポジショントークは、貴方の資産を守ってはくれません。自分や家族の資産を守るのは、自分ですよね。

「過去パフォーマンスが良かったから、今後も大丈夫」という直線的な思考におちいらず、状況に応じてアップデートや頭の体操をしていくことも、ときに必要だと思います。

仮に米ドル基軸通貨体制が崩壊すればどうなるでしょうか。

かつての覇権国である英国・オランダの通貨もそうであったように、一旦のリセットなのでしょうね。

(とはいえ、人口学の観点からは、中国が覇権国に今後なるとは考えづらいところです。一人っ子政策の副作用ともいえる男女率は107と男余りが極端であり、出生率も急速に低下していることから、中長期的には財政は圧迫されやすいと考えられます。とすると、一極支配ではなく多極的な世界となるのか。

米当局も永遠に双子の赤字拡大が続けられるわけではなく、臨界点がいずれ来る可能性があること自体は承知の上でしょう。どのように軟着陸あるいは既存体制から新体制に移行させていくのか、というのを考えているとすれば興味深いところではあります。

ただ日本人からすると、冒頭でも述べた通り、ドル安以上に円安が進めば、ドル円相場は円安ドル高にはなるということです。

円安シナリオを想定する場合においては、米国株へ一定の資金を割くことは、為替の観点からは引き続き合理的な選択肢ということにはなるのでしょう。ただし株式という資産クラスの観点からは、FRBは確実に2018年の引き締め期より難しいかじ取りを迫られているということは言えると思います。

参考:米国株をさらに一部売却した理由

どちらのシナリオも踏まえても、「円とドルの両方に対して比較的中立的となる現物資産」の意義はやはりあると考えられ、分散を維持する予定です。

いずれにしても、結局のところ信頼できるのは、「自分たちの頭脳と身体と生存スキル」が重要であるという事実に帰着するだけ、とも言えるかもしれないですね。

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