米国債券【AGG】【BND】への投資に際してのリスクとは

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【AGG】【BND】米国債券への投資に際して、考えられるリスクとは

ペーパーアセットを2つに大別するならば、株式と債券が挙げられます。

債券(国債など投資適格級以上の格付けが高いものに限る)は株式に比べ、長期リターンが低い一方で値動きも小さい、という傾向がみられる商品です。

ちなみに、リターンを測る起点を「現在のような異例の低金利政策に突入する前の高金利時代」に設定すると、米国債は現在まで価格上昇が続いていることもあり、良好なリターンを示している時期も存在します。

以下はAGG・BNDなど米国債券/ETFへの投資リスクについてのご質問です。

考えられるリスクを挙げてみます。コロナショックのように「予期しないリスク」こそが市場に大きな影響を及ぼすものであり、そういった事態も想定しつつリスクを取りすぎないことがポイントと思います。

ご質問

題名: 余剰金の米国債への投資について

メッセージ本文:
三菱サラリーマン様

こんにちは。いつも楽しくブログ拝見させていただいております。
今回は投資初心者である自身の資産運用が適当かどうかについてご意見をお伺いしたくご連絡させていただきました。

[現状]
自分 53歳 サラリーマン 年収800万円(55歳でFIRE希望)
妻  49歳 サラリーマン 年収500万円(60歳まで勤務希望)
子2人 高校生

貯金  1億円
投資  投資信託2000万円
郊外持ち家(ローン完済) 資産価値(土地4000万円程度+建物)

現在、emaxis slim全世界株式、全米株式を月25万円づつ月50万円年600万を積み立て中です。

投資信託を10年で8000万円まで増やし、税引き後3%の運用益(240万円/年)が得られればよいと思っています。

ここで質問ですが、現金として持っておくよりAGG(BND)などをある程度まとまった額購入し、毎年それを切り崩しながら投資信託に回していってはどうかと思っていますが、この考え方についてどう思われますでしょうか?

AGG等の購入時の為替の影響が大きいと思いますが、それ以外の部分でのリスクが考えられましたらご教授いただきたくよろしくお願い致します。

全世界株式、全米株式を積み立てられているということで、一般的にはオーソドックスといえる運用対象ですね。

冒頭で述べた通り、あくまで資金管理は保守的にし、株式に資金を入れすぎないように注意したいところです。

「現金として持たずにAGG(BND)などをまとまった額で購入し、毎年それを切り崩して投資信託に回す」ことを検討されています。

以下にリスクと、そもそも予期できないリスクを挙げます。個人的には現状を拝見するかぎり、シンプルに現金から投信に回す形が一案と思います。

【AGG・BND】米国債券のリスク

ではAGG・BNDのような米国債・米国債券のリスクについて、以下みていきます。

 補足

※1 厳密には年限(2年債・10年債・長期債)によって期待インフレ率が及ぼす影響など若干話が変わってくるので共通する概論を記します

※2 ちなみに、AGG・BNDともに約40%が米国債で構成され、20~30%がモーゲージ債の中でも投資適格級以上の格付けが高い債券で構成されています。

為替の影響は相対的に大きい

私たち日本人からすると、まずは為替ですね。国債など格付けの高い債券自体の値幅は通常大きくないので、為替の影響は相対的に大きな要因として考えられます。

たとえば円高方向へ10%動けば、数年単位の債券リターンは軽く相殺されてしまう可能性もあります。

では為替以外の要素はどうでしょうか。国債・債券という金融商品自体の価格下落リスクとして、ほか以下が挙げられます。

  1. 債務上限引き上げ
  2. 財政赤字の拡大
  3. FRBの利上げ
  4. インフレ
  5. 中立金利の上昇

① 債務上限引き上げ

米議会で定期的に揉めていますね。

「連邦政府債務を無秩序に拡大しないこと」がその意図であると考えられるので、毎回茶番というか最終的には与野党で合意してきました。よほどのことがないかぎり、①はそこまで意識する対象ではないと個人的には思います。

② 財政赤字の拡大

国債というのは、政府が発行する支払い証書です。いわば「〇〇ドルを、いつまでに、返します」という借金の証書ですね。

もし仮に、返済が不可能であると多くの人々や機関が懸念するほど野放図に拡大することが予想されると、金利の上昇要因でしょう。金利が上昇すれば国債や債券の価値は相対的に下がります。

③ FRBの利上げ

FRBの金融政策によって短期金利は操作されます。FRBが利上げ(短期金利上昇)すれば、国債から得られる利金や価格は相対的に妙味が薄れます。

直近の利上げ時期AGGの価格推移を見てみましょう。

政策金利の推移:時事通信より

2016年から利上げに伴ってAGGの価格は下落、利下げに転じるとAGGの価格は上昇に転じていることがわかると思います。

とはいえ下げ幅は限定的で、せいぜい7%程度(112ドル → 104ドル)です。株式のボラティリティ(変動率)と比較すれば小幅ですね。

④ インフレ

インフレが起こると伝統的な金融政策としてはインフレの加熱を懸念して冷やす方向、つまり基本的には利上げに傾くので、これも同様に国債価格の下落要因になり得ます。

いずれにしてもインフレは債券と深い相関。名目金利=実質金利+インフレ率であり、インフレは金利と深くかかわる要素です。そして金利は債券と深く関わっています。

⑤ 中立金利の上昇

ほかに考えられる金利上昇シナリオとしては、「潜在成長率がなんらかの要因で上昇して中立金利もそれに従って上昇すること」が挙げられます。

中立金利とは
景気への影響が緩和的でも引き締め的でもない、景気に中立的な実質利子率のこと。中立金利(名目利子率から期待インフレ率を差し引いた実質利子率)は中長期的に潜在成長率に類似するとされています。

要は、米国の人口増加や労働生産性、技術革新などが有意に向上するなどなんらかの要因で潜在成長率が向上すれば、金利も全体として上がりやすくなると考えられる、ということです。

金利が上昇すれば、上昇する前に発行された国債は相対的に価値が下がる(利金が相対的に低い)ので、やはり国債保有リスクとして挙げられます。

※ 補足

たとえば単純化してみると、「1月に発行した国債は100ドル利金をもらえ、2月に発行予定の国債は150ドル利金をもらえます」ということになると、1月に発行した国債は相対的に魅力が乏しく映りますね。

⑥ 予期されないリスク

今までの1から5よりもうさらに重要なこととして、誰も予期していないことが生じたときのリスクです。

これが最もインパクトが大きいと考えられるリスクですね。誰かが予想できるリスクというのは、往々にして市場に対する影響というのは予期されていなかったリスクほど大きくないでしょう。

コロナショックのように誰も全く予期していなかったリスクが顕在化することが1番大きなリスクと言えます。この種のリスクにどう対応するか、それはやはりリスクを取りすぎないこと。具体的には資金を入れすぎない。レバレッジをかけない。こういった基本的なことはやはり重要ですね。

とはいえ、一般論としてはリスクを取らないとリターンを得られません。ですから、そのバランスを自分の中でどう定めていくかということがやはりポイントとなります。人によってその正解や比率は異なってくるでしょう。

まとめ

以上ご覧のとおり、金利がひとつのキーワードになると思います。

経済の体温を測るものでもあり、高すぎず低すぎず安定させることが中央銀行が意図する金融政策、というのが伝統的であってきました。

ただ昨今は非伝統的な金融政策とも呼ばれるように、一部の金利をマイナスにするなどきわめて低位な金利政策がとられてきました。

つまり現代においては国債の価格はある意味で高く保たれてきたわけで、切り取る年代によっては株式を上回るリターンを示すこともあります(長期的には株式が上回ってきました)。

そういった金融政策が大転換となれば、やはり国債価格には影響が生じます。インフレや利上げは国債価格の下落要因です。

たとえば以上のようなリスクを踏まえた上で、

  • AGG・BNDによるリターン/インカムを取りに行くのか、
  • 日本円の現金で持っておくのか、
  • コモディティや不動産へ分散するのか、

といった整理でしょうか。AGG・BNDであれば国債の利金同様に分配金が出ます。インカムを追加的に得たい場合は選択肢にはなってきますね。為替リスクを避けたい場合は個人向け国債(10年・変動)が選択肢になります。

繰り返しながら、インフレや利上げは債券価格(物価連動債のぞく)にとっては逆風です。

ご参考になれば幸いです。

Best wishes to everyone.

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公開日:2021年9月11日