【QYLD】NASDAQ100・カバード・コールETFとは。特徴とリスク。
QYLDというカバードコール型ETFについて解説します。
高配当で人気ですが、オプション取引がからむので要注意です。NASDAQ100の低迷が続く場合は、「高配当を維持できないリスク」や「継続的な元本割れ」の可能性も想定しておきたいところです。
題名: QYLD(ETF)について
メッセージ本文:
三菱サラリーマン様
初めまして。FIREを目指し、日々ブログで勉強させていただきます。
標題の件についてご見解を伺いたく存じます。
私はVYMなど配当重視の投資をしておりますが最近、QYLD(グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF)の存在を知りました。
何より高利回りであり直近5年リターンではSPYDも上回っているのが魅力ですが一方で、商品設計が難解で手を出しにくいと感じています。
「分からないものには投資しない」という格言もございますが、三菱サラリーマン様はこの商品をどのように評価されますでしょうか。
また、メインでなくともPFの一部の組み込むことについてどのようなご見解をお持ちでしょうか。
以上、よろしくお願いいたします。
【QYLD】は「投資するにしても、ポートフォリオの一部にとどめ、元本割れや減配リスクを承知の上で高分配を取りにいく」商品と思います。
- NASDAQ指数の下落が継続する局面では、従来の高配当が維持できないリスクは考えたい。
- NASDAQの値上がり益を捨てる代わりに手数料を得る商品設計。同指数下落時は、QYLDも下落を想定したい。
- 値上がり益をねらうなら、オプションが絡まないNasdaq連動の【QQQ】を買う方がシンプル。
詳しくは後述しますが、「定期つみたてには向かない対象」という印象は受けます。
カバードコール型ETFのメリット・デメリットは以下にまとめられます。
メリット
- 株価が横ばい・下落の場合、オプション料の分だけ追加的なリターンを得られる
デメリット
- 株価が上昇した場合、本来の値上がり益を捨てることになる
個人的には、メリットよりデメリットが大きく感じられます。理由は、オプション料は値上がり益より小さいことが多いからです。
【QYLD】NASDAQ100・カバード・コールETF とは
QYLDの商品設計がまずわかりづらいと思うので、記します。
- NASDAQを買い持ちしながら
- NASDAQをコールオプション(買う権利)を売って、オプション料をもらう
という仕組みです。カバードコールと呼ばれます。
「コールオプションを売る」とは
「コールオプションを売る」とは、「特定の価格で買える権利を、相手に売ることで、オプション料を得る」ことを意味します。
コールオプションを売ると、「上昇局面の値上がり益を捨てる代わりに、横ばい・下落局面では、オプション収入分が収益」になります。
つまり、QYLDは「NASDAQ指数(QQQ)が上昇するほど、QYLDは上昇分を犠牲にしてオプション収入を得ている」とも言えます。
「権利行使価格1,000円・オプション料50円」とすると、
コールオプションの売り手は「オプション料50円を買い手からもらう代わりに、1,000円で買える権利を買い手に与える」ことになります。
下表は、市場価格が①1,900円・②1,200円・③800円・④100円の4ケースで、コールオプションの買い手と売り手の影響を示したものです。
コールオプションの売り手は、
- 上昇局面:オプションを売ったことで本来得られた値上がり益が得られず(赤枠)
- 下落局面:オプションを売ったことでオプション料分だけ得している(青枠)
わかりにくければ、以下もお読みください。
- コールオプションを売るということは、「ある有価証券を1,000円で買える権利を売る」ことで、「手数料(オプション料)50円を得る」イメージです。
- 市場価格が1,200円に上がった場合
相手は1,000円で買える権利を行使する(=200円の利益を得られるから)ので、「オプションの買い手は200円の利益。一方、売り手は本来200円の値上がり益を捨てて、50円のオプション料を得る」ことになります。 - 市場価格が800円に下がった場合
オプションの買い手は1,000円で買える権利を行使しない(200円損するから)ので、売り手は「本来200円の値下がり分で損するところを、50円のオプション料を得ているので、損失は150円。つまり、コールオプションを売ったことでオプション料50円を追加的に得られた」ことになります。
いずれにしてもQYLDでいえば、「オプションの対象指数(NASDAQ)が上がるほど、コールオプションの売り手(QYLD)は、単純にNASDAQ指数を買い持ちするより損する」ということです。
グラフにすると以下の通りです。
- 繰り返しながら、市場価格が上昇するほど、コールオプションを売ったことによる機会損失が生じています。対して、市場価格が下落した場合は、オプション料が追加的な収益です。
QYLDとQQQの比較(オプションの有無による影響)
では、以下を比較します。
- NASDAQ100を買いつつオプションを売っている【QYLD】
- NASDAQ100連動の【QQQ】
トータルリターンは、QQQ(赤)に劣後しています。
QQQの価格は上昇してきたので、QYLDはQQQに劣後しています(繰り返しながら、QYLDはオプションを売ることで値上がり益を捨てています)。
ちなみに、オプション料はボラティリティが低いと下がる傾向があります。QYLDとしてはオプション料が下がれば、オプション料によるリターンは小さくなりそうです。
市場が横ばいの場合にもQYLDの設計上オプション料を得られますが、ボラティリティが低ければ、オプション料は下落が見込まれます。
まとめ
QYLDは、以下のように考えられます(オプションのカバー率は各ETFによると思いますが)。
- NASDAQ指数上昇で得られる値上がり益を捨てる代わりに、オプション料による収益を得る。
- リターンはNASDAQ指数に劣後。
- NASDAQ下落時は連れて下がるリスク。下落が続けばQYLDは減配の可能性も。
QYLDの場合、高分配の裏にこういったことを理解しておきたいところです。
また、先述のとおり【QYLD】はNASDAQ100のカバードコール型なので、対象指数【QQQ】よりトータルリターンは劣後しています。
メインでなくともPFの一部に組み込むことについてどのようなご見解をお持ちでしょうか
本記事で述べたようなリスクを承知であれば、部分的に組み込むかたちが一案と思います。ただし個人的には積極的にねらいにいく商品ではありません。理由は以下の通りです。
- 商品設計が複雑であればリスクは予察しづらい(例:リーマンショック前の証券化商品)
- 商品設計への理解が十分でない場合は投資対象を信じづらく、下落時にろうばい売りしやすい
- 弱気相場での減配リスク
(配当原資のうちオプション料が占める割合によります。また、「下落局面でもボラティリティが低くオプション料が一定で、かつオプション料が配当原資の多くを占めている場合」にかぎれば、配当維持は見込めますが、QYLDの配当原資は「オプション料の半分をNAVの1%という上限付き」ですしオプション料は原資産の価格次第で変動するので、やはり減配リスクが意識されます) - ETF設定日が2013年と短いため、調整局面におけるデータがやや乏しい
とはいえ、投資方針・投資対象・資産形成の切迫度というのは人によって千差万別です。少なくとも以上をご理解の上で納得して決められるとよいですね。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone.
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似たような商品に、SRET・PFFがあります。
SRETを理解するには、モーゲージ債を理解しておくとわかりやすいですね。
QYLD・SRETも、ややトリッキーなETFです。インカムを得たい場合は、VYMが代表的な商品にはなります。