セミリタイア・FIREをめざすための投資戦略【VTI・VYM・VIG】
セミリタイアをめざす方から、「以下3つのETFのどれを選べばよいか」というご質問です。
VTI | バンガード・トータル・ストック・マーケットETF |
VYM | バンガード・米国高配当株式ETF |
VIG | バンガード・米国増配株式ETF |
- 高配当株のパフォーマンス
- 各ETFの増配率
を踏まえて、以下回答いたします。
メッセージ本文:
穂高様、はじめまして。
工場勤務のサラリーマンをしています。現在31歳です。
(間違えて空メールを送りました。申し訳ありません。)
豊かな暮らしを行うにはどうすれば良いか、模索をしていたところ貴殿のブログに出会い、今では毎日チェックを行う程ファンになっ
私も支出の最適化を行い、株式運用を始めましたが、趣味化までに
最終的な目標はセミリタイア(配当金:15万/月)ですが、購入
SBI証券でVTIを積み立て投資しています。
これに、プラスして配当率が良いVYMの購入を考えていますが好配当(未来の高配当?)であるVIGと迷っています。(キャピ
下記の条件であれば、VYMとVIGどちらが良い選択でしょうか
目標:子供が学業を卒業する45歳あたりでセミリタイア(リタイ
配当金と合わせて25万円/月が理想。(現在は支出の最適化で1
- 年齢:31歳
- 家族構成:私、妻、子(1人)
- 購入銘柄 楽天証券 投資信託(S&P500):33333円
投資信託(米除く世界):16666円
SBI証券 VTI:8株/月(積み立て購入):現在の価格で約15万円
これに残り10万円があり、何を買おうか迷っています(NISA枠10万/月)
現在の資産額と資産比率としては、現金800万、株などの金融商
ゆるやかに、ポジションを移行している状況です。
配当金生活が目標なのに購入している銘柄が低配当または投資信託
アドバイスを頂けたら幸いです。よろしくお願い致します。
上記ありがとうございます。支出の最適化も活用されているということで、なによりです。
では、以下回答いたします。
- はい。趣味化していなければ、ETF・投資信託で十分です。
- 「VTI+VYM」か「VTI+VIG」を迷ってらっしゃるということで、バランスの取れたポートフォリオを考えてらっしゃると思います。
- セミリタイアまでの期間が14年あります。10年以上あれば、VYMと並んでVIGも選択肢です。(ただし、実はVYMの増配率が一番高いです、後述します)
まず、上記回答の背景ともなる「高配当株のパフォーマンス」を振り返っておきましょう。
2018年までの高配当株は、市場平均並みだった
この2年ほどで投資を始めた方は、意外に思うかもしれません。下図は2018年までのVYMとS&P500のトータルリターン推移です。
青:VYM 赤:S&P500
2018年まで「VYMは、市場平均並みのトータルリターン」でした。
ところが、2018年以降、徐々に変化が生じます。
趨勢を変えたのは、GAFAMです。彼らの台頭は、Game Changeと言ってよいほどの変化を生みつつあります。
コロナショックで顕著に開いた、高配当株とS&P500の差
下図は、2020年12月まで期間を伸ばしたチャートです。
青:VYM 赤:S&P500
緑丸で示した2018年から、VYMとS&P500の差が出始めました。この差が顕著となったのは、コロナショックです。
- コロナショックでは、それまで見られた「高配当株の下方硬直性」が見られない銘柄が複数みられました。
こういった、従来には明瞭に見られなかった動きが、コロナショックで顕著に出ました。
さて、「市場平均と高配当株のトータルリターン比較」という観点では、以上を踏まえた上でここからどう見るかが分かれ道です。以下①と見るか、②と見るか。
- 高配当株のパフォーマンスが悪化した2018年以降のターンが今後も長期化する
- 栄枯盛衰、いずれターンは従来の傾向に回帰する
- ①と見る方は、VTI・QQQなど、GAFAMを大きく組入れたETFが好適
- ②と見る方は、VYM・HDVなど、従来通り高配当株ETFが好適
当然ながら、どちらの戦略が正しくて、間違っているわけでもありません。要は、どちらにBETするのか。そして、どちらが自分がろうばい売り(…※)に走りにくいのか。もちろん、二刀流もアリです。
※…なぜここで「ろうばい売りに走りにくいのか」と記したかと言うと、米国株へ長期投資するということは、「右肩上がりの市場であることに賭ける投資行動」だからです。その前提下、ろうばい売りは機会損失に繋がる、という論理展開になるからです。
以上を踏まえた上で、お決めになるとよいのではないかと思います。
※なお、上図で用いたトータルリターンは税前(配当に係る所得税・住民税・米国での現地徴収税が引かれる前)です。外国税額控除(米国での現地徴収税を還付する作業)の手間を省き、デメリットを回避したい場合、東証上場のS&P500連動ETF【1655】【2558】が好適です。
VTI・VYM・VIG 増配率:意外に高いVYM
さて、14年後の配当金生活をめざしていらっしゃるということで、次に各ETFの増配率を見てみましょう。
VIG | VYM | VTI | ||||
分配金 | 増配率 | 分配金 | 増配率 | 分配金 | 増配率 | |
2020年 | 2.30 | 7.6% | 2.91 | 2.3% | 2.77 | -4.7% |
2019年 | 2.13 | 4.7% | 2.84 | 7.3% | 2.91 | 11.5% |
2018年 | 2.04 | 6.2% | 2.65 | 10.3% | 2.61 | 11.2% |
2017年 | 1.92 | 5.1% | 2.40 | 8.8% | 2.34 | 5.8% |
2016年 | 1.83 | 0.4% | 2.21 | 2.7% | 2.22 | 7.2% |
2015年 | 1.82 | 14.8% | 2.15 | 12.6% | 2.07 | 10.6% |
2014年 | 1.59 | 14.2% | 1.91 | 9.1% | 1.87 | 11.7% |
2013年 | 1.39 | -1.6% | 1.75 | 9.8% | 1.67 | 7.0% |
2012年 | 1.41 | 20.5% | 1.59 | 20.0% | 1.56 | 26.8% |
2011年 | 1.17 | 11.4% | 1.33 | 21.6% | 1.23 | 7.4% |
平均増配率 | 8.3% | 10.5% | 9.4% |
- 減配:VIG(2013年)、VTI(2020年)
- 増配率:VYM > VTI > VIG
VTIはいずれ高配当化しますが、実はVYMの方が増配率はやや高いです。この傾向が続くとすれば、インカムを追求するならVYMです。
ただし、よりキャピタルに重きを置き、さらに2018年以降のトレンド(高配当株が市場平均に劣後)が続くシナリオに賭けるならば、VTI+VIGが一案です。
まとめ
ポイントを以下再掲しますね。
- 高配当株のパフォーマンスが悪化した2018年以降のターンが今後も長期化する
- 栄枯盛衰、いずれターンは従来の傾向に回帰する
- ①と見る方は、VTI・QQQなどが好適
- ②と見る方は、VYM・HDVなど、従来通り高配当株ETFが好適
- VTIはいずれ高配当化しますが、実はVYMの方が増配率はやや高いです。この傾向が続く場合、インカムを追求するならVYMです。
- ただし、よりキャピタルに重きを置き、さらに2018年以降のトレンド(高配当株が市場平均に劣後)が続くシナリオに賭けるならば、VTI+VIGが一案です。
こういった整理が可能です。以上を踏まえ、「どちらのシナリオに賭けるか」という観点でお決めになるとよいのではないでしょうか。
いずれにしても、
- VTI+VYM
- VTI+VIG
という選択は、大きく外さない投資対象であり、そこまで決定的な差を生むことは考えづらい投資対象であることも、申し添えますね。
ぜひ、達成されることを祈念しております。ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone!
物事は多角的に見る必要がありますね。単一の対象ではなく、あくまで比較することも肝要です。
拙著でも述べた通り、投資の方法論は今やほぼ確立しています。あとは入金力を強化して実践するだけ、という状況と言えます。
VIGについては、以下に詳述しています。
コメント
質問を取り上げて頂き、感謝申し上げます。
上記の情報を基に、年末年始の期間悩みに悩んで
VTI+VYMの組み合わせで落ち着きました。
今年もブログを楽しみながら拝見しますね。
非常に参考になる情報、ありがとうございました!