【数字は麻薬】投資が自己目的化せず、数字に振り回されないために【投資は手段】

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投資が自己目的化する例は、散見されると思います。

資産運用はあくまで手段なわけですが、躍起になりすぎると好ましくない側面も顕在化すると思います。

自己目的化は往々にして当人は気づきにくいですね。そのため、そうなりやすい時期・背景を客観的にとらえておくことが肝要と思います。下段に詳述します。

そして、数字は「追い求めるものではなく、あとから付いてくるもの」と考えるのも1つですね。

念の為、自己目的化の意味は、下記の通りです。

自己目的化(じこもくてきか、英: activity trap)とは、ある目的のためにたてた「目標(値)、達成のための手段、あるいは具体的な行動など」が、いつの間にか「目的」にすり代わり(そして概ね、本来の目的は忘れられ)あるいは逆効果の、目的に反する事態に陥ること。

(Wikipediaより)

【数字という麻薬】投資が自己目的化しないように、数字に振り回されないためには。

ご質問「投資の目的・手段」

ご質問

題名: 投資の目的について

メッセージ本文:
初めまして。

三菱サラリーマンさんのブログを2年ほど読んでおり、大変勉強になっております。
本当にありがとうございます。

私は資産運用歴3年の28歳(男)です。投資の目的と手段についてご意見を伺いたいと思い、連絡いたしました。

①投資の目的

資産運用を3年間していることもあり、家族や友達に資産運用のアドバイスを求められることが多くなりました。

そういった機会に、私自身も資産運用を始めた頃そうでしたが、投資をすることが目的であったり、投資をして金儲けをすることが目的になっている人が多いと感じています

しかし、私は投資とは目的ではなく、あくまで手段だと考えています。つまり、自分や自分の家族が理想とする生活と将来自分たちが送るであろう生活のギャップを埋めるものが投資だと思っています(家計管理や副業等も)。

最近の株価暴落で大きな含み損に悩んでいる方は、金儲けが目的であるにもかかわらず、逆の方向に進んでいるように感じているのではないかと思っています。

しかし、特に長期投資家は、株価が暴落しても、埋めるべきギャップ(理想と現実)に変化がないのであれば、悲観的になることも、取るべき手段を変えることもないと思っています。

最近、アドバイスをした家族が金儲けのチャンスとばかりに、意気込んでいる姿を見て、少し不安になり、投資の目的についてご意見を伺いたいと思いました。

(後略)

ありがとうございます。後略以降は、別記事「30年に渡る長期的な資産運用を考える、投資対象・ポイントとは。」にて回答しています。

私自身も資産運用を始めた頃そうでしたが、投資をすることが目的であったり、投資をして金儲けをすることが目的になっている人が多いと感じています

そうですね。投資が自己目的化しやすい傾向は実際に見られると思います。その背景となる観点は主に2つあると考えており、以下です。

  1. 金銭の重要度が高いフェーズ・低いフェーズがある
  2. 数字という麻薬

①金銭の重要度が高いフェーズ・低いフェーズがある

人にもよると思いますが、以下フェーズが時期によってあり得ます。

  1. 金銭の重要度が高い時期(または高く感じる、高いと錯覚した時期)
  2. 金銭の重要度が低い時期(または低く感じる、低いと錯覚した時期)

金銭の重要度が高いフェーズ・低いフェーズに分かれる背景として、以下関係しています。

  1. 目標の達成度(または、余裕・余白の程度)
  2. 価値観

目標の達成度

たとえば、私はセミリタイアに至るまでは、金銭の重要度は今より「相対的に」高かったと思います。なぜなら、セミリタイアへの渇望が強烈だったからです。

セミリタイア達成前の時期も、「若年期における自由な時間」に絶対的な価値を置いています。つまり、金銭の重要度は時間的価値に比べて低かったです。低かったですが、セミリタイアへの渇望が強烈なことから、金銭的な重要度は今より「相対的に」高かったわけです。

たとえば、自然豊かな場所ではお金のこととかどうでも良くなるとある通り、絶対的な価値として「自然豊かな場所」や「時間」に重きを置いていることが明瞭なものの、「配当を増やすことに全力を注ぐ」という金銭に対する行動も注力的であった

しかし、目標を達成すると、結局資産運用・株式投資は手段に過ぎないことが、実感として表出します。

  1. 目標の達成度で浮き彫りになる具合も変わる(邁進する時期は、自己目的化しやすい)
    あるいは、
  2. 余裕・余白が生まれ、より冷静に客観視する余地が生まれた

のだと、私は結論付けています。

今振り返ると、そう思います。そのため、そういう「金銭的な行動に注力する時期・フェーズ」というのは、時期によってあるのだと思います。

ですから、目標に邁進する時期、そして達成に金銭が一定程度必要であるならば、仕方ないことなのかなとも思います。

価値観

高消費生活を謳歌したいという価値観を持つ人は、やはり必然的に金銭の重要性が、相対的に高まりやすくなります。

価値観なので、良い悪いではありませんね。ただ、高消費を志向する場合、投資は自己目的化しやすくなります。

なぜなら、金銭で得られる快楽・金銭の重要性に対して、絶対的または相対的に高い価値を置きやすいからですね。

もし、この金銭的価値観が明確に変化すれば、冒頭で述べた以下2つの時期が、その時点で明確に区切られることになります。

  1. 金銭の重要度が高い時期(または高く感じる、高いと錯覚した時期)
  2. 金銭の重要度が低い時期(または低く感じる、低いと錯覚した時期)

繰り返しながら、個々人の価値観なので基本的に「良い・悪い」という判断軸にはなり得ませんが、しかし、拙著でも触れていますが、投資が目的化すると本来の目的を見失いがちであるのも事実です。

ここは、個人的にはよくよく気を付けた方がよいと思います。以下で述べる通り、自分で気づいていない場合が多いからです。

②数字という麻薬

私が考えるに、数字は数字なりの魅力というか魔力に似たものがあって、資産運用・株式投資をしていると、必然的に数字で語られることが多くなります。しかしこれには注意が必要です。

株価はそもそも経済的な要素や人々の心理が1つの数字として集約されている値ですし、投資のパフォーマンスや優劣・資産も、数字が尺度として使われることが一般的です。ゆえに必然的に数字と接し、数字を扱うことが増えます

しかしこれらパフォーマンスや資産などの「数字」に躍起になっているうちに、いつのまにかそれが自己目的化してしまう傾向が散見されます

資産額や配当額を意識的に追うフェーズは終わったと思っています。現行資本主義が根本的に覆らない限り、数字は後から付いてきます。

数字ばかり追ううちに、資産運用や金銭など、本来手段として有用なものが、いつのまにかそれ自体が目的となってしまうことがあります。これは注意が必要です。

たとえば、投資に熱を上げすぎて、家族とのコミュニケーションを欠いているような場合は、一時的ならまだしも継続的となると、ちょっと冷静に立ち止まって目的を見つめなおすのも一案かもしれません。

数字はわかりやすいがゆえに、扱い・接し方に注意

私は「数字」の扱い方には、注意を要すると思っています。

数値は客観的な指標になり得ますし、有用性があります。

一方で、数字(リターン・財務状態・指標・偏差など)を信奉しすぎると、理論に偏って実践的ではなくなる弊害もあります。バランスよく数字と接し、扱うことが大事と考えます。

数字ってわかりやすいですね。

  1. 特定の主張を補強する客観的な値として示す
  2. 本来おぼろげである事象を定量化・可視化する

ことも可能です。

しかし、「わかりやすいものは、わかりやすいので影響もされやすい」、これまた事実と思います。

おそらく誰かを洗脳する際、私はやったことないので知りませんが(当たり前や!笑)、シンプルでわかりやすい概念・理念・フレーズを、なんらかの形で繰り返し刷り込ませるのではないでしょうか。

マーケティングの手法を見ていても、「わかりやすく相手に訴えかけるのは、わかりやすい方が影響もされやすいから」でしょう。

まとめ

投資の自己目的化は、起こりやすい時期・起こりにくい時期の2つに大別できます。①が起こりやすい時期と考えます。

  1. 金銭の重要度が高い時期(または高く感じる、高いと錯覚した時期)
  2. 金銭の重要度が低い時期(または低く感じる、低いと錯覚した時期)

そして、この2つの時期の背景に、以下2つの要因が挙げられます。

  1. 目標の達成具合
    – 目標への邁進時期は、自己目的化しやすい(目標達成に金銭が一定程度必要なら、やむなし)
    – 達成すれば、余裕・余白が生まれ、より冷静に客観視する余地あり
  2. 価値観
    – 消費志向・金銭に対する重要度の度合い

また、数字というものの特徴自体が、自己目的化に作用します。

数字には以下特長(①・②)がある一方で、以下(③・④)の傾向が見られます。

  1. 特定の主張を補強する客観的な値として示せる
  2. 本来おぼろげである事象を定量化・可視化できる
  3. 信奉しすぎると理論と実践のバランスが崩れやすい
  4. わかりやすいがゆえに、潜在的に影響も受けやすい

以前も書きましたが、数字にこだわりすぎるのも考え物です。「追わずともあとから付いてくる」ぐらいの鷹揚な気持ちで構えるのも一案と思います。

「傾向と対策」という言葉、聞いたこともあるかと思います。上述の自己目的化・数字の傾向を認識し、よりバランスよく自分を俯瞰したいところですね。

みなさまが、バランスよく資産運用されることを、願っております。

ご参考になりましたら幸いです。

Best wishes to everyone!

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