「株式投資を始めようと思っているが、今を豊かにしたい」という20代後半の方からご質問に2018年に回答した記事です。
確かにそのような価値観もありますよね。
株式に長期投資し、再投資を続けていくということは、いわば将来に対して種を蒔いているわけです。私は20代は種まきの時期と位置づけ、実際にそうしてきました。
一方で、20代を種まきの時期と位置付けるよりかは、金銭的にも目一杯使いたいという方もおられると思います。これは価値観の問題なのでどちらが良い悪いという類のものではありません。
おすすめできる手法としては「株式を購入し、配当金を気前よく使う」という形が一案と思います。
将来に対して種を蒔きつつも、「今」倹約せずに、配当金を気前よく使うことで、消費と投資のバランスを取るかたちです。
株式投資で「老後ではなく、今」を豊かにする方法とは
遅ればせながら今から投資を始めようと思っています。20代後半です。定年後の資金もそうですが、どちらかというと今をもっと豊かにしたいです。
まずなにから始めたらいいでしょうか。株の口座は開設済です。
老後にお金が沢山あるのはそれはそれで好ましいことですが、若い時にあればなお望ましいかもしれません。
「遅ればせながら」と記載されていますが、思い立ったが吉日、何事も遅すぎることはないと思います。
さて、
- 証券口座は開設済
- 今を豊かにしたい
ということなので、株式投資をベースに話を進めます。
たとえば「株式(VTI・VYMなど)を毎月給与から生活費を差し引いて貯蓄できる額を淡々と機械的に積み立て、受取配当金を全額気前よく使う」のが1つの解と思いますが、どうでしょうか。
株式というのは、保有していると配当が払い出されます。
企業が倒産すれば株券は無価値になり、紙くずになります。一義的にはその「無価値化リスクを負って株式を購入し、企業にリスク資金を供する対価として、企業が事業で得た利益の一部を配当として還元してもらう」と解釈はできるでしょう。
リスク資金を提供すると言っても、厳密には既に流通しているものの所有者が移転するだけということにはなりますし、あくまで利潤を生み出すのは資本家ではなく労働者であることも申し添えます(ゆえに個人的にはもっと労働者に利潤が配分されるべきと考えます)。
受取配当金を、全額使ってしまえば良い
今を豊かにする方法、それは「配当を受け取り、全額使う」というかたちです。
例えば、400万円をVYMに回せば、税引後年間で約10万円の配当金を受け取れます。
10万円あれば結構色んなことできますね。
10万円あれば、2000円の高級ランチに週に約1回(年間50回)いけます。
湯河原の超高級旅館に1泊できます。
配当金であれば、消費する際に精神的に気負いにくいのではないでしょうか。
企業が、事業運営を行うことで利潤を得て、それを原資として(会計論的に言えば)株主資本の1つである利益剰余金という勘定科目から配当金という形で株主に分配します。
実質的には自分の財布な訳ですが、とはいえこの形であれば遠慮なく使いやすいと思います。
臨時収入というご褒美として配当金を捉えるわけですね。
とはいえ、あくまで果実(配当金)のなる幹は残す
もちろん、株式投資をせずに給与を全額消費してしまえば、近視眼的には物質主義・刹那主義的な人にとっては「今を豊かにする」ということにはなるのでしょう。
しかしそれではいつまで経っても
- 稼ぐ→使う→稼ぐ→使う→・・・
というサイクルにはなりそうです。
給与という形で「将来の果実を生み出す可能性のある樹木の種子」を得て、それを消費するのか種をまくのか。
株式投資を続けていれば、近視眼的には使えるお金は少なくなるものの、配当金は得られます。それを「今を豊かにしたい」という願望によって消費に回しても、果実の大本となる幹を切り倒すことにはならず、果実を食べるだけです。
幹はそのまま残り、また明くる年に配当金を受け取ることができます。
つまり、将来に対して種を蒔きつつも、過度に「今」倹約せずに、配当金を気前よく使うことで、消費と投資のバランスを取るという戦略です。
こびと株さんなんかは、まさにそのタイプと思います。
こびと株さんスタイルだ!【便乗宣伝】
— こびと株.com (@kobito_kabu) October 11, 2019
まとめ:今を豊かにするのか、将来を豊かにするのか
資産運用以外にも言えることですが、世の中にはよく「トレードオフ」という関係が存在しますよね。
一方を優先させると一方は成り立たない、つまり両立はできないことです。
例えば、今回のご質問で言えば、「いまを豊かにしたい」ことと「将来を豊かにしたい」ことはよほど原資がない限り、同時に達成するのは難しいですよね。
いまを豊かにしたいなら、配当金は全額使っちゃうのも一案ですし、先の将来を豊かにしたいなら、配当金は再投資して、更に果実を大きくするのが一案と思います。
いずれにしても、ご自身の価値観に沿って、投資戦略ならびに配当金の扱いも柔軟に決めていくこと、肝要と思います。
Best wishes to everyone!
配当収入を増やしたいのであれば、ETFではなく個別株も選択肢ですが、これはなかなかリスキーでもあります。ETFの方が銘柄数・入れ替えの観点においては、一定のリスク分散にはなるでしょう。
配当金という資産所得を増やすには、なんだかんだいかに貯蓄を増やすか、ここに尽きます。これもある意味トレードオフですよね。
いずれにしても自身の価値観を明確化しておくと、投資方針も人生設計も明確な1本の大きな幹が育ち、そこから派生していけば良いだけですね。