【VYM】バンガード・米国高配当株式ETFは、安定感が光る米国高配当株ETF
VYM(米国高配当株ETF)とは
VYMは、ETF(上場投資信託)です。
ETFとは、色んな企業の株式の「詰め合わせセット」です。個別株や投資信託とのちがいは、以下の画像をご覧ください。
ETFへ投資することで、個別株のように1社1社の決算を分析せずとも、「安い手数料で、手間なく、分散投資」ができます。
VYMは、ETFのなかでも「分配金を多く出すETF(=高配当株ETF と言います)」です。以下画像をご覧ください。
VYMは、こんな人に適しています
そんなVYMは、以下のような人にとって選択肢になります。
- 今後も米国企業に賭けたい
- ある程度の元本成長を期待したい
- 3%ほどの高配当を得て、増配も期待したい
- 配当金を生活の足しにしたり、経済的自由を得たい
- 「税負担の先払い」になっても気にならない
① 今後も米国企業に賭けたい
投資とは、「投資先が成長していくことに賭ける」ことを意味します。
VYMは、米国の成熟企業で構成されます。つまり、VYMへの投資は、「米国の成熟企業が今後も成長することに賭ける」ということです。
② ある程度の元本成長を期待したい
VYMは、2006年に設定されてから、2022年末時点まで、平均して年間 8.0% のリターン(税前)が得られました。100万円を投資すると、年間8万円得られたということです。
過去の実績が今後も続くとはかぎりませんが、ひとつの参考値にはなりますね。
③ 3%ほどの高配当を得て、増配も期待したい
分配利回りは過去平均3.1%です。また、増配率が高い傾向(過去平均 8.5%/年)です。
そのため、中長期目線で分配金を多くほしい人にとって選択肢になります。
税金を考慮すると、分配金の手取りは2%ほどです。
④ 元本の取り崩しに抵抗あり、配当金で心地よい出口戦略にしたい
分配金の出ない投資信託では、老後などに一部を売却して取り崩すことになります。
一方、ETFは自動的に分配金が振り込まれるため、株数を減らさずに定期収入を得られます。このような心地よさを重視したい人や、老後に配当金が自動で払い込まれる「じぶん年金」を作りたい人に適しています。
- 投資信託
自動または手動で売却額を自分で決めて、取り崩す
(=保有口数が減る) - ETF
分配金が自動で出る
(=保有口数は減らない)
⑤ 配当金で生活の足しにしたい、経済的な自由度を上げたい
配当金は定期的に振り込まれるため、生活の足しやプチ贅沢にも使えますね。
「配当金>生活費」の状態になれば、現行資本主義が継続するかぎりは、お金がほぼ減らないフェーズに入ります。
⑥ 税負担の先払いになっても気にならない
分配金(配当金)を受け取ることは、「一部の利益を確定すること」に相当します。
利益確定の際に、米国株は約30%(国内 20.315%、現地 10%)の税金が天引きされます。
分配金が出ないタイプの投資信託ならば、この 9,000円 の税負担を解約時まで先送りできます。この「税負担の先送り」をしたい人は、VYMなどの分配金が出るETFよりも、投資信託のほうが適しています。
過去の傾向
過去の傾向は、以下の通りです。
過去の傾向 |
① コロナショックでは、高配当株ETFの中で安定感あり |
② 増配率が高い(VTI・VIGより高い) |
③ 分配利回りは、高配当株ETFの中では低い |
④ 2018年以降、トータルリターンは S&P500 に劣る傾向 |
基礎データ
分配利回り(過去平均) | 3.1% |
---|---|
設定来トータルリターン(年率) | 8.0% |
最大下落率(リーマンショック時) | 52.8% |
最大減配率(リーマンショック時) | 30.8% |
分配金支払月 | 年4回 (3・6・9・12月) |
設定日 | 2006年11月10日 |
ベンチマーク | FTSE High Dividend Yield Index |
VYMについて、以下を確認します。
- 株価・分配利回り
- 分配金
- 最大下落率
- トータルリターン
- コロナショックでの動き(HDV・SPYDと比較)
- 構成銘柄とセクター比率
- 経費率
① 「分配利回り3%以上」でよい買い場だった
※2022年1月3日時点
- ピンク色の枠は、分配利回りが過去平均(上図赤線:3.13%)を超えた時期であり、よい購入タイミングであったことがわかります。
② 分配利回り:過去平均 3.1%
- 2.4 ~ 6.3%で推移
- 平均値:3.13%
- 最高値:6.29%(リーマンショックの影響が色濃く出た、2009年3月5日・9日に記録)
- 最低値:2.45%(2011年2月18日・3月3日に記録)
VYM・HDV・SPYD 分配利回り推移:VYMが最も低い
次に、ほかの米国高配当株ETF(HDV・SPYD)と分配利回りを比較してみましょう。
SPYD | 3.4 ~ 8.6% |
HDV | 3.1 ~ 5.3% |
VYM | 2.6 ~ 4.5% |
※2015年10月~
- 米国高配当株ETFの中で、分配利回りは最も低い推移
③ トータルリターン(S&P500と比較):2018年まで同等、以降は劣後
VYMが設定された2006年1月1日を「10,000」として、トータルリターン(税前)をS&P500と比較したものです。
- 年率リターン:8.0%
- 2018年まで:市場平均と同等
- 2018年以降:市場平均に劣後
コロナショック後、S&P500に大きく劣後していましたが、2022年に差が縮まっています。
以上の数値は税金を考慮しない場合であり、実際は税金が引かれるため、リターンの値は控えめに考える必要があります。
④ 暴落局面での動き
リーマンショック:株価は半値に、配当は株価ほど下がらず
最大下落率 | 高値 | 安値 | |
株価 | 53% (S&P500:50.97%) |
$48.62 (2008年4月3日) |
$22.93 (2009年3月5日) |
配当 | 31% | $1.56 | $1.08 |
※配当は、直近四半期配当4回合計ベース
コロナショック:高配当株ETFの中で、最も底堅い
直近の暴落局面「コロナショック(2020年)」では、
- S&P500に大きな影響を持つ「GAFAMなど大型ハイテク株」が底堅く、VYMはS&P500より弱かった
- 高配当株ETFの中では、VYMが最も底堅かった
最大下落率(月次) | トータルリターン(2020年) | |
---|---|---|
VYM | 24.0% | – 2.2% |
HDV | 26.1% | – 8.4% |
SPYD | 36.6% | – 15.2% |
S&P500 | 19.6% | + 13.8% |
⑤ 構成銘柄・セクター比率
以下のように、ETFを構成する銘柄を、運用会社が定期的に入れ替えます。
- 2018年:マイクロソフト外れる
- 2019年:トップはJPモルガン、次にJNJ、エクソンモービル、ファイザー、AT&Tなど大型高配当株が続く
- 2020年:エクソン、シェブロン、ウェルズファーゴが外れ、ウォルマート、コムキャスト、メルクが加入
- 2021年:成長性の高い「ホームデポ(HD)」加入
⑥ 経費率(手数料・信託報酬):問題なく低い
- 2019年2月に0.08%から0.06%に。問題なく低い水準です。
- 長期投資では経費率が高いと、収益が累積的に低下します。そのため、経費率は低いほうがよいです。ただし、小数点第二位での差は誤差の範疇です。
⑦ 配当金:リーマンショック以降は、安定して増加傾向
権利落ち日 | 支払日 | 分配金 | |
---|---|---|---|
2023 | 3/20 | 3/23 | $0.72 |
2022 | 12/19 | 12/22 | $0.97 |
9/19 | 9/22 | $0.77 | |
6/21 | 6/24 | $0.85 | |
3/21 | 3/24 | $0.66 | |
2021 | 12/20 | 12/23 | $0.94 |
9/20 | 9/23 | $0.75 | |
6/21 | 6/24 | $0.75 | |
3/22 | 3/25 | $0.66 | |
2020 | 12/21 | 12/24 | $0.81 |
9/21 | 9/24 | $0.71 | |
6/22 | 6/25 | $0.84 | |
3/10 | 3/13 | $0.55 | |
2019 | 12/23 | 12/27 | $0.78 |
9/24 | 9/27 | $0.79 | |
6/17 | 6/20 | $0.62 | |
3/25 | 3/28 | $0.65 | |
2018 | 12/24 | 12/28 | $0.74 |
9/26 | 10/01 | $0.67 | |
6/22 | 6/27 | $0.63 | |
3/26 | 3/29 | $0.61 | |
2017 | 12/21 | 12/27 | $0.64 |
9/20 | 9/25 | $0.60 | |
6/23 | 6/29 | $0.60 | |
3/22 | 3/28 | $0.56 | |
2016 | 12/22 | 12/29 | $0.67 |
9/13 | 9/19 | $0.48 | |
6/21 | 6/27 | $0.58 | |
3/15 | 3/21 | $0.48 | |
2015 | 12/21 | 12/28 | $0.60 |
9/23 | 9/29 | $0.53 | |
6/26 | 7/02 | $0.56 | |
3/23 | 3/27 | $0.46 | |
2014 | 12/18 | 12/24 | $0.56 |
9/22 | 9/26 | $0.47 | |
6/23 | 6/27 | $0.48 | |
3/24 | 3/28 | $0.40 | |
2013 | 12/20 | 12/27 | $0.53 |
9/23 | 9/27 | $0.44 | |
6/24 | 6/28 | $0.42 | |
3/22 | 3/28 | $0.36 | |
2012 | 12/20 | 12/27 | $0.49 |
9/24 | 9/28 | $0.40 | |
6/25 | 6/29 | $0.37 | |
3/26 | 3/30 | $0.33 | |
2011 | 12/21 | 12/28 | $0.38 |
9/23 | 9/29 | $0.31 | |
6/24 | 6/30 | $0.34 | |
3/25 | 3/31 | $0.31 | |
2010 | 12/22 | 12/29 | $0.31 |
※権利落ち日の前営業日までに買付し、その日のマーケット終了時点で保有していれば、配当金を受け取ることができます。
増配率:+8.5%(年率)
年間分配金 | 増配率 | |
---|---|---|
2022 | $3.25 | 5.0% |
2021 | $3.10 | 10.6% |
2020 | $2.91 | 2.3% |
2019 | $2.84 | 7.3% |
2018 | $2.65 | 10.3% |
2017 | $2.40 | 8.8% |
2016 | $2.21 | 2.7% |
2015 | $2.15 | 12.6% |
2014 | $1.91 | 9.1% |
2013 | $1.75 | 9.8% |
2012 | $1.59 | 20.0% |
2011 | $1.33 | 21.6% |
- コロナ禍でも増配(2020年)
増配率の比較:VTI、VIGと同等
VIG | VYM | VTI | ||||
分配金 | 増配率 | 分配金 | 増配率 | 分配金 | 増配率 | |
2022 | 2.97 | 11.7% | 3.25 | 5.0% | 3.18 | 8.5% |
2021 | 2.66 | 15.6% | 3.10 | 10.6% | 2.93 | 5.8% |
2020 | 2.30 | 7.6% | 2.91 | 2.3% | 2.77 | -4.7% |
2019 | 2.13 | 4.7% | 2.84 | 7.3% | 2.91 | 11.5% |
2018 | 2.04 | 6.2% | 2.65 | 10.3% | 2.61 | 11.2% |
2017 | 1.92 | 5.1% | 2.40 | 8.8% | 2.34 | 5.8% |
2016 | 1.83 | 0.4% | 2.21 | 2.7% | 2.22 | 7.2% |
2015 | 1.82 | 14.8% | 2.15 | 12.6% | 2.07 | 10.6% |
2014 | 1.59 | 14.2% | 1.91 | 9.1% | 1.87 | 11.7% |
2013 | 1.39 | -1.6% | 1.75 | 9.8% | 1.67 | 7.0% |
2012 | 1.41 | 20.5% | 1.59 | 20.0% | 1.56 | 26.8% |
2011 | 1.17 | 11.4% | 1.33 | 21.6% | 1.23 | 7.4% |
平均増配率 | 8.8% | 8.5% | 9.0% |
2020年まで、VYMが最も増配率が高い値でした。近年はVTIやVIGと同等です。
VYM分析まとめ
以上をふまえると、以下のように整理できます。
- 今後も米国企業に賭けたい
- ある程度の元本成長を期待したい
- 3%ほどの高配当を得て、増配も期待したい
- 元本の取り崩しに抵抗あり、配当金で心地よい出口戦略にしたい
- 配当金で生活の足しにしたい、経済的な自由度を上げたい
- 税負担の先払いはさほど気にならない
- 米国への集中投資は避けたい
→「全世界株式」が一案 - 分配金には興味がない
→「投資信託(分配金なし)」が一案 - 税負担をできるだけ先送りしたい
→「投資信託(分配金なし)」が一案
ちなみに…
ETF、投資信託、インデックス投資、高配当投資…、いろいろな投資手法がありますが、資産運用に大きな影響を与えるのは「投資元本の大きさ」です。
- VTIかVYM、どちらが良いか。
- 投資信託とETF、どちらが良いか。
これら比較は、多額または長期の運用でないかぎり、さほど大きな差にはなりません。大局的な視点を失わないようにしたいですね。
ご参考になりましたら幸いです。
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