政策保有株の縮小が促される昨今の風潮に思うこと

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政策保有株の縮小が促される昨今の風潮に思うこと

昨今、損保大手に金融庁が政策保有株の売却を要請したように、全体として政策保有株保有の縮小が促されている風潮がみられます。

ちなみにそもそもこの手の金融改革というものは、郵政民営化もそうでしたが、背後に宗主国や海外機関の存在が色濃くあったことが今や一定の人々が知るところとなっています。

今般、当局が政策保有株を減らすよう促しているわけですが、以下リンク先や引用も示すように、

ロイター通信:日本企業の政策保有株「原則ゼロに」、世界の投資家団体が提言

政策保有株式には海外投資家を中心として機関投資家に極めて厳しい評価が多い

その理由は、まず、議決権が十分に機能しないリスクである。 政策保有の株主は事業・取引関係を 優先するため、現経営陣を支持し、コーポレートガバナンスなどを重視して議決権を行使し ないことが想定される。

出所:三菱UFJ信託

結局、海外投資家が言ってるわけですよね。我らがジャパンでおなじみ、唯々諾々と内政干渉を受けています(むろん皮肉まじりの表現です)。

日本はもともと銀行が株式持ち合いをしていたように、独自の金融構造で発展してきた側面がみられます。

欧米のように株式市場で直接金融による資金調達よりも、預金者から銀行を通して間接金融で資金を調達し、銀行から取締役や経営助言を受けるなど、まさに日本らしく一体連携しながら企業群が歩んできた歴史があります。

そうした独自の金融構造をなぜわざわざ変える必要があるのか、我らがジャパンの性質から考えてはたして自発的にそのような政策を採るでしょうか。

政策保有株のデメリットに対する反論

たしかに企業同士や銀行と株を持合えば、引用にあるように議決権が十分に機能しない、つまりは「仲良しクラブ」で経営がおこなわれる、という批判もできるでしょう。しかしそれはあくまでアクティビストから見た相対的な情景でしょう。現にそのスタイルで発展してきたわけですし。

また、政策保有株があるとROEは下がりますが、ROEはまさに株主にとっての指標であって、日本が大事にしてきた従業員や社会の公器である企業価値とはほぼ無関係と言える指標です。したがって政策保有株の売却でメリットがあるのはほぼほぼ株主なんですよね。いかにも「宗主国」らしい発想です。

政策保有株や持ち合いは非効率経営の象徴として糾弾されがちですが、効率的な経営は株主の利益になっても、従業員の幸福度を底上げするかはまったく別の話です。

政策保有株の縮小は、海外勢からはメリットしかない

さらに視点を変えてみましょう。政策保有株を減らせば、一時的に売却益や配当原資となるので短期的にはROE/株価上昇や増配で株主の利益に直結します。したがって、日本の成長などと長期的な利害関係のない短期目線の海外投資家からすれば、「さっさと利益だけいただいてあとは知ったこっちゃない」という姿勢で臨めます。

列強が歴史的によくやってきた、焼畑農業的かつ重商主義的な植民地政策と似ていますよね。

日本にとって全体としてメリットは上回るのか

しかし当の日本企業からすれば、政策保有株が減ることで浮動株が増えるので、敵対的買収に遭うリスクも増えますし、アクティビストから「経営の効率化」という美名のもとで短期目線の利益至上主義の圧力にますますさらされやすくなりますし、労働者に伝統的に手厚かった日本ならではの経営の自由度は下がる側面も見いだせます。

私も三菱サラリーマンだったので肌で感じましたが、欧米式の四半期開示などから始まり、この株主至上主義、利益至上主義というのは、現場ではたらく社員にしわ寄せ来ますよね。労働組合の中枢にいたこともあるので、そういう声は実際に多く社内で挙がっていることを確認しました。

そうした背景もあって、この手の持ち合い解消ははたして本当に日本、日本企業、そして社員のためになるのか、はなはだ疑問なんですよね。

なにもなかったように、世の中や投資家は「大手損保の政策保有株売却で増配うれぴー」的な感じだと思います(私も東京海上とMS&AD保有なので増配はよろこばしいことはよろこばしいものの、微視的な視点)。

しかしそれよりもっと巨視的な視点として、戦後日本はあらゆる領域で欧米式の機構に変革してきた(または敗戦によってそうせざるを得なかった)結果、どう考えても利より害のほうが甚大であってきたように見えるのは、ただただ私の偏狭な視点の為せる業なのでしょうか。

そうした過去の苦い経験や他山の石としようとしているのがBRICSであり、グローバルサウスであり、サウジのペトロダラー体制からの離脱といった現象にも大局的につながっているように思います。

一応このような視点もあるということで。

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