米国不動産ETF【IYR】は、日本の投資家にとって「米国リートに分散投資できる」という特長を持つETFです。
日本のネット証券大手は、米国個別リートの取り扱いが極めて限定的なので、IYRのようなETFを通して購入する形が一案になります。
【IYR】iシェアーズ米国不動産ETF:配当2.5~4.5%、米国リートへ分散投資可能
IYRの特徴は下表の通りです。
特徴 |
① ETFを通じて米国リートへ分散投資可能 |
② 配当利回り 2.5~4.5% |
③ 経費率 0.42%、安くはない |
④ 設定来の過去20年リターン +541% |
⑤ 114の米国リート含む不動産銘柄で構成 |
⑥ 市場平均より値動き安定という過去データ |
⑦ 配当金は、上下動あり |
⑧ 株価はリーマンショックで約8割下落 |
基本的なデータは下表の通りです。
設定日 | 2000年6月12日 |
保有銘柄数 | 114 |
インデックス | ダウ・ジョーンズ米国不動産指数(※2) |
セクター | 不動産 |
ベータ値(※1) | 0.62 |
経費率 | 0.42% |
配当支払月 | 3 ・6・ 9・12月 |
配当金(直近4回合計) | $2.84 |
株価 | $92.11 |
配当利回り | 3.08% |
(2020年1月9日時点)
IYRの株価変動の大きさが、市場平均の価格変動に比べて大きいか小さいかを示します。
例①)ベータ値が1 → 株価指数(市場平均)と同程度の値動きの激しさ
例②)ベータ値が2 → 株価指数(市場平均)の2倍の値動きの激しさ
例③)ベータ値が0.5→ 株価指数(市場平均)の半分の値動きの激しさ
IYRは、世界最大の資産運用会社ブラックロックが組成する「米国リート含む不動産セクター114銘柄に分散投資できるETF」です。
米国という人口成長国で、資本市場が整備された国の不動産をまとめて購入できる点が魅力です。人口成長の恩恵を享受する先進国は米国・豪州と多くありません。
配当利回りは2.5~4.5%程度です。伝統的に高配当でしたが直近配当利回りは約3%程度。理由は後述します。
経費率0.42%と米国ETFの中では、少し高めの手数料です。ただ、現時点で日本のネット証券大手で米国個別リートは新規買付停止または取り扱っていないものばかりのため、必要経費とも捉えられます。
β値は0.62。つまり、市場平均(S&P500)より4割ほど値動きがマイルドであった過去事実を示します。
【IYR】組入れ上位10銘柄
ティッカー | 銘柄名 | 比率(%) |
AMT | AMERICAN TOWER REIT CORP | 7.9 |
CCI | CROWN CASTLE INTERNATIONAL REIT CO | 4.6 |
PLD | PROLOGIS REIT INC | 4.5 |
EQIX | EQUINIX REIT INC | 4.0 |
SPG | SIMON PROPERTY GROUP REIT INC | 3.6 |
WELL | WELLTOWER INC | 2.7 |
PSA | PUBLIC STORAGE REIT | 2.6 |
AVB | AVALONBAY COMMUNITIES REIT INC | 2.3 |
EQR | EQUITY RESIDENTIAL REIT | 2.2 |
SBAC | SBA COMMUNICATIONS REIT CORP CLASS | 2.1 |
組み入れ上位10銘柄は、米国リートが並んでおり、これらをまとめて購入できることになります。
残念なことに、日本のネット証券会社大手(SBI・楽天・マネックス)から購入できる米国個別リートは極めて限定的です。
上位10銘柄のうち、PLD・EQIX・WELL・SPGなどマネックス証券やSBI証券で銘柄検索でたとえ出てきても、以下通り「新規注文停止」や「Traiding is restricted for this symbol」という表記で購入不可です。
私は以前、組入れ上位銘柄にある【WELL】ウェルタワー・リートを購入したかったのですが、日本の証券会社で取り扱いがなく、購入する術がありませんでした。
しかしこのIYRなら、ウェルタワーにも投資可能。ETFのメリットは分散だけではなく、こういった形で間接的に保有できるというメリットもある好例と思います。
【IYR】株価と配当利回り推移(設定来)
2006年の高値からはリーマンショックで下落率8割弱の大暴落を示現。
株式ETFと同等かそれ以上に売り込まれています。そもそも震源はサブプライムローンという住宅関連でした。
直近は株価の上昇および分配金の減少(後述)から、分配利回りも低下気味だったこともあり、個人的には少し買いにくい状況でした。
【IYR】株価と配当利回り推移(過去5年)
2014年頃から続いていたボックス相場の高値をブレイクアウトし、2019年10月時点で株価は95ドル弱、2020年1月では92ドルで推移。
上図の通り配当利回りは相対的に低下し、長らく3.5%以上あった配当利回りは2%台を経て直近3%。
過去5年間での配当利回りレンジは2.5%~4.5%。
【IYR】過去5年間パフォーマンス
2018年2月・11月の下落局面で比較的底堅い動きを見せたのは印象的でした。このあたりは不動産らしい動きと思います。
【IYR】設定来パフォーマンス
当該ETF設定日の2000年6月に1万ドル投じた場合、トータルリターンとしては2018年末に6万ドル、2020年1月に6.3万ドルという形。
また、リーマンショックの時にドローダウンは約2/3まで達します。株式ETFと同等かそれ以上に売り込まれました。
【IYR】分配金推移
分配金は過去10年間で0.4ドル~1.1ドルとかなり幅があります。
配当利回りの直近低迷は、株価上昇と分配金の低下が原因です。株価上昇は冒頭の通りですが、分配金も上図・下表の通り減少気味で2019年12月は盛り返した形。
支払予定日 | 分配金 | 直近4回分配金合計 |
2019年12月20日 | 0.89 | 2.84 |
2019年9月30日 | 0.66 | 2.42 |
2019年6月21日 | 0.69 | 2.54 |
2019年3月26日 | 0.60 | 2.63 |
2018年12月21日 | 0.47 | 2.65 |
2018年10月2日 | 0.78 | 3.05 |
2018年7月2日 | 0.77 | 2.95 |
2018年3月28日 | 0.62 | 2.89 |
2017年12月26日 | 0.87 | 3.02 |
2017年9月29日 | 0.68 | 3.22 |
2017年6月30日 | 0.72 | 3.24 |
2017年3月30日 | 0.75 | 3.23 |
2016年12月28日 | 1.08 | 3.39 |
2016年9月30日 | 0.70 | 3.28 |
2016年6月27日 | 0.72 | 3.25 |
2016年3月30日 | 0.90 | 3.19 |
2015年12月31日 | 0.96 | 2.94 |
2015年10月1日 | 0.67 | 2.79 |
2015年6月30日 | 0.66 | 2.76 |
2015年3月31日 | 0.66 | 2.70 |
2014年12月31日 | 0.81 | 2.81 |
2014年9月30日 | 0.63 | 2.59 |
2014年6月30日 | 0.60 | 2.57 |
2014年3月31日 | 0.77 | 2.57 |
(単位:米ドル)
2016年に3.392ドルあった年間分配金は、2019年10月時点での直近4回合計で2.424ドルと30%ほど大きく減少。2020年1月では2.84ドルと盛り返し。
関連商品
RWRや以下のような米国リート複数銘柄に投資できるETFもあります。
- 東証上場の「iシェアーズ米国リートETF(1659)」
- SPYDという「米国の高配当株とリートの両方に投資できるETF」
iシェアーズ米国リートETF(1659)やSPYDの方が経費率は安いため、これらも十分選択肢になります。
▶【SPYD】配当3.4%~5%の米国高配当株ETF、配当好きに好適
【IYR】iシェアーズ米国不動産ETFまとめ
特徴 |
① ETFを通じて米国リートへ分散投資可能 |
② 配当利回り 2.5~4.5% |
③ 経費率 0.42%、安くはない |
④ 設定来の過去20年リターン +541% |
⑤ 114の米国リート含む不動産銘柄で構成 |
⑥ 市場平均より値動き安定という過去データ |
⑦ 配当金は、上下動あり |
⑧ 株価は、リーマンショックで約8割下落 |
以上見てきた通り、最大の魅力は米国リートに分散投資可能なことと思います。
直近株価はリーマンショック前高値を回復してきた形で設定来では高値圏。
信託報酬0.43%と米国ETFの中では高めです。(大勢には影響しない程度)
米国のリートに投資したい場合は、下段関連記事でご紹介するSPYDへの投資も一案です。経費率0.1%以下、高配当株とリートの両方に分散可能、インカム狙いの投資家には好適です。
Best wishes to everyone!
前段でご紹介したSPYDについての詳細は以下記事をご参考に供します。
高配当リートとしては、米国株だけでなく、香港株としてSBI証券でも購入できるスプリングリートもあります。