高配当株は株価下落により含み損を抱えやすいのか

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高配当株投資は株価の下落により含み損を抱えることが多いか

読者の方からご質問を頂きましたので、以下テーマについて私見を述べさせて頂きます。

  • 「高配当株を持つことによる含み損やリスク」

以下は実際に頂いたご質問です。

はじめまして。現在社会人3年目で、三菱サラリーマンさんのブログを見て配当収入をKPIとして高配当株への投資を考えています。

そこで質問です。高配当株(PM、Tなど)は配当利回りは高いですが、株価の下落により含み損を抱えることが多くなると予想しています。

高配当株を持つことによる含み損、そしてそのリスクについてはどのように考えているのでしょうか?

ご質問頂き、誠にありがとうございます。

高配当株投資をしている限り、含み損やリスクは気になりますよね。もしかすると太宗の投資家が懸念していることかもしれません。

「結局どこに着目し、何を取捨選択するか」ということに最終的に落ち着きますが、含み損を抱えるリスクは高配当株に限ったことではなく、遍く、須らく、どの銘柄にもあり得ることではあります。

まず、「何を以って含み損を抱えることが多くなると言えるのか」は多少議論があるところかと思いますが、ご質問にある銘柄でもある「フィリップモリス【PM】」・「AT&T【T】」も含めて代表的な高配当株を4つ見てみましょう。

AT&T【T】

まず、ご質問にもあるAT&Tの10年チャート

直近値は概ね過去5年間で横ばいと言え、2016年〜2017年にかけて一括購入していれば含み損を抱えていそうですね。

そもそも配当によるリターンも加味して最終的にリターンを判断する必要があることは如才なきことながら念の為申し添えておきます。

ベライゾン【VZ】

では同じく高配当通信株のベライゾンはどうでしょう。

こちらはAT&Tとは対照的に、過去10年間で最高値圏にあります。

余程タイミングが悪い時に購入していない限り、含み損の可能性は現状低いでしょう。ご多分に漏れず私も15%ほど含み益が乗っています。

フィリップ・モリス【PM】

2016年~2017年にかけて購入している投資家にとっては少々好ましくない推移です。それ以前であれば概ね横ばいなので、配当をもらっている分がプラスですね。

アルトリア・グループ【MO】

では同じく、同業の高配当株であるMOはどうでしょう。

こちらも2016~2017年にかけて購入している投資家は現状、含み損を抱えることになりそうです。

たまたまMOは50ドル台に暴落してから購入しました。そのような投資家はむしろ現在は結構含み益を計上していることになります。

購入時期・買値が結局大きなファクター

ざっと4銘柄見てきましたが何を言いたかったかというと、高配当株自体が含み損を抱えるリスクが大きいというよりは、結局購入タイミングや投資家によって千差万別ということです。

もっと言えばここ1~2年に購入していると「少々高配当株にとって分が悪くなりやすい局面」と言えるでしょう。

個人的にはたまたま幸い運良く含み損を抱えていないため、高配当株が含み損を抱えやすいとは感じていません。

こればかりは当然ながら非常に買値が重要になってきます。とはいえ、かくの如くのたまいつつも来週暴落が起きて大きな含み損を抱えているかもしれません。

高配当株に限ったことではありませんが、高値掴みは最も避けたいところですし、出来るだけ安い値で買いたいのが人情です。

毎月定期的に株式を積み立てると言っても、高値圏にある株式を積み立ててばかりいるより、当然ながら安値圏の株式を積み立てた方が良いですよね。含み損を抱えると精神的にも好ましくありません。

景気サイクルや相場局面も大きな要素

また、高配当株を持つことによるリスクに関してですが、これ自体は景気サイクルがどの局面にあるかを着目する必要があります。

上記JPモルガンの資料の通り、高配当株は局面によってパフォーマンスが大きく異なります。

例えば97年~00年にかけてのITバブル期や、現在のFANG相場では高配当株のパフォーマンスは他より劣りがちなことがわかると思います。

ですので、景気サイクルや相場局面によって、そもそも弱含みしやすい局面というのが存在するので、その特性は一旦切り離して考える必要があります。

いずれにせよ、個人的には投資というものはリスクから逃れることはできませんし、比較的泰然と構えておく必要があります。更に、最悪の事態が起こった時にどうするかというのも頭の片隅に置いておく必要もあります。

高配当株には高配当な代わりに株価に成長性がなく、横ばいの銘柄も勿論あります。ただこの点に関しては、配当を吐き出す形で4半期ごとに利益確定してくれるのは非常に個人的に好んでいます。

結局日銀の金融緩和も不動産の購入でも出口戦略というのは非常に重要であって、株式の購入でも常に出口戦略は頭の片隅に入れておかねばなりません。

無配株に私が手を出さないのは、結局いつ利益確定するのかが不透明という点も主な部分です。

しかし、資産規模が大きくないうちは果敢にグロース株でリスクを取ることも、もちろん大きな果実を得る1つの手段であり、全くもって否定する投資手法ではありません。

そして、そもそも株式のリスクという意味では、リーマンショックで5~6割暴落した銘柄が多々ありますが、今度の危機では9割暴落するかもしれませんし、5割以下となるかもしれません。

高配当株に限らず、現在のマクロ概況はどうか

こればかりは神のみぞ知るところではありますが、少なくともマクロ的な要因としては、伝統的な金融機関についてはバーゼルIIIなどの施行により自己資本は厚くなり、有価証券のリスク分類も明確化され、ストレステストなどにより健全性は増したと言われてはいます。

一方で、中国の融資平台などにも表れるシャドーバンキングなどの簿外取引については金融当局の規制が及んでいないのが実態です。真っ先に事が起こった時に損失を被る(既に若干被り始めている)のは中国の個人投資家です。

貿易戦争により中国政府は再度インフラ投資を噴かしていますが、リスクの先送りと見ることもでき、どうリスクが表出するのか興味深いところです。

更に債務比率の高まりや低金利の常態化により、利回りの高い商品を求めて格付けの低い債券にも資金が流れ込んでおり、米企業の低格付け債の上乗せプレミアムは3.2%と2018年9月時点で当年最低水準になったことがその証左です。遅かれ早かれその揺り戻しが起こると見てもよさそうです。

つまり、どのような形態を伴って、いつ、金融危機や短資市場での資金凍結が表面化するかは全くもって予断を許しません。

ということで、右肩上がりの米国株式市場は今まさに高揚を謳歌している真っ最中ではありますが、リスク常在。

そのために何ができるかといえば、債券比率を上げたり、現金比率を上げることや収入の複線化などによる人的資本の最大化もありますね。

高配当株投資は「入金投資法や一定程度の資産規模と親和性が高いもの」であって、それ自体が伝家の宝刀になり得るわけではないことには留意が必要です。

ご参考になりましたら幸いです。

Best wishes to everyone!

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公開日:2018年9月23日