バブル化した仮想通貨を振り返る【熱狂の末、年間リターン2018】

Twitter

仮想通貨は「盛者必衰、兵どもが夢のあと…」となるのか

2017年は熱狂に沸き返った仮想通貨の年とも言えるでしょう。

「サトシ・ナカモト」という謎に包まれた人物による、国家の制約から解き放たれることを願って世に生み出されたとも目されるビットコイン。

現在は国際的に決済されるルール・規範とも言える国際銀行決済システム「SWIFT」体制が1973年に成立後、既に幾何かの年月が流れていますが、取引コストは高止まりしたままと言って良いでしょう。

2009年に登場したビットコインは、国家が多額の費用をかけて維持する通貨システムと一線を画す価値交換の仕組みを有し、ブロックチェーン(分散台帳)という画期的なデータベース技術を用いることにより、取引コストは低廉化するとされました。

国家や、中央銀行という半ば国権じみたものを持つ管理者がいなくとも、取引履歴をネットワークの参加者で相互に監視するため、改ざんが難しく、低コストで安全な送金や決済を可能にする宝刀として鳴り物入りで市場に入ってきました。

この時点でバブルを生む ”ストーリー性” は十分だったのかもしれません。

バブルというのは、「自己増殖的な期待の連鎖」、つまり「他の人が買っているから自分も買う」、「みんなが買っているようなら値上がりするだろうという期待を拠り所にして自分も買う」という期待の連鎖から資産価格が連続的に上昇する状況のことを指します。

  • 「仮想通貨が世の中を変える」
  • 「暗号通貨がゲームチェンジャーになる」

大きな期待が凄まじい値動きのうねりを生み、仮想通貨で億り人も生まれ、それがメディアでも大々的に報道され、大衆も我に続けとばかりに続々と仮想通貨取引に参入していきました。

アフィリエイト単価も高い仮想通貨は、ブロガーやアフィリエイターもこぞって参入し、読者にその魅力を説き、多額のアフィリエイト収入も得た人もいました。

ビットコインの性質・ポイント

ビットコインは、発行数が開発者によって規定されており、その限られた発行数の大半が初期に発行されます。そして年を追うごとに発行量が減っていくように規定されています。

これこそが、米ドルを代表とする、長期的にインフレが起こり通貨価値を減じてきた国際通貨と大きく異なる点です。

ノーベル経済学賞を受賞したフリードリヒ・ハイエクは、国家による意図的なインフレ政策が通貨価値を減じる最大の原因であるとしています。

政府は貨幣を発行し、調整する排他的権利を有していますが、他に貨幣を発行する競争相手がいないからこそ価値を保全する必要に迫られないとも言えますよね。だからインフレ政策が採れるのです。

例えば今の日本政府は政府債務圧縮などを目的としてインフレ政策を採ること自体は可能です。一国に一通貨しかないからです。

ところが仮に仮想通貨/暗号通貨が登場し、あるいは民間銀行が独自の通貨を発行すれば、その事業者は自分の貨幣の信用が低下しないように、発行量を慎重にコントロールしようとするでしょう。

これが政府のインフレ政策を留める一手となり、「悪貨が良貨を駆逐する」のではなく、「良貨が悪貨を駆逐する」ことになります。

ビットコインはまさにこの「貨幣の信用が低下しないように、発行量を慎重にコントロール」されたものなのです。

つまり、ビットコインの価値自体は、現在の米ドルという国際決済通貨と異なり、インフレどころかデフレ状態、つまり発行量が減っていく分価値が上昇していくだろうという期待も一部あったと言って良いでしょう。(その点を知った上で投資していた人がどれ程いたかは不明)

ただ、あまりに期待が大きすぎたのか、バブルとなったからか、値動きが激しすぎて決済通貨の役割はとても果たせず、更に最も肝心なメリットであった「決済コストの低減」が果たせなくなったと言えます。

決済に要する仮想通貨自体の価値が高まりすぎて、決済コスト自体も上がってしまい、一時期は既存の決済コストすら上回るような状態が続いていました。

これは「元々の決済コストの低減という大名目・メリットを打ち消すほどの高騰」という意味においては間違いなくバブルであり、当初の本願自体が成就しない状態となっていたわけですね。

主要な仮想通貨2018年リターン

そのような仮想通貨群ですが、2018年においては下表が示すように下落が鮮明となりました。

コインチェック社で一躍有名となったNEMは年初来92%下落という凄まじい数字です。

ビットコインやイーサリアム、リップルなど当初有望視されていた主要な仮想通貨はことごとく大幅に下落しています。

92%下落というのは、1000万円投資していたとすると手残りは80万円ですから、なんとも言い難い数字となっています。

とはいえ、これによって仮想通貨やブロックチェーンという技術自体が陳腐化したということでは必ずしもなく、むしろ当初の熱狂が徐々に消化され、安定的な推移を見せれば当初期待されていた役割を果たすかもしれません。

仮想通貨が本当にゲームチェンジャーになるのかは、引き続き興味を持って注視したいところですね。

今はただの草創期なのかもしれません。

Best wishes to everyone!

仮想通貨の登場は、「貨幣とは何か」これを再考させられる良い機会となったのではないでしょうか。ご興味のある方は、ハイエクの書籍を読むと非常に理解が深まると思います。

【貨幣の成り立ち】みんながお金だと思うからお金である、という側面を持つ「お金」
本記事は、ビットコインが話題になり始めた2017年に記しはじめたものです。 内容としては、そもそも私たちが日々、なんらかの形で...

バブルが起きる条件とは何でしょうか?3つ挙げています。

【米国株】資産バブルが起きる3つの条件とは?
資産バブルの3つの条件が徐々に満たされつつある ソニーフィナンシャルホールディングス・チーフエコノミストの菅野氏によれば、資産バブ...

バブルという状況下でポートフォリオを組むなら、というお題目で考えてみました。

バブル下で投資を始めるなら、どんなポートフォリオを組むか
本記事は2018年8月に回答した記事です。今のような下落局面で振り返ると非常に興味深いですね。 株式投...
新刊「#シンFIRE論 経済・精神の自由を手に入れる主体的思考法」
騒がしすぎる世界で、「主体的」であれ
スポンサーリンク

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

外国株式ブログランキング

Follow me by FREETONSHA

公開日: