読者の方から投資信託「MS(モルガン・スタンレー)グローバル・プレミアム株式」を保有しているものの、VYMや個別株への転換を検討しているので、当該投信の評価をして欲しいとのご要望がありましたので、ご紹介させて頂きます。
当該投資信託の手数料などの基礎データ・特色・トータルリターン・ベンチマークとの乖離を見ていき、評価をする、つまり個人的に人様に勧められる金融商品か否かを判断します。
MSグローバル・プレミアム株式の分析
基礎データ
- 運用会社 :三菱UFJ国際投信
- カテゴリ :グローバル株式
- 為替ヘッジ:あり or なし
- 販売手数料:3.24%
- 信託報酬等:1.94%
- 分配金取扱:年1回決算(2月)
- 設定日 :2012年2月17日
- 償還日 :2027年2月23日
- 参考指数 :MSCIワールドインデックス
いきなりとんでもない数字が飛び込んできました。これはちょっといけませんね…。まず、信託報酬と販売手数料の高さに閉口します。
例えばVYMの信託報酬は0.08%ですから、当該投信の1.94%は実にその24倍の水準。自分でETFに投資する時と比べ、毎年24倍の手数料が投信販売会社や委託会社の懐に入ります。投資家本位ではなく、金融機関本位の金融商品と断じれる程の手数料の高さです。
販売手数料も今やノーロード(無料)のものが普及する中、3.24%。これはちょっといけませんね…。ちょっとどころではありません。
この数字だけを見て即解約を検討するレベルと言っても過言ではありません。
一応この数字だけでは判断せず、以下詳細も見ていきましょう。
特色
要約すると、「収益力が高く、高い収益力を持続でき、参入障壁が高く、競争優位性が高く、経営陣の質が高く、成長性のある企業に投資をしている」と謳っています。
ということで、この文言自体は納得できるものです。しかし投信販売会社が特色について美辞麗句を並び立てることも当然できますから、しっかり定量的に分析・判断できるトータルリターン・手数料・ベンチマークとの乖離を見る必要がありますね。
組入れ上位10銘柄
マイクロソフト(MSFT)、ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)、ユニリーバ(UL)、ビザ(V)など、米国株投資家にはおなじみの企業が並びます。
アクセンチュアは戦略コンサルなどで有名ですね。株価は右肩上がりです。
SAPは企業の基幹システムでシェア1位のドイツ企業であり、サラリーマンなら目にすることも多いロゴです。
ロレアルはフランスの世界最大の化粧品会社。中国でも高いシェアを誇っていましたが、退潮。花王や韓国企業にシェアを奪われています。
ベンチマーク/参考指数との乖離(過去3年)
ベンチマークとの乖離は非常に重要な指標です。
もしベンチマークに劣っているファンドならば、わざわざ信託報酬や手数料を支払ってまで運用をファンドに任せる意義がなく、自分でETFを購入すれば良いからです。
赤:MSグローバル・プレミアム株式(ヘッジ有)
+38.5%(ベンチマーク+17%)
黄:MSグローバル・プレミアム株式(ヘッジ無)
+24.2%(ベンチマーク+3%)
緑:MSCIワールドインデックス(配当込、円ベース)
+21.5%
過去3年間では、当該投資信託は為替ヘッジあり・なし共に、参考指数であるMSCIワールドインデックスというベンチマークを上回っているように見えます。
ただ、ヘッジ無しではベンチマーク比+3%程度ですから、販売手数料3.24%で即吹き飛びます。
ヘッジ有りはベンチマーク比+17%と上回っています。販売手数料を考慮しても依然過去3年間ではアウトパフォームしています。
とはいえ、この信託報酬は今後も毎年ボディブローのように1.94%もパフォーマンスを下げるのは甚大な影響と言えます。
トータルリターン(過去1・3・5年)
過去1・3・5年のパフォーマンスも確認しておきましょう。
1年・5年ではいずれも手数料控除前で既にベンチマークの方が良いという大変好ましくない結果になっています。控除するとヘッジ有り無しで3〜5%ほど年率で劣後します。
過去3年では「ヘッジ無し」がベンチマークを上回っているように見えますが、このトータルリターンは諸手数料を控除せずに算出した値なので、販売手数料を考慮すると、為替ヘッジありの場合はベンチマークに劣後し、なしの場合ではベンチマークをやや上回る結果。
つまり、いずれにしても1・3・5年いずれの期間においてもベンチマークと同等か劣後するという誠に残念な結果になっています。
以上から、アクティブファンドとして高い信託報酬と販売手数料を顧客である投資家がコスト負担しているにも関わらず、その投資成績・パフォーマンスはインデックスに相当期間劣後しているということです。
奇しくも投信販売会社は私と同じ三菱ですが、この結果は投信販売会社は重く受け止めるべきであり、顧客本位ならば目論見書やレポートにも明示すべきではないでしょうか。

基準価額・純資産の推移
この投資信託については、今まで述べてきた通りですが、その一方で基準価額以上に純資産が増えていますから、新規流入者・新規投資が当該投資信託に流れ込んでいることを示しているのがこれまた残念です。
最近は、金融庁の指導で顧客本位でない金融機関の姿勢に徐々にメスが入ってきていますから、投資環境は以前に比べると、かなり整備されてきた方ではありますが、まだまだこのような投信は残っているということですね。
まとめ
投資信託「モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式」は、投資家からすれば、即刻解約すべき類の投資信託と言っても過言ではなく、私ならばおすすめできません。
以下項目、いずれも好ましくない水準であり、投資対象として適するとは言えません。
- 販売手数料
- 信託報酬
- リターン(参考指数との乖離)
これぞまさに金融リテラシーにおける情報の非対称性を利用する、あるいは金融に親しみのない投資家を食い物にする「金融機関の金融機関による金融機関のための投資信託」と言えます。
日本ではいまだにこういった投資信託が存在しているのが現状です。かく言う私の母も、以前はこの類の投信を言われるがまま購入していました。
投資マニアでもなければ、信託報酬や手数料など気にも留めないでしょうし、金融機関に促されて購入するのも無理もないと思います。
この類の投資信託を購入するならば、例えば私なら、米国高配当株ETFのVYMなどを購入することを勧めます。信託報酬に雲泥の差があり、過去リターンも良好だからです。(とはいえ、今後もリターンが良好かが保証されるものでは勿論ありません)
信託報酬は長期投資でボディブローのようにリターンが毀損されますから、丹念に見ておく必要があります。
こういった投資信託の負の面を被る人が1人でも少なくなるよう、弊ブログが少しでもお役に立てれば幸いです。
Best wishes to everyone!
VYMのリターン・配当推移・信託報酬などを詳述しています。こちらを長期で積み立てた方が余程良好なパフォーマンスが見込めるのではないでしょうか。ただし、金融危機などでは他の株式同様に大きく下がり得ることには留意が必要です。
アクティブファンドに投資するなら、個別株で自分で銘柄を選別する方法もあります。高配当株はリターンが毀損する可能性はあるものの、不労所得の可視化に繋がります。
個別株でなくとも、インデックス投資も非常に有効な選択肢です。今では信託報酬が非常に安いものもありますね。