「投資初心者です。手間なく、ハイリスクを避けて、月10万円の分配金がほしい」というご相談への回答
以下ご質問に回答しています。
読者
投資初心者です。投資をはじめるにあたって、以下のような希望があります。
- 煩雑な確定申告は避けたい
- 初心者なのでタイミングを計ったり、ハイリスクなことは避けたい
- 月10万円の分配金がほしい
アドバイスをお願いします。
- 煩雑な確定申告は避けたい
→ 投資信託 or ETF - 初心者で、タイミングを計ったりハイリスクなことは避けたい
→ 全世界株式 - 月10万円の分配金がほしい
→ 定額取り崩し or 分配金
なぜ上のような回答になるか、順に記します。
① なぜ「投資信託」「ETF」が適しているか
- 確定申告など煩雑なことは避けたい
→「投資信託」か「ETF」がよいと思います
- 分配金がほしい
→ 外国税額控除が自動適用される「東証上場ETF」がよいです
例:MAXIS全世界株式(2559) - 分配金にこだわりはない
→ 分配金が出ないタイプの「投資信託」が一案です
例:eMAXIS Slim 全世界株式
※NISA枠は、確定申告で外国税額控除が適用されないので、無分配で非課税枠を最大限活用できる「eMAXIS Slim 全世界株式」がよいと思います。
確定申告をしたほうがよい代表的な状況は、「外国税を取りもどす外国税額控除を受けるため」かと思います。
米国など外国株への投資は、外国税が徴収され、「外国所得税」の還付を受けるためには確定申告が必要だからです(これを外国税額控除と言います)。
細かい話をすると、投資信託では内部で配当再投資する際に外国税が引かれるのに対し、外国株ETFでは、確定申告をすれば外国税を取りもどせる場合がある(一部の東証上場ETFは自動で取り戻せる)ので、その点においてはETFが有利です。
この効率性を重視するなら、東証上場ETF「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信(2559)」ならば、分配金が出ますし、外国税額控除が自動適用されるので簡便に効率よく運用できます。
対して、もし分配金にこだわりがなければ、投資信託でもよいと思います。また、NISA枠なら最大限非課税枠を活用できる投資信託がよいです。
補足:外国税額控除とは
日本国内に居住する人が外国所得税を納付した場合には、国内と海外で二重課税となるので、海外分の還付を受けるための制度
② なぜ「全世界株式」が適しているか
- 初心者で、タイミングを計ったりハイリスクなことは避けたい
→「全世界株式」が一案です
「一括投資」と「定期つみたて」
まずタイミングを計らない投資手法としては、以下2案があります。
- 一括投資(時期を分けずに一気に買うこと)
- 定期つみたて(毎月など、時期を分けて買うこと)
結論としては以下のようにまとめられます。
- 右肩上がりを想定するなら、年初に一括投資が有利
- ITバブルやリーマンショックのような暴落のあった年は、定期つみたてが有利
2000~2023年の24回について、年初一括投資がよかったケースは下表のとおりです(出所:ニッセイ基礎研究所)。
S&P500 | オルカン(ACWI) | TOPIX | |
---|---|---|---|
一括投資が有利 | 22回 / 24回 | 21回 / 24回 | 19回 / 24回 |
勝率 | 79% | 92% | 88% |
背景には、これら3指数とも多くの年で右肩上がりだったので、一括投資の勝率が高くなっています。また、S&P500はITバブル崩壊(2002年)リーマンショック(2008年)といった暴落した年は、一括投資は不利という結果です。
したがって、タイミング悪く、買った直後に暴落するケースを避けたければ、「定期つみたて」が適しています。気にならなければ、「一括投資」も一案です。
全世界株式が一案となる理由
そして、「ハイリスクを避けたい」とのこと。リスクとリターンは基本的に比例するので、ハイリスクを避けるということは、無難かつ平均を志向することと同義ですので、世界的に資本の成長を平均的に享受できる「eMAXIS Slim 全世界株式(世界の主要企業へ投資する商品)」がよいと思います。
参考までに、主な国別の投資先の傾向と特徴を記しておきます。
インド SENSEX、米国 S&P500、全世界 ACWI、日本 TOPIX
- 全世界株
世界の主要株式に分散できるので無難で、世界経済に連動した収益が期待できる。リターンは米国株に劣ってきた。 - 米国株
この数十年、安定して高い利益成長率
成長期待が高いぶん常に指標上は割高ながら、技術革新、金融緩和、自社株買いなどによる1株価値の成長で割高さが正当化されてきた - 日本株
バブル崩壊以降、割安に放置されてきた
全体として株価成長にとぼしかったが、近年は割安さが是正され、上昇余地が拡大 - インド株
従来の先進国の発展モデルである「重厚長大型産業 → IT産業」の重工業をすっ飛ばしてIT産業が発展。人口動態の観点からも、成長性が注目されてきている
全世界株式のリスク
なお、全世界株式のリスクとして、以下を挙げておきます。
- 有事が起こると、当該国の組み入れ比率分の価値が下がるリスク
戦争等の有事による「投資信託の暴落リスク」を検証する(全世界株式:オルカン) - 円高リスク
オルカンの円建てリターンの8割は「円安」によるもの(直近3年)
③ 「定額取り崩し」か「分配金」か
- 月10万円の分配金がほしい
ということなので、冒頭のとおり、以下二択になります。
- 投信で元本を取り崩す
- ETFで分配金を自動で受け取る
SBI証券、楽天証券などで一度設定すれば、「毎月10万円」といったかたちで自動で取り崩せます。
全世界株式から月10万円を得るには
さて、次に具体的な流れです。
(ご質問文からは割愛していますが)預貯金が7,000万円あるとのことなので、投信で元本を取り崩す場合は、以下が一案かと思います(全世界株式ETFならば、足もと分配利回り1.5%なので、年間分配金120万円を得るには、8,000万円必要、といったように割り戻して算出できます)。
- 約3,000万円を投資にあてる
- 新NISA枠を「全世界株式」で埋める
- さらにリスクをとってリターンをねらうなら、残りを特定口座で、一括投資 or 定期つみたて
許容できるリスクは人によって異なるので、金額・方針はあくまで一案です。
月10万円の定額とりくずしをするには、年率リターン4%(※)として3,000万円の投資元本があれば理論的には元本が減らないことになります(ただし厳密には年ごとにリターンがばらけるので、減る可能性もあるので、あくまで1つの目安として認識ください)。
※補足:年率リターンの過去の傾向
2023年末時点における過去20年間の年率リターン
- 日本株式:6.3%
- 海外株式:9.9%
したがって、まずは3,000万円を投資することが、月10万円の取り崩しを持続可能にするための1つの目安です。
国内債への投資をどう考えるか
続きまして、2つ目のご質問。
確定拠出年金で評価損(約3万円)が出ている商品があります。
- 明示安田DC日本債券オープン
- 三菱UFJ DC国内債券インデックスファンド
現状その商品の購入は止めていますが、持ち続けずに売却した方が良いでしょうか。
両商品とも「NOMURA-BPI 総合インデックス」に連動する投資信託なので、ほぼ似たような商品に投資していらっしゃいます。
補足:「投資信託」と「連動する指数」
投資信託は、指数算出会社が算出する「指数(例:日経平均株価、TOPIX)」に連動するように商品が設計されます。
各運用会社は、その指数をもとに投資信託をつくります。
そのため、同じ指数をもとに作られた複数の似たような投資信託が世に出ます。
投資信託の中身を見てみましょう。
主に5~20年の中長期国債に投資する投資信託ということですね。ということは、国内金利が上昇すると価格が下落することが予想されます(債券はそのような価格構造です)。
今後、日本銀行はいずれは金融政策を正常化、つまりは金利が多少は上がっていく方向にあると思いますので、国内債への投資妙味はさほどないと考えられます(ただし、国債利払いの観点から正常化が遅れる可能性もありそうです)。
したがって、私でしたらこれら国内債ファンドは売却して、株式にまわします。ただし、国内債は変動が少ない預貯金のような役割も一応期待できるので、安全資産として位置づけるならば保有継続も選択肢ですね。
回答になっていましたら幸いです。
関連記事
国債のように格付けの高い短期債券は、値動きの比較的少ない安全資産として位置づけられています。長期国債は年限に応じて相応に値動きが生じます。
定期つみたてについては、以下もご参考に供します。