映画『PERFECT DAYS』 単調に見えて、起伏と主体性に富む中年男性の美しい生き様が描かれている

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映画『PERFECT DAYS』 単調に見えて起伏と主体性に富む中年男性の生活様式が描かれている

公式サイト」より

気になっていた映画『PERFECT DAYS』を旅先で観る機会に恵まれました。

素敵な作品でした。以下に本作から感じたことを記します。

作品情報
映画PERFECT DAYS公式サイト。2023年12月22日(金)日本上映開始。ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと日本を代表する俳優 役所広司の美しきセッション。
  • 作品名:PERFECT DAYS
  • 上映日:2023年12月22日
  • 製作国:日本
  • 上映時間:124分
  • あらすじ
    東京・渋⾕でトイレ清掃員として働く平⼭(役所広司)は、静かに淡々とした⽇々を⽣きていた。同じ時間に⽬覚め、同じように⽀度をし、同じように働いた。
    その毎⽇は同じことの繰り返しに⾒えるかもしれないが、同じ⽇は1⽇としてなく、男は毎⽇を新しい⽇として⽣きていた。その⽣き⽅は美しくすらあった
    男は⽊々を愛していた。⽊々がつくる⽊漏れ⽇に⽬を細めた。そんな男の⽇々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を⼩さく揺らした。

余白があって、なんとも余韻が残り、そして翌日になってもふと思い出してその余韻に少し浸るような作品でした。

映画館で本作の予告を見たとき、「とあるトイレ清掃員の中年男性が送る毎日は一見すると単調に見えて、その単調さこそに当人なりの価値があり、さらには丁寧に美しく生きる日常を描いた作品」という想像をしていました。

本作から見いだせること

本作を見ると、たしかにその要素もありますが、なかなかどうしてそれだけにとどまらず、『ドライブ・マイ・カー』のように、

本作から見いだせること①
  • 人は見かけによらないうえに、私たちは相手のことをわかった気になりがちだが、見えているのは一面だけであって、全体像は他者にはわかりえない
  • 出自、職業、住環境、社会的地位、金銭的余裕などの表面的な要素で他者を判断しがちだが、とくに文化・芸術・知性・美学・人生哲学などの内面は、相手を深く知らないと知り得ない
  • 人間はとどのつまり、「社会的な動物」である

といった普遍的な主題が随所に見いだせると思いました。

それだけでなく、

本作から見いだせること②
  • 気品や素養といったものは、それを解する人同士で共鳴する
  • つまり、気品や素養といったものは特定の人々におけるある種の共通言語である(逆に言えば、それを解さない人には話が通じづらい)

といった主題も見いだせると思います。

似た者同士が集まるのは、結局は「文化的素地や風俗習慣、備えた教養や志向などが似通っていれば、それだけ互いに共通言語が多く、阿吽の呼吸や円滑な意思疎通が形成されるから」ではないでしょうか。

たとえば思春期を長くともに過ごせば、文化的素地や風俗習慣、知識などを自然と共有することになり、お互いに絶対的な信頼や、場合によっては尊敬すら醸成されやすいと経験上思います。

「公式サイト」より

さらには、以下のような主題も見いだせます。

本作から見いだせること③
  • 生活や仕事がだらしなくとも、人としての美しい心を持っている人もいる(主人公ではなく同僚のこと)
  • 一意専心に物事に取り組む美しさ
  • 日常生活に自分なりの美学があることで生まれる起伏と魅力
  • 内面からにじみ出る品性、美学、素養
  • 一度として同じ木漏れ日がないように、流転する一瞬一瞬を大切に生きること
  • 日常から主体的に意義やおもしろみを見いだしていくという姿勢の大切さ

よく中高の友人と学生時代にはなしていたのは、「出るよなぁ」です。「人って内面が必ず外ににじみ出るよなぁ」という意味です。

外面をいくら取り繕ったところで、出る。なので学生時代の一時期、その親友と「徳(中国語でダァと読むので、「ダァ」という呼称)を積もう」と内面の涵養を心がけていた時期がありました(ほどなくして終了)

「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉があります。品性や素養は、黙していても出るということでしょうか。

あと、「日常から主体的に意義やおもしろみを見いだしていくという姿勢の大切さ」と記したように、やはり主体的に日常を生きることに大きな意味があると思いました。

たとえばちょいちょい旅先で珍道中になるのは、同行者との化学反応などに加えて、いっちょかみする種をまいたり、物事に首をつっこんだり、目の前の出来事からおもしろみを積極的に主体的に見いだしていく姿勢も関係しているのではないかと思います。

もし何も感じずスルーしてしまうと、目の前でどんなおもしろいことが起ころうと、なんの珍道中にもならないのですから。これは日常すべてに言える姿勢ではないかと思います。

その姿勢こそが日常に起伏と出会いをもたらす、あるいはつかみとることになり、そうした姿勢の積み重ねが幸せな人生へと繋がっていくのかもしれません。

まとめ

本作から見いだせること
  • 人は見かけによらないうえに、私たちは相手のことをわかった気になりがちだが、見えているのは一面だけであって、全体像は他者にはわかりえない
    (まさに拙著『#シンFIRE論』で紙幅を割いてつづったこと)
  • 出自、職業、住環境、社会的地位、金銭的余裕などの表面的な要素で他者を判断しがちだが、文化・芸術・知性・素養などの内面は、相手を深く知らないと知り得ない
  • 人間はやはり「社会的な動物」である
  • 気品や素養といったものは、それを解する人同士で共鳴する
    つまりこれらは特定の人々におけるある種の共通言語である(逆に言えば、それを解さない人には話が通じづらい)
  • 生活や仕事がだらしなくとも、人としての美しい心を持っている人もいる(主人公ではなく同僚のこと)
  • 一意専心に物事に取り組む美しさ
  • 日常生活に自分なりの美学があることで生まれる起伏と魅力
  • 内面からにじみ出る品性、美学、素養
  • 一度として同じ木漏れ日がないように、流転する一瞬を大切に生きること
  • 日常から主体的に意義やおもしろみを見いだしていくという姿勢の大切さ

印象と余韻が残る作品でした。最近素敵な邦画が多いと感じます。

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