映画『怪物』 だれもが怪物になりうる現代を鋭く描いた傑作

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映画『怪物』、だれもが怪物になりうる現代を鋭く描いた傑作

映画『怪物』見てよかったです。なるほど、是枝裕和監督の作品だったのですね。

穂高 唯希

あ~なるほど、こゆことね

と思ったことが、後続のシーンでほぼすべて裏切られます(笑)

つまりは、人々に特定の印象を植え付け、誘導するのもカンタンということです。最初の印象と見終わった印象、180度異なるはずです。

本作を見て感じたこと

さて、本作を見て、以下のことを感じました。実際に本作を見ると、より説得的かもしれません。

映画『怪物』の感想
  • 「一般論」が人を追い詰めることがある
  • 人に特定の印象を抱かせる「印象操作」はカンタン
  • 思い込みやイメージが強いと、自己強化・先鋭化しがち
  • 私たちは「自分の正義」という物差しで世界を見ている
  • 人は自分に都合の良い解釈をし、誤解は生まれ、視点によって事実は無数にある

拙著『#シンFIRE論』と通底する内容があります。

「一般論」が人を追い詰めることがある

たとえば私たちは無意識に、「結婚して家庭を築き、子どもを育てる」という一般論を心得ています。

しかしもし自分の子どもが同性愛者で、親はそうとは知らずに「あなたが結婚して家庭を築くまでは、お母さんがんばるからね」とやさしく声をかけるとどうでしょう。

子どもにとっては自分の性向とは正反対の価値観を押し付けられたようなものです。窮屈に感じ、「自分は親が望むようなオトナにはなれない…」と追い詰められていく可能性もあります。

こうした本当に何気ない一言や当然と思っている一般論が、人を追い詰めることがあるということです。昨今は性の多様性を描いた作品が増えてますね。書籍・映画ともに。

印象操作は驚くほどカンタン

たとえば、雑居ビルが火災になったシーンを見せた直後に、子どもがライターを持っていたら、どう思いますか。

もしやこの子が犯人?

と思う人は少なからずいると思います。

これは一例ですが、そうして人に特定の印象を刷り込むのはたやすいわけですね。

先の大戦でも特定の思想へ誘導するプロパガンダ作品が各国で量産された歴史があります。今もその色彩はあるでしょう。

イメージが先鋭化し、思い込みは強くなる

「ある人に対していったん苦手な印象を持つと、嫌な部分ばかり目についた」という経験はないでしょうか。

それと同じで、人は目の前に起こったことや接した情報に対して自分の主義や過去に都合のよい解釈をすることがあります。

たとえば、「砂糖が体によい」と強く信じている人がいて、たまたま特定の病気が治っただけなのに、「砂糖を摂取しているから治った」という一意的な解釈に達する、といった例が挙げられるでしょう。

私たちは「自分の正義」というモノサシで世界を見ている

『私たちは自己を肯定するために、自分なりの「正義」というよりどころを持っている』

そんなふうに言えるでしょう。

「誰かや何かを下げる、否定する」ことで、自分やなにかを肯定する。そんな人もいます。

そうして各人が正義に駆られて行動や発言をすることで、不和が生じてしまう。そんな避けようもない不和が、どうしても生じてしまう。

したがって、「争いのない世界」という理想郷は、人間が人間でなくならないかぎり、残念ながら存在しえないのかもしれない…。ややもすればそんなふうにさえ感じさせるものが、本作にはあります。

しかしそこで悲観する必要はなく、人間はもともと利己主義であるという性悪説を出発点にして諸制度を整える、まさにホッブズ『万人の万人に対する闘争』の概念は、性善説をもとに諸制度が作られる傾向にある我らがジャパンにも必要なのかもしれない、とも思いました。

まとめ

映画『怪物』の感想
  • 「一般論」が人を追い詰めることがある
  • 人に特定の印象を抱かせる「印象操作」はカンタン
  • 思い込みが強くなっていく過程が鋭く描写されている
  • 私たちは「自分の正義」という物差しで世界を見ている
  • 人は自分に都合の良い解釈をし、誤解は必ず生まれ、視点によって事実は無数にある

人間関係に悩む人が多く、そして情報過多の現代を生きる私たちにとって、普遍的に考えさせられるテーマを随所に見いだせると思います。

今まだギリギリ劇場で公開しているのではないでしょうか。ご機会あれば。

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