2024年の運用環境見通し(米国株、日本株、為替)
以下ご質問に回答しています。
(前略)
穂高様がFIREされる前からのブログ読者です。
いつも貴重で有益で面白い情報をありがとうございます。
さて、ご相談したいことは以下になります。
- 穂高様の2024年運用環境の見通し
- 1と後述のプロフィールを踏まえ、穂高様が2024年に年初1,000万円程度、年内300万円追加投資で運用するとした場合のポートフォリオや戦略について
(中略)
・これまでの運用歴
現在金融資産1100万円程度。
積立NISA、ジュニアNISAで、S&P500やオルカンに450万円程
日本株に穂高様のポートフォリオを参考に特定口座で350万円程
企業型確定拠出年金(60才以降引き出し可能)で、外国株インデックス250万、日本株インデックス50万円といった運用をしています。
・運用に関する悩み
2024年より新NISAが始まるにあたり、これまで通り、S&P500に積立を続けてよいものか迷っています。(クレジットカード積立)
アメリカの利下げ、日本の利上げで円高が進むのではないかと思っており、これまで通りの運用でよいとは行かないのではないかと朧げに思っています。
そこで、旧積立NISA枠で保有しているS&P500を処分してでもポートフォリオを変えるかも含め、穂高様にご相談したいです。
2024年開始後のチューニングは穂高様のこれからのブログを拝見して行なっていきたく存じます。
(後略)
いつもご覧いただきありがとうございます。本記事では、①についてまず回答します。
運用環境を見通すことは困難ながら、「私なら現時点でこう考える、整理する」という趣旨で記しますね。
2024年の運用環境見通し
まず為替については、ドル円相場は、日米2年金利差、つまり日米の金融政策によっておよそ説明できる相関性がみられます。
日米金利差の観点からは、2023年までのような急激な円安傾向というよりかは、多少の円高目線で見ておきたい(※)と現時点では思っています。
(※)補足:為替の決定要因
為替は主に金利差に影響されるとはいえ、国際収支による実需要因などもあるため、金利差のみで決まるわけではありません。
では、ここから日米の金融政策について考えます。
日本の政策金利:利下げ余地なし、利上げ余地あるが限定的
まず日本はすでに短期金利の一部がマイナス金利である以上、利下げ余地がほぼありません。
利上げ余地も以下に述べるように限定的と考えられ、日本の金融政策より米国の金融政策が焦点になると考えます。
日本の政策金利の変化幅は限定的
日銀が『わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、足もとでは「0%台前半」と計算される(出所:経済・物価情勢の展望 2023年7月)』と記したように、日本の潜在成長率(中立金利:経済を熱さず冷やさずの金利)はせいぜい1%程度以下と考えます。
したがって、よほど経済が過熱しないかぎり、「日銀はマイナス金利を解除したとしても、その後の利上げ余地はせいぜい1%程度以下にかぎられる」と考えます。
また、大幅な利上げは新発国債の利払い負担が重くなることから、日本の財政・政治的事情を考えると、なお利上げ余地は限られると考えます。
以上から、ドル円レートにおいて、日本の政策金利の変化幅は限定的(=金融政策がおよぼす影響は限定的)であり、米国の金融政策が焦点になってくると思います(そもそもドル円は元来、米金利の影響を強く受けるわけですが)。
米国の政策金利:債券市場が利下げ幅を織り込むと、円高要因
対して米国の政策金利(=FF金利)は、利下げの織り込みが一部にとどまっており、今後利下げ幅のさらなる織り込みが進めば「金利低下→ドル安円高」に振れると考えられます。
現在、米10年債利回りが4%であることから、債券市場は「今後10年の政策金利の平均値が4%との見通し、つまり来年利下げが始まっても1%程度の利下げ幅にとどまる(※)」と見ている、と考えられます。
補足:(※)の理由
現在の政策金利(FF金利)が5.25~5.5%なので、4%との差分は1%程度
しかし、以下に示すようにFOMCメンバーは9月時点で政策金利の長期見通し(中立金利)を2.5%(中央値)と見込んでいます。

9月FOMC。数値は中央値(出所:FRB)
したがって、今後債券市場がFOMCメンバーの長期見通し2.5%を織り込んでいくにつれて、「米10年債利回り低下 → 円高ドル安」となるシナリオが考えられます。
- 日本は「利下げ余地なし、利上げ余地は限定的」と考えられ、日本の政策金利の変化幅は小さく、米国の政策金利が焦点になると考える
- 米国は利下げ余地が大きく、債券市場はFOMC中央値ほど利下げ幅を織り込んでいない。今後織り込みが進めば、米長期金利にも低下余地
- したがって金利差の観点からは、円高シナリオを意識したい
2024年の米国株、日本株
では以上をふまえ、日米株式への投資については、私なら以下のように考えます。
米国株
- 円からの新規投資は、円高になるまで待ちたい
- すでに手持ちのドルがあるなら、定期つみたてなど投資を続けるか、ハイテク株など選別対象、あるいは金利低下を見込んだ債券買い
日本株(個別銘柄)
- 内需株または円高銘柄もポートフォリオに入れておく
例:電鉄系(例:MSCI除外で下げた京王)、旅行系(例:オープンドア)、円高銘柄(例:セリア、スカイマーク)
ただし、購入タイミング(買い値)が常に重要。
米国株
S&P500への投資は、見た目上は円建ての投信であっても米ドル経済圏への投資であることには変わりないので、為替の影響を受けます。
平時から備えておく。つまり、円高のときに円安に備え、円安のときに円高に備えておく――。
しばらく円安となってきたこともあり、ここから新規で円からドルに換えて米国株を買う行動は、私なら控えたいです。手持ちの円は、円で投資できる日本株の個別銘柄主体にします。
手持ちのドルがあるならば、S&P500などのインデックス系や、今後の景気悪化に耐性のある銘柄やハイテク株などが選別対象になるかと思います。
債券も選択肢ですが、11月よりは妙味が落ちました。今後の金利低下を見込むならば、長期的にはまだ買い場という判断になります。
日本株
日本株は、為替の感応度が高く、米国株の影響も強く受ける傾向にあります。
そして、日本株は指数構成銘柄のうち輸出系が多く円安銘柄が多いため、円高シナリオを念頭に置くならば指数(日経平均株価、TOPIX)は買わず、あくまで個別銘柄に投資します。
コマツ(6301)が好決算でも売られたように、円安でゲタをはいた銘柄は、直近やや売り込まれています。
円安銘柄一辺倒ではなく、上に例示したような円高銘柄をポートフォリオに仕込んでおきます(実際、最近の新規投資は一部円高銘柄セリア、オープンドア、スカイマーク)。
まとめ
以上、あくまで私ならば、そして状況に応じて臨機応変・君子豹変を原則としますが、現時点で以下のように考えます。
為替
- 日本は「利下げ余地なし、利上げ余地は限定的」と考えられ、日本の政策金利の変化幅は小さく、米国の政策金利が焦点になると考える
- 米国は利下げ余地が大きく、債券市場はFOMC中央値ほど利下げ幅を織り込んでいない。今後織り込みが進めば、米金利に低下余地
- したがって金利差の観点からは、円高シナリオを意識したい
米国株
- 円からの新規投資は、円高になるまで待ちたい
- すでに手持ちのドルがあるなら、S&P500への定期つみたてや、ハイテク株など選別対象、あるいは金利低下を見込んだ債券買い
日本株(個別銘柄)
- 内需株または円高銘柄もポートフォリオに入れておく
例:内需系(例:MSCI除外で下げていた京王)、旅行系(例:オープンドア)、円高銘柄(例:セリア、スカイマーク)
ただし、購入タイミング(買値)が常に重要
回答になっていましたら幸いです。
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9月FOMCの結果は、以下にも記しています。
年末にかけての米国株のスタンスは引き続き変わりありません。
個人的には、銘柄選別ありきで日本株にとくに着目しています。