年末にかけての米国株投資戦略
目下、日本株が大ブームですが、そういうときは米国株にも目くばりしておきたいと思います。
米国経済の現状を概覧したうえで、戦略を立ててみましょう。
米国経済の現状:強い
米国経済を概覧するには、GDPの約7割を占める消費がポイントになります。
そして消費の実態を見るには、個人消費に大きな影響をおよぼす「①労働市場(雇用統計)」と「②個人消費(小売売上高)」が代表的な経済指標です。
この2つを下段で見ていきます。
①労働市場:強い
では労働市場の状態をあらわす雇用統計の各指標を見ていきましょう。
なお、雇用統計が米経済を見るにあたって最重要視される理由は、以下2点挙げられます。
- 翌月の第一金曜日に公表され、ほかの経済指標に比べて即時性が高い(米経済の最新状況がわかる)
- 網羅性が高い(労働省が約6万世帯、44万の法人や機関にアンケート)
さて、下に示すように、雇用統計の数字はいずれも堅調です。
非農業部門雇用者数:好調な水準
- 15-20万人増なら好調とされ、2023年6月を除き好調な水準を維持
失業率:低水準がつづく
- 2022年2月以降、3%台。歴史的に低い水準を維持
労働参加率:回復基調
- 回復基調でコロナ前水準をうかがう
以上、労働市場は総じて強い数字が並びます。
②個人消費:強い
- コロナ前を上回る強さ(コロナ対策の現金給付などが背景か)
ということで、以下のようにまとめられます。
- 労働市場・個人消費の各指標で強い数字
- 米経済は雇用・消費の両面において強い
金融政策(金利):高金利が継続する可能性
それでは、片翼を「実体経済」とすると、もう片翼となる「金融政策(金利)」を見てみましょう。
短期金利:2024年末の予想中央値「5.1%」と高い
2023年9月20日のFOMCで発表された「FOMCメンバーによる経済予測(SEP)」によると、2024年末の短期金利の予想中央値は5.1%と、前回6月時点4.6%より0.5%引き上げられました。
現在の短期金利は 5.25 – 5.5% なので「現在と同程度の金融引き締めが2024年末までつづく可能性があらためて示された内容」と言えます。
政策金利(=短期金利)が高止まりすると短期債の魅力が増し、株式の魅力は相対的に落ちるので、今回のFOMCで発表された見通しは、株式市場にとって本来的には逆風です。
- FXでのドル買い
- 米短期債ETF
- 米ドルMMF
これら短期金利に連動する商品に投資することで、今後も約5%の高い金利収入を得られる見通しが続くことになります。
長期金利:「4.5%」近辺まで上昇
長期金利の上昇は、株式(とりわけグロース株)にとって逆風です。株式で高いリスクを負わずとも債券で高い金利を得られるので、株式の魅力が相対的に低下します。
以上から以下のようにまとめられます。
- 米経済は総じて強い(基本的には、株に順風)
- 短期金利が高止まりする見通し(基本的には、株に逆風)
- 長期金利も上昇中(基本的には、株に逆風)
戦略:短期債で高金利を得つつ、米国株は下押しねらう
本来であれば、こうして金利が高止まりする状況は株式にとって苦しい展開です。しかし2023年前半は予想に反して堅調でした。
引き続き、(伝統的な考え方に沿うと)金利が高止まりする状況では、米国株に対しては短期的には慎重姿勢です。
ただし、個別株でボーイング(BA)、ディア(DE)など資本財セクターの株価やSOX指数(半導体指数)が軟調傾向で、さらに下押しがあれば買いたい水準になってきています。
S&P500のバリュエーションも確認しておきます。
現在のS&P500は4,320。2024年の予想EPS 246ドルに基づくと、PERは17.5です。これは、1991~2023年における平均PER 19.5倍よりやや低い水準です。
単純計算では、2024年の予想EPS246ドルに平均PER19.5を乗じると、4,797となり、現在のS&P500の水準よりも10%ほど高い数値が過去の傾向からは算出されます。
現在、ドル資産の多くは米短期債(≒米ドルMMF)に入れています。5%と高い金利収入を得つつ、米国株の下押しがあればこのドル資金を活用して拾うかたちにしたいと思います。
まとめ
- 米国経済:堅調がつづく
- 短期金利:2024年末まで5%以上となる見通し
- 長期金利:上昇中
- 戦略:高い短期金利を利用して、短期債ETF(CLIP)やドル建てMMFなどを活用して5%超の金利収入を得つつ、米国株の下押しをねらう戦略
(資本財セクターや半導体指数が軟調)
米国経済は引き続き強い数字がならびます。今回のFOMCではGDP予想も引き上げられ、強気な見通しです。
短期金利は向こう1年以上高止まりする見通しが示されました。引き続き短期債で高い金利収入を得られる公算が高くなりました。
なお、長期債への投資は不透明要素が多い(米財政不安など)わりに金利が短期債より低いので、個人的には短期債のほうが妙味あり(負うリスクに対するリターンが相対的に大きい)と考えます。
短期債で高い金利収入を得つつ、株価が軟調になれば適時振り向けることもできるので、株価がどちらに動いても精神的・実利的に納得のいきやすい戦略としてかんがえられます。
関連記事
短期債については、以下にまとめています。
ちなみに日本の話としては、短期金利が上がっても、銀行の預金金利はすぐに上がるとはかぎらないので、銀行預金にそのままにしておかず、みずから動く必要があるかと思います。