三菱地所(8802)決算:1Q減益も、2Q以降にキャピタルゲイン計上【2024年3月期 第1四半期】
丸の内の大家さんこと三菱地所の決算です。IR資料でも示されているように、郵船ビルなど一部を除いて丸の内という一等地の不動産を一手に所有しています。
2023年8月10日大引け後(15:00)に発表された2024年度1Q決算は、経常利益が前年同期比 46.7%減 の 436億円となり、通期予想の 2,320億円 に対する進捗率は 18.8% で5年平均の 23.3% とほぼ同水準でした。
雑感としては、以下のとおりです。
- 通期予想に対する進捗率はやや低いものの、2Q以降に計上されるキャピタルゲインの規模次第。「通期予想に向け順調に進捗」という会社発表自体は好感
要旨
まず、決算全体の要旨として、以下のように記されています。
2024/3期-1Qの業績は、前年同期比減収・減益。前期1Qにおいて計上した海外の大型キャピタルゲインの剥落が主な減益要因。
一方で、空室率は低位で推移しており、賃貸利益は底堅い状況が継続。ホテル・アウトレットは事業環境の改善により前期比増益。
全体としての進捗率は低いが、キャピタルゲイン等の計上を2Q以降に予定しており、期初に発表した業績予想に向けて順調に進捗。
出所:決算ハイライト
セグメント別に総覧したうえで、具体的に各事項を見ていきます。
売上・利益(セグメント別)
まず三菱地所は、以下のように利益の過半を「コマーシャル不動産事業」が占め、次いで「海外事業」「住宅事業」という3本柱の構成です。

出所:2023年3月期決算資料
総じて以下のように、通期予想に向けて順調に進捗とされています。特にホテルが好調。
ただし海外事業は、キャピタルゲインの剥落が要因で減収・減益。「通期予想に向けて順調」との記載はなし。
- コマーシャル不動産事業
キャピタルゲイン・インカムゲイン双方の増加により、前年同期比増収・増益。
キャピタルゲインは前年同期比+30億円の増益。インカムゲインは底堅い既存ビルの賃貸利益が継続。ホテル・アウトレットの事業環境改善により大幅増益。
― オフィスビル
再開発予定ビルの閉館による利益の剥落があるものの、既存ビルは低い空室率が継続しており前年同期比増収
― アウトレットモール等商業施設
事業環境の改善により、前年同期比増収・増益。通期予想に向けて順調に進捗。
― ホテル
事業環境の改善により、前年同期比で増収・増益。通期予想に対して大きく進捗。 - 住宅事業
前年同期比減収・減益も前年同期比での分譲住宅計上戸数の減少が要因。通期計上予定の売上の約90%が契約済み、通期予想に向けて順調に進捗。 - 海外事業
前年同期比減収・減益。前期計上のロンドンのオフィスビル、Central St. Giles のキャピタルゲインの剥落が要因。 - 投資マネジメント事業
前年同期比減収・減益。前期のインセンティブフィーの剥落が主要因。 - 設計監理・不動産サービス事業
前年同期比増収・増益。法人向け仲介事業の好調が主要因。
次に、決算ハイライトに沿って確認します。
経常利益の推移(四半期積み上げ)
- 2024/3期-1Qの業績は営業収益2,924億円、営業利益484億円、経常利益436億円、親会社株主に帰属する四半期純利益192億円。
したがって、直近5年の経常利益は以下の通りです。
減益の主な要因:前期キャピタルゲインの剥落
- 営業利益の減益は前期の海外における大型キャピタルゲインの剥落が主要因
これは、同社が昨年度から通期予想で示していた通りなので、ネガティブサプライズではありません。
「海外事業のキャピタルゲインの減少により営業利益は前期⽐減少となるが、特別損益の改善により親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続過去最⾼を更新する⾒通し」
(2023年3月期決算資料より)
空室率は低位で推移
- 空室率は低位で推移(丸の内事務所:2023年6月末2.68%)し、安定的な賃貸利益は継続
2023年3月末は2.43%だったので、わずかに上昇していますが依然として低い水準です。また、全国平均は3.91%なので、丸の内エリアの競争力の高さが示唆されます。優勝劣敗。

出所:2023年3月期決算資料
株価:決算前に上昇 → 発表後下落 → 回復

出所:SBI証券
2023年8月11日現在のPTS(時間外取引)で、1,738円と8月10日の終値-2.22%の水準です。
決算発表前に1,740円→1,780円あたりまで上昇し、発表直後はPTSで大幅に下落し1,700円を割り込みましたが1,738円まで戻しています。

株価チャート(出所:Google)
なお、株価はこの10年ほど下落傾向で、もはやあまり期待されていないですね。
まとめ
今回の決算は、前年に示された見通しである「海外事業のキャピタルゲインの減少により営業利益は前期⽐減少となるが、特別損益の改善により親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続過去最⾼を更新する⾒通し」に総じて沿ったもので、ネガティブサプライズは感じられませんでした。
PTSは発表直後は減益に反応して下がったものと思われますが、中身を確認すれば2Q以降に注目といったところかと思います。
オフィスビルの空室率の上昇(2023年問題)が不動産市場全体としては懸念されていたものの、やはり丸の内のオフィス需要は依然として底堅いことがあらためて示された決算だったと思います。
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