注目銘柄:三菱地所(8802)のリスクを確認
最近最も注目している銘柄の1つは、三菱地所です。
指標上はかなり割安である一方で、いずれ実施される日銀の金融政策変更で打撃を受けるであろう不動産業界でよくもわるくも安定的とみられやすい企業でもあります。
私自身も先月拾っており、今後の動向次第では買い増しを検討する銘柄です。
利益は2.5倍になったのに、株価は半値に
20年前と比較して2倍に満たない水準です。過去のパフォーマンスはかなり微妙です。いかにも不人気銘柄といったチャートの形です。
一方で、8年前の2015年と比べると、株価は0.5倍、EPSは2.5倍です(下図)。
つまり、この8年で「利益は2.5倍になったのに、株価は半分になった」ということです。この期間で比較すると、理論的には投資妙味は相当感じられます。
ただ、見直し買いが入るのか、ですよね。そこに賭けるならば、じっくり待つ姿勢も求められそうですね。
もちろん、バリュートラップという言葉があるように、割安に放置された銘柄はそのまま放置され、株価が低迷し続けることがあり得ます。とくに以前の日本株はそういった銘柄は多々ありました。
金融政策の変更によるリスク①:財務悪化
また、日銀の金融政策変更は不動産業界にとって大きな懸念材料でしょう。日銀利上げによる財務悪化リスクを考えてみましょう。
YCC撤廃・利上げがあれば、たとえ地所のように負債の固定比率を高めて強固な財務にしていても、業界全体の不透明感から大きく売られる可能性もあります。
負債3兆円なので、仮に一気に借り換えとなると、単純計算で負債調達金利1%で300億円の利益押し下げですね。そもそも長期固定比率が約9割なので、一気に借り換えということはまず考えにくいですが。
金融政策の変更によるリスク②:収入悪化
利上げによってもう1つ考えられるリスクは、収入面。金融引き締めは金利上昇を通じて実体経済を押し下げ、景気が悪化するリスクが考えられます。
- 地所の収入のうち約3~4割と最も多くを占めるオフィスビル事業は、リーマンショック後でも賃料の低下は小幅
- 空室率もリーマン危機後に上昇も、全国平均と比べると相当小幅
オフィスビル事業のうち収入の6割を占める丸の内の安定性が強いのでしょうね。賃料の高いエリアである丸の内にオフィスを構える企業は体力が必要ですから、その時点である程度ふるいにかけられ、地所のオフィス賃料収入と空室率が安定する源泉となっていそうです。
あとはアウトレットモール事業、ホテル事業はインバウンドが落ち込めば回復基調に水を差すでしょうし、海外事業あたりで投資の失敗があれば不景気で顕在化することも考えられるでしょう。
まとめ
この手のリスク評価はあくまで想像できる範囲内なので、想定外のことが起きた場合には役に立たないわけですが、とはいえある程度の目算を立てられることにはなります。
基本的な傾向として、三菱らしいと言いますか、よくもわるくも安定。ゆえに金融政策の変更など、外部環境の悪化に対しては財務・収入の両面で比較的堅牢であることを期待できる内容ではありました。
ただしこれは理論的な側面であり、不人気であれば株価は売られますね。保有不動産の含み益を加味したPBRは0.4と指標上は超割安です。見直し買いが入ることに賭ける場合、じっくり長期目線で待つ姿勢も求められる可能性があります。
今週金融政策決定会合があります。あくまで臨機応変にやっていきたいと思います。
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