小田急電鉄(9007)の決算雑感
関東大手私鉄の一角、主に新宿~箱根・江の島を結ぶ小田急電鉄の2023年3月期の決算について雑感を記します。
小田急は主に以下の事業で構成されます。
- 鉄道
- 不動産
- 流通(小田急百貨店・小田急ストアなど)
- その他(ホテル、レストラン飲食など)
年度にもよりますが、鉄道と不動産で8割以上の利益を占める傾向がみられます。
今期業績
経常利益は251億円。コロナ前の水準(496億円|2018年度)の半分まで回復しました。
電鉄の他社にも言えますが、不動産が安定して利益を生んでいますね。今期営業利益266億円のうち180億円は不動産です。
4月末に発表された本決算を受け、株価は反発傾向が続いています。
株価:JR西日本の公募増資で連想売り → 回復傾向
2021年9月2日にJR西日本が公募増資を発表して以降、「ほか鉄道各社も公募増資に踏み切るのでは…」といった連想売りからか、株価はコロナ前を割り込み軟調でした。
公募増資は株式発行総数が増えることで1株あたりの価値が下がるため、株価の下落要因になります。ただし、結局小田急はコロナ以降で公募増資はみられません。
有利子負債:コロナ前後で悪化せず
また、以下のとおり、有利子負債の額は横ばいです。2020年度には7,800億円まで一時的に増えたものの、翌年には落ち着いています。
- 2018年度:7,152億円
- 2022年度:7,064億円
対照的なのはJALです。コロナで打撃を受けたJALは、コロナ前後で借金が急増(2018年度:1,423億円 → 2022年度:9,255億円)しています。借金が増えれば支払利息も増えるため、減益要因になります。
対して小田急はコロナ禍でも財務キャッシュ・フローは減少(≒借金返済・社債償還)しており、財務悪化は感じられません。
以上、有利子負債の増加や公募増資がないことから、財務の観点からは業績がコロナ前まで回復すれば、理論的には株価はコロナ前の水準である2,500円以上が正当化されると考えられます。
乗客:コロナ前の85%まで回復
コロナ前(2018年度)と比べて、乗客や売上は85%と回復途上ではあるものの、前期(2021年度)比で+10%以上と回復傾向です。
来期予想:コロナ前に近い水準まで回復
- 営業・経常利益ともに来年度は増益を見込む
コロナ前に近い水準まで回復する見込みとなっていますね。不動産はよくもわるくも横ばい気味ですから、コロナ前まで回復を握るのはやはり鉄道事業ですね。
鉄道事業:コロナ前の90%まで回復見込む
- 鉄道事業における利益は、来期も回復継続を見込む
- 輸送人数・収入は、コロナ前の約90%まで回復を見込む
先日記したように、今年の4月~GW明けにかけて、朝の早い時間帯における通勤・通学客が明らかに増加しています。したがって、このままいけば今期はけっこう回復するのではないかと思います。輸送人数の会社予想は+3.4%ですが、もう少し行ってもおかしくない印象です。
まとめ
コロナ禍で極端な財務悪化(≒支払い利息の増加)や公募増資(≒1株価値の希薄化)はみられません。
外部環境の大きな変化がなく、コロナ前まで鉄道事業が回復すれば、理論的にはコロナ前の株価2,500程度は射程圏内という見方は可能と思います。
コロナで打撃を受け、コロナ前の水準回復過程にある企業というのは、ストーリーとしてわかりやすく、投資する際もイメージしやすいと感じています。JALなんかもまさにそうです。
ちなみに小田急は1万株を保有(=現在の株価で2,100万円に相当)すると、年間160枚の乗車券が送られてきます。沿線居住で通勤でもないと、使い切れない量ですね。
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