「最澄と天台宗のすべて」で印象的だった5つのこと
九州国立博物館で特別展「最澄と天台宗のすべて」を見てきました。非常に面白かったです。
今までこの手のものは今ほど真剣に見ようと思わなかったものです。しかしFIREしてからというもの、「ジャンルに関わりなく、多様なものをじっくり深く知ろう」という気持ちが強くなりました。
そもそも天台宗とはなんぞや、ということですね。
天台宗とは、中国(隋)の智顗(ちぎ、538-597年)を実質的な開祖とする大乗仏教の宗派です。小学生の時に塾で学んだことを思い出します。
遣唐使船で唐へわたった最澄によって平安時代初期(9世紀)に日本に伝えられ、多くの日本仏教の宗旨がここから展開したとされています。
つまり天台宗は日本仏教の源流とも言えるのでしょう。
そんな特別展「最澄と天台宗のすべて」で印象的だったものを5つ紹介します。
なお、本記事で用いる写真はすべて当館の許可を得て撮影したものです。
最澄の言葉 ①
最澄の言葉に以下があります。
「どんなに愚鈍な者も12年ひとつのことを続ければ、必ず成果がある」
最澄はこの経験から、比叡山に入る僧侶には、12年にわたって山に篭る「籠山業」を定め、それは今日にも引き継がれているとされています。
現代でも通じることですよね。(方向性を誤らなければ)時間と労力を長い期間投じた分野においては、相応の理解と知見を得られるはずです。
一方、ひとつでなくとも複数のことを幅広く知れば、共通項や相通じる本質を見いだすことができ、そこから学べるものもまたあると思います。
最澄の言葉 ②
「国宝とは何物ぞ。宝とは道心なり。道心ある人を名づけて国宝となす」
法華経巻第八に、悟りを目指す心「道心」を持った人こそが国の宝であると最澄は説いています。
そして、12年の修行を通じて、国の宝となる人材を育てることを理念としていたと。
- 日本仏教が国のために人材を育てようとしていた
- そのような「国家のため」という気概とモチベーションを原動力のひとつにしていた
ということです。日本仏教にこのようなイメージを持つ人はあまりいないのではないでしょうか。意外ですよね。
最澄の言葉 ③
「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」
利己的ではなく利他的であることが慈悲の極みである、と説いています。
利他的な方が、結局は自分の幸福感も増す傾向にあると思います。
平安貴族の関心事
平安貴族のあいだで最大の関心事となっていた「死後、極楽へ生まれ変わるために現世において何をすれば良いのか」という疑問に教学的な根拠を示しながら応えたのが「源信」という人物だとされています。
当時、まさに経済的な自由を得ている貴族たちの関心事が、
- 「天国に行くために現世でなにをすればよいか」
だったというのは非常に興味深いところです。
その関心事への答えとして源信は往生要集という書物で、生き物が輪廻転生するという六道(天、人、阿修羅、畜生、餓鬼、地獄道)を説きあかし、8種類の地獄の様子を述べます。次に、阿弥陀の極楽浄土がいかに素晴らしく楽しいところかを説き、穢れたこの世をはなれ、極楽浄土をめざすことを促し、そのための方法として念仏を勧めたとされています。
要は、源信という僧侶は、「人々が気になる疑問や命題に対して1つの回答を提示した」ということですね。なるほどという感じです。
これは時代を問わず普遍的に価値を持つ行動でしょう。
過酷な修行
「千日回峰行」という数ある延暦寺の修行の中でも最も厳しい行の一つとされ、不動明王に近づくための修行が紹介されていました。
その修行内容とは「比叡山の峰々にある250箇所の神社、仏閣、霊木、霊石などに祈りを捧げながら、1日に30kmも歩く」のだそうです。
6年目以降は、1日に60〜84kmも歩くと。過酷すぎて450年で51人のみ達成だそうです。
以下画像をご参考に供します。
いやこれはかなり過酷ですね‥。
1日に30km歩くこと自体はそこまで過酷ではないものの、それを100日単位で続けるのは足に相当な負担がかかるはずです。私も登山をやってきたので、その過酷さは容易に想像できます。
達成した方のビデオ映像(撮影不可)も流れていましたが、立っているのもやっとという感じでした。
ここまで過酷なことを経験すると、精神的には無我の境地になるのもあり得るのだろうなと思ってしまうほどでした。
まとめ
所要時間は1時間だそうですが、2時間半かけて見ました。それぐらい面白い。
様々なジャンルを幅広く吸収し、学び続けることは人生を豊かにすると思います。
国内に4つある国立博物館のひとつ、九州国立博物館へ。
自分が生まれた国を複数の観点から知ろうとすることは大切だと思います。まずは知る、勉強する、そこから。 pic.twitter.com/NoxEoncISq— 穂高 唯希|Yuiki Hotaka (@FREETONSHA) March 4, 2022
ちなみに来訪者のほとんどがご年配の方々でした。若い人にもぜひ来て欲しい場所です。
国民ひとりひとりが様々なことを勉強し、主体的な賢明さを備えることは、ひいては国民国家を健全たらしめる要素にもなると思います。
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