「投資法人みらい」資産運用報告書(第9期)に関する雑感
投資法人みらいは、新型コロナウイルスで影響として特徴的に影響を受けたアセットタイプである「ホテル」「オフィス」がポートフォリオのメインであることから、個人的には興味深いJリートです。
その運用報告書に関する雑感をまとめておきます。
まず、投資法人みらいに関して、以下おさらいです。
「投資法人みらい」について
投資法人みらいのスポンサーは、「三井物産」と「香港系投資会社 イデラキャピタル」による50%折半出資です。
利益相反リスク
リートの担う役割の1つとして、保有不動産の売却先の確保として用いられるケースが挙げられます。流動性の比較的低い現物不動産の現金化に適しているのが、リートへの売却です。
投資会社、特に外資系の投資会社がスポンサーとなっている場合、投資会社が投資目的で購入した不動産が、売れない物件だった場合や収益率が当初見込みより悪化した物件の処分先として割高な価格でリートに売却されるリスクが一応あります。
優良物件を優先的に得やすい不動産会社がスポンサーのリートや、資金調達・ファイナンス面で有利な銀行系のスポンサーのリートと比べると、投資会社がスポンサーであるリートはこの点、知っておいてもよさそうですね。
とはいえ、本投資法人の場合、物産も事業領域が広く不動産ビジネスも手掛けており、ヘルスケア関連・物流・商業施設の運営もしていることから、アセットタイプの多角化が必要な場面でどう活きるのかというところでしょうか。奇しくもコロナ禍以降は、その必要性が生じています。
資金調達
一方、信用力が高い三井物産がスポンサーである場合、資金調達の観点からメリットを見いだせます。
リートはそもそも利益の90%を投資家に分配することで法人税が免除されています。つまり利益剰余金として内部留保できる額が限定的です。
ということは、資金調達はリートを運営していく上で根幹を成すものと言え、借入条件の優劣は相対的に重要ですね。資金調達の面で、信用力の高さはメリットになり得ると思います。
資産運用報告書(第9期 2020年5月1日~2020年10月31日)
さて、資産運用報告書(第9期 2020年5月1日~2020年10月31日)をざっと読んで、個人的なポイントは、以下の通り。
ポートフォリオ
- 三大都市圏に所在する資産が、主要な投資対象
- オフィス・商業施設・ホテル・グロース
稼働率
- 96.2%
新型コロナウイルスの影響
- ホテル及び商業施設で大きな影響、ホテルで稼働率の大幅な低下
オフィス賃貸市場
- 空室率が徐々に上昇傾向、今後の見通しは在宅勤務の定着度合いを注視必要
ホテル及び商業施設
- 新型コロナウイルス感染症の影響を理由とした賃料の減免要請あり
商業施設
- ミ・ナーラにて、緊急事態宣言による営業休止等の影響
有利子負債調達
- ほぼすべて長期化・固定化 → 金融・金利変動の影響は軽微。
(ちなみにほかのリートは、TIBOR+αといった形で変動金利型も)
分配金
分配金は前期比8%減と、新型コロナウイルスの影響を直接的に受けるポートフォリオ構成のわりには、底堅い印象。
ちなみに、2018年時点では、ホテル・オフィスでポートフォリオ全体の75%を占めていました。
稼働率も、Jリートの優等生とも言えるスターツ(95.7%、2020年10月期)とそん色ない値。
ポートフォリオの入れ替え
一部のホテル(コンフォートホテル新山口)を、ディフェンシブ性を意識した工業用のアセットタイプ(小田原機材管理センター)に入れ替えるなど、ポストコロナを意識したポートフォリオ構築が進められているようですね。
オフィス賃貸市場では、東京都心部では徐々に稼働率が低下している物件もみられ始めています。まさに在宅勤務がどの程度定着していくのかがポイントとなりそうですね。
株価
投資口価格(株価)も、コロナショック時から継続的に回復し、1.5倍。2019年の水準を超えはじめた形。
住宅系リートは絶好調ですが、投資法人みらいのポートフォリオ構成を考えると、納得性のある水準でしょうか。
コロナショック後に中期目線で買っていた場合は、多くを望まないスタンスであれば、この水準で一部を利益確定としても、一定の納得性を感じやすい頃合いではありますね。
Best wishes to everyone.
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