一般NISA枠をレバレッジETFで活用【SPXL・TECL】
新年を迎えると、以下NISA枠も新たにできますね。
- 一般NISA
- つみたてNISA
目的によりますが、幅広い層におすすめしやすいのは「つみたてNISA」です。理由は以下の通り。
- 非課税期間が20年という長期投資になる
- 年間の上限額があるため、つみたて・時間分散になる
つまり、必然的に「長期・つみたて・分散」という資産運用の王道戦略になります。
市場が右肩上がりである前提では、最初期に可能な限り多くの額を市場に投入した方が理論的には合理的です。ただ、暴落時期は読めず、運悪く一括投資直後に暴落がくると、精神的にしんどいです。そこで一案となるのが、時期を分散して積み立てることですね。
以上は、念のための前置きです。
一般NISAの活用法(リスク選好的な方)
一般NISAの主な活用法としては、以下が挙げられます。
- 5年以内の値上がり益をねらい、非課税にする
- 配当に係る税金を非課税にして、配当金の最大化
この①の戦略を採る際には、リスク選好的な方は「レバレッジ型ETF」は選択肢にはなります(ボラティリティが高いため、あくまでリスク選好的な方に限ります)。
米国株へ投資するということは、同時に以下も意味します。
「過去リターンが良好であった投資対象(米国株)が、今後も長期的には成長するという可能性に賭ける」
ということは、その可能性にリスクを取ってでも最大限賭けたいというリスク選好的な方は、レバレッジをかけることも選択肢の1つにはなります。具体的なETFは、以下があります。
- SPXL(S&P500のレバレッジ3倍型)
- TECL(ハイテク特化のレバレッジ3倍型)
「一般NISA × レバレッジ型ETF」の可能性
「各ETFに5年前、NISA枠で120万円投資した場合」、どうなっていたか見てみましょう。下図は【SPXL】【TECL】のトータルリターン推移(2015~2020年)です。

トータルリターン推移
赤:TECL 青:SPXL 黄:S&P500
仮に過去5年間、初年度に120万円を各ETFに投じていた場合、下表の通りです。
トータルリターン | 実現利益 | 減税額 | |
TECL | 10.1倍 | 1092万円 | 222万円 |
SPXL | 3.2倍 | 264万円 | 54万円 |
※2015~2020年
「出来すぎですね。何度も述べてきた通り、2022年は注意した方がよいと思います」と2022年1月10日に記していました。今まさに大きな下落を迎えています。
また、この手のレバレッジ型ETFには、当然ながら注意点があります。以下3点、記します。
- 指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る傾向
- やや高い経費率
- 下落局面での心理的負担
注意点①:指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る傾向
そもそもレバレッジ型のETFとは、
- 連動する指数が、+1%(-1%)なら、+2%(-2%)
- 連動する指数が、+2%(-2%)なら、+4%(-4%)
となるよう設計された金融商品です。
では、レバレッジ型ETFの値動きの特徴を把握するために、3日間で以下値動きのケースを考えてみましょう。
Day 1 | Day 2 | Day 3 | |
ケース① | +2% | -3% | +1% |
ケース② | +2% | +3% | +1% |
ケース①:市場が上下するケース
Day 1 +2% |
Day 2 -3% |
Day 3 +1% |
|
指数 | 102 | 98.94 | 99.93 |
レバレッジ型ETF | 104 | 97.76 | 99.72 |
このように、レバレッジが乖離なく機能した前提(…※)でも、レバレッジ型ETFは、3日を終えた時点で指数の倍率分よりパフォーマンスが劣ることが確認できます。
※厳密には、ETFは需給によって市場価格が基準価格から乖離することがあり、その場合もパフォーマンスは落ちます
ケース②:市場が一本調子のケース
Day 1 +2% |
Day 2 +3% |
Day 3 +1% |
|
指数 | 102 | 105.06 | 106.11 |
レバレッジ型 | 104 | 110.24 | 112.44 |
市場(指数)が下落を挟まずに上昇するケースでは、理論的にはレバレッジ型は有効に機能することになります。ただし、このケースは長期的には起こり得ません。なぜなら、短期的には一本調子の上昇はあっても、長期的には必ず上下動を繰り返すからです。
ケース①で「このように、レバレッジが乖離なく機能した前提(…※)でも、レバレッジ型ETFは、指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る」と記載しました。この傾向は、投資期間が長期になるほど、影響が大きくなり、レバレッジ3倍だからといって長期で指数の3倍のパフォーマンスを上げることは難しいです。
注意点②:やや高い経費率
レバレッジ型のETFは、経費率が高い傾向にあります。
理由は、先物との値動き差・最低取引単位・金利などありますが、倍以上の資金の値動きをめざすわけなので、そのためには相応の資金調達コストが必要です。
たとえば、経費率0.1%以下のインデックスファンドもある中、【SPXL】の経費率は0.95%と高めです。
ポイント③:下落局面で耐えられるか
①で示した通り、レバレッジ型は下落幅も相応に大きくなります。
コロナショックで、暴落局面で早々にレバレッジ型ETFの投げ売りが見られました。
変動幅が大きいため、下げた時の心理的負担も大きくなりがちです。
長期投資とは、「長期的に右肩上がりを描くであろう投資対象に賭けることで、その果実を享受しよう」とする行為ですが、途上で暴落も起こります。
そのため、長期投資では暴落局面で投げ売りしないことも重要になってきます。この観点においては、レバレッジ型ETFは、心理的に負担が大きくなるので注意が必要です。
まとめ
いずれにしても、リスクを取って高いリターンをめざす人には、1つの選択肢にはなりますが、相応にリスクを負うことに大きな注意が必要です。
- 指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る傾向
- やや高い経費率
- 下落局面での心理的負担
なお、仮にNISA枠で損失確定となれば、「NISAは損益通算不可」というデメリットが表面化します。拙著にも詳述の通りです。
万人向けの商品では決してありませんが、資産形成の切迫性が高い人は、リスクも高いですがこういった方法も一応ありますよ、ということで記しております。
Best wishes to everyone!
NISA関連は以下の通りです。