相続財産の運用。認識しておきたいこと。
相続財産という性質上、「故人を尊重しつつ運用したい」という内容のご質問をいくつかいただきます。
相続財産は通常、まとまった額を一気に受け取ることになると思います。
株式市場に投入する場合、株式の長期成長を前提とすると、一気に資金を投入したほうが理論上は合理性があります。
しかし、心理的に耐えられるかどうかは人によります。直後に暴落した場合、心理的なショックは大きいと思います。
そこで、「中庸」をおすすめします。
たとえば、
- 1000万円の相続のうち、500万円は一括で投資、残りの500万円は現金、または3年ほどかけて積み立てる
- もしくは、まずは「月3万円」など少額からはじめ、「この方法は自分に合っている」という感触を得てから、まとまった資金を投入する
以上をふまえ、以下ご質問です。
ご相談
題名: 相続財産の使い道について
メッセージ本文:
三菱サラリーマン様
はじめまして。いつもブログで勉強させていただいております。
自己紹介させていただきますと、私は地方都市で公務員をしている男性です。
家族は妻と4歳の息子がおります。妻は正社員で今後も共働き予定です。
突然ですが、ご相談したいことがあり、メールさせていただきました。
4,000万円の相続
1年ほど前に母親が亡くなり、残された父、兄とともに財産を相続し、相続税を納付した結果、私個人に4000万円ほどの現金が入りました。
資産状況
現在の我が家の資産状況は以下のとおり。
- 現在5000万円(うち相続4000万円)
- 株200万円
- 投資信託700万円
→ 今後も10万円/月を全世界株に分散したインデックス投資を継続予定 - 妻名義財産 ?円
→別管理のため不明 - 住宅ローン残高1800万円
背景
亡くなった母は大変な倹約家で昔から無駄遣いは一切しませんでした。自分が長生きしても、お金で子供に迷惑を掛けまいと、頑張って貯蓄してきたようです。
残念ながら、思ったほどは長生きはできず、急逝してしまい、私たち家族が財産を相続することとなってしまいました。
相続財産は、母が苦労して貯めたお金なので、簡単に手を付けてはいけないと思う一方、銀行預金だけでは、インフレリスクに耐えられず、長期的に目減りさせてしまいそうなので、少しずつでも投資すべきではないかとも感じています。
私は以前から少額ですがインデックス投資を継続しており、自分の給与を投資することに抵抗はありません。
しかし、相続財産となると、幼い頃から母の苦労を見てきたので、リスク資産に投じてしまってよいものか迷いがあります。
母のお金を無駄にしてはいけないという思いと、死に金にせず、増やす努力をすべきではないかという思いがループし、なかなか答えがでません。
現在の案
現在の案としては、
- 半分の2000万円を銀行預金としておき、将来の子供の教育費に充当する。
- そして、もう半分の2000万円で米国高配当ETFを購入し、配当金を生活費に充て、余剰分でETFの買い増しを続けていこうと思うのですが、このようなやり方をどうお感じになりますか。
配当金を生活の足しにするような考え方であれば、故人にも失礼にはならないと思うのですが、いかがでしょうか。
高配当株ETFの買い時
また、私はインデックス投資は多少、慣れているのですが、高配当ETFは経験がなく、買い時が今ひとつ分かりません。コロナ前と比較すると割安のように思うのですが、どうでしょうか。
最終的には自己責任であることは承知の上で、三菱サラリーマン様なら、同じような質問を受けた経験があるのではないかと思い、失礼ながら質問させていただきました。
最後になりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。まだまだ暑い日が続きますので、どうぞご自愛下さい。
こちらこそ、ご丁寧なメッセージをいただき誠にありがとうございます。
回答
「全額を一気に投入せず、あくまで半額。そして、高配当株ETFからの配当金を生活費に充て、余った分を投資に回す」とのことですね。バランスがとれた現実的な良案かと思います。
市場がどちらに転んでも大丈夫なように資金管理しておくことが、投資では大切ですね。
半分であれば、暴落でも買い増しできます。また、今まで給与をインデックス投資に回していたということで、応分にご経験ありと思います。
少なくとも半額は死に金にもなりませんし、偏った資金管理ではないと思います。
では、以下2トピックについて
- 相続財産を運用するという精神面への配慮
- 高配当株ETFの買い時
① 相続財産を運用するという精神面への配慮
相続財産は、母が苦労して貯めたお金なので、簡単に手を付けてはいけないと思う一方、銀行預金だけでは、インフレリスクに耐えられず、長期的に目減りさせてしまいそうなので、少しずつでも投資すべきではないか
配当金を生活の足しにするような考え方であれば、故人にも失礼にはならないと思うのですが、いかがでしょうか。
上のように記載いただいています。資産運用において、精神面への配慮は大切ですね。とくに相続財産は、故人への尊重や思いも関わってきます。
ご家庭の事情は千差万別ですから下手なことは申し上げられませんが、一般的に親心としては「相続財産は子女の望むように、子女が幸福追求のために活きれば、それこそ親として本望」ではないでしょうか。
考え抜いた上であれば、天上からご理解いただけるのではないでしょうか。
② 高配当株ETFの押し目買いの目安
高配当株ETFの買い時としては、VIX指数が20または30を上回った時が、過去においては押し目買いとして機能した水準になります(暴落局面では機能しませんが)。
以下にまとめています。ご参考に供します。
まとめ
相続財産という性質上、「故人を尊重しつつ運用したい」という方もいらっしゃると思います。
ギャンブル的に使わず、手堅く運用することで、納得もいきやすいのではないでしょうか。
末筆ながらご多幸をお祈り申し上げます。ご質問ありがとうございました。
関連記事
どのように資金を投じていくか、ということで以下のようなご相談もいただいています。
コメント
丁寧なご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
相続財産は時間分散を図るため、少しずつ市場に投資したいと思います。
母は亡くなる数日前に、「相続は親が子供にしてあげられる最後のこと。その先は何があっても絶対に助けてあげることはできないからね。」と言っていました。
その言葉を忘れないためには、どのような手段で財産を活用することが最適なのか、自分なりにこの1年じっくりと考えてきました。
高配当ETFに資金を投入し、定期的に配当金を得ることで、今後も母が私たち家族を支えてくれていることを実感でき、感謝し続けることができるのでは思っています。
いずれは、私の息子にも母の話を伝え、財産を引き継ぐことができればと思っています。
アドバイス、ありがとうございました。
追試
私もFF大好きでしたよ。
私は三菱サラリーマン様よりは少々年上なので、学生時代に熱中したのはⅦですね。
昼夜逆転でやり込んだことがいい思い出です。