【JEPI】超高配当ETFは「配当積み上げ」に適するか
「JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカム ETF(JEPI)」という分配利回り10%超の超高配当ETFがあります。
米国株と特殊な債券を組み合わせて、「値上がり益と高配当の両方を得る」ことをめざすETFです。
以下ご質問をいただいています。
読者
配当を積み上げたいです。
穂高さんがこれから配当を積み上げる場合、JEPIはアリですか?
穂高さん。はじめまして。
いつもブログ・Twitter拝見させて頂いております。
穂高さんの意見をお伺いしたく、緊張しながらもこのメッセージを書かせて頂いております。
現在、NISAにて投資信託:全米インデックス(120万円)+米国高配当株(80万円)計200万円を運用しております。
今のような横横の相場が続くと、高配当からの配当金が心の支えとなっており、インデックスから高配当に全振りしたい気持ちが強くなっております。
配当金の積み上げが私には向いていると感じている中でも、
- NISA口座の投資信託を売却して、高配当へ乗り換えるべきか、
- NISA口座はそのまま、次回以降の買い付けを高配当のみにして行くべきか
迷っております。ちなみに2023年のNISA買付枠の空きがまだあります。
また、超高配当と言われる$JEPIを魅力的に感じており買付を検討しております。
穂高さんも高配当を積み上げておられましたが、今現在から高配当を積み上げて行くとした場合、JEPIは投資対象となり得るでしょうか。また、「なる/ならない」と判断する理由をお聞かせ願えませんでしょうか。
はじめてのメッセージにも関わらず、私事の悩みを長文でお伺いする形となり申し訳ございません。
たくさんあるメッセージの中で、もし目に止まりましたら返信、ブログで回答等頂けますと嬉しく思います。これからも穂高さんのツイートもブログも楽しみにしております。宜しくお願い致します。
平素よりご覧いただきありがとうございます。
不安定だったり膠着した相場が続くと、配当金の存在感が大きくなりますよね。
インデックスと高配当で迷われているなら、今のようにどちらもやって様子見でもよいかと思いますよ。
JEPIの活用
さて、「投資対象になると思うか」とのことですが、「なる」と思います。ただし、私なら以下方針を守ります。
- 下落局面での購入をねらい、
- 集中投資せずに分散する
理由は以下2点です。
- 「特殊な設計」による高配当
- 株価データが少ない
特徴①:「特殊な設計」による高配当
JEPIは、「株価の値上がり益を一部捨てる代わりに、『高配当』と『緩やかな株価変動』を実現しよう」という商品です。
- 約80%:主にS&P500構成銘柄へ投資
- 上限20%:特殊な債券(コールオプションの売りが組み込まれている)へ投資
「コールオプションの売り」と聞いてもよくわからないと思うので、例を挙げます。そろそろ種まきの時期です、稲作でたとえましょう。
あなたが地主だとします。
土地を貸して、地代を毎月もらう代わりに「その土地で収穫できたお米は、豊作・不作にかかわらず全て、土地を借りた人にあげる」といった感じです。
つまり、お米がいくら豊作(=株価が上昇)でも、あなたの収入は増えず、地代だけに限定されます。一方で不作(=株価が下落)でも、地代は得られます(…★)。
- この地代(オプション・プレミアムと言います)が、高配当の主な源泉になっています。
- 豊作・不作(株価の変動)による影響をおさえる仕組みです。
単純な株式100%のETFと異なり、JEPIには、このように「仕掛け」がほどこされています。複雑な仕掛けがあるほど、リスクは予察しづらくなります(例:リーマンショックの引き金となった不動産証券化商品)。
したがって、このような商品は私ならあくまで分散し、定期つみたてはせずに購入タイミングをねらいます。
トータルリターン:上げに弱く、下げに強い
下図トータルリターンを見ると、「上げに弱く、下げに強い」推移です。(★)をもう一度読むと、納得しやすいかと思います。
「S&P500の値上がり益を一部捨てることで、株価変動をマイルドに」というJEPIの運用方針どおりのリターンを示しています。
2022年の運用成績は-3.5%で、S&P500の-18%を大きく上回りました。
リスクあたりのリターン(=シャープレシオといいます)もVYMと同等で悪くありません。現時点では、良好な推移といえます。
特徴②:株価の過去データが少ない
JEPIは2020年5月20日に誕生したので、リーマンショック(金融危機)やコロナショック(想定外の事態)といった暴落局面を経験していません。
したがって、過去データがとぼしいため「暴落で実際に緩やかな下落でとどまるのか」といった不透明感はあります。
「緩やかな株価変動をめざす」というJEPIの運用方針が、今後の暴落局面で本当に実現するのか、見ていく必要があるでしょう。
まとめ
JEPIは分配利回りが10%超と高く、配当愛好家には魅力的な水準です。
現時点でリターンも良好です。
一方、手堅い高配当株ETFとしてVYMがあります。「VYM:JEPI=8:2」というポートフォリオの場合、分配利回りは4%を超えます。一例としてこのような活用法も考えられますね。
一方で、商品設計が複雑になるとリスクは予察しづらくなります。
したがって、「下落時に購入をねらい、あくまで分散する」というのが手堅い戦略かと思います。
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同じく「特殊な設計」での高配当ETFとして【SRET】があります。こちらはモーゲージ債を組み込んでいるため、懸念していたような株価推移となりました。
高配当株ETFでは、VYMが安定しています。ただし分配利回りは3%程度です。
高配当戦略は、メリット・デメリットの両方を認識のうえで取り組むと、より納得いきやすいかと思います。