米国株投資の為替リスクの考え方における、そもそも論

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米国株投資を始めるにあたっての為替リスクについて、どう考えるか」というご質問に回答いたします。

結論的には、日本円という単一通貨に寄せること自体がそもそもリスクであるという点は認識しておきたいところです。

以下、インフレ率・賃金上昇率・経常収支を踏まえた上で、述べます。

米国株の為替リスクへの考え方における、そもそも論

まず1つ以下のような考えがあります。

それは、「為替リスク以前に日本円という単一の通貨への資産集中は、そもそもリスク」というものです。

「通貨を分散させない=1つの通貨に依存」となるわけですが、日本にいると忘れがちかもしれません。ほかの国に比べて、日本国民の自国通貨への信認は高いからです。これは、外国の友人と話していてそう感じます。

過去10年で低下した日本の相対的購買力

例えば先日、友人と登山していましたが、曰く「米国・欧州ともに現地通貨建て物価は以前より高騰傾向。チップも年々上昇するのを肌で感じる」と。

私も10年前の北京留学時と比べると、今の中国はモノを選べば安いものも依然ありますが、特に上海など大都市の商業施設では東京の物価を優に超えていると感じました。

米欧中とも共通するのは、日本より高いインフレ率と、賃金の伸び率です。

  • 定量的な一部データは以下記事ご参照
OECD各国で賃金が一人負けの日本人が採るべき資産防衛術
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日本が「高い賃金上昇率、相応に伸びたインフレ率という状況下での円安」ならばまだ良いですが、過去10年、現実はそうではなく、日本の世界における相対的な購買力は、「各国インフレ分+円安」という形で10年前より落ちていると感じます。

日本の経常収支に見る悲観シナリオとは

さらに、日本は今でこそ「政府部門の債務超過分 < 家計部門の純資産」でかつ「世界最大の対外資産保有国」を維持していますが、今後はどうでしょうか。

将来的に日本の経常収支が赤字になり、財政ファイナンスを海外に頼ることになった時、円のみで保有するのは少し怖い」といった解釈も可能です。これが悲観シナリオとして挙げられます。

今まで日本は、政府部門の大幅な赤字を民間部門の貯蓄が上回ることで、経常収支を黒字で保ってきました。

しかし今後も政府部門の借金(国債残高)の増加が予想され、高齢化による民間の貯蓄率減少に伴い、経常収支が赤字になる懸念はくすぶります。

経常収支と国債

ここからは少しアカデミックな話なので、黄色枠部分は飛ばしてもらっても大丈夫です。

ご参考

 貿易収支(経常収支)は、結局その国の貯蓄と投資の差額に収れんし、「貯蓄―投資」=「輸出―輸入」という等式が成り立ちます。

この「貯蓄―投資」は政府部門と民間部門のそれを合わせたものです。

経常収支が赤字になるとどうなるかと言えば、「政府部門の赤字ファイナンス(=国債発行による財政赤字への充当)」に繋がります。

国家の国際収支というものは、「経常収支・資本収支・外貨準備高増減という3項目の総和がゼロ」になります。

外貨準備を一定値とすれば、「経常収支がマイナスになる=資本収支が黒字になる」わけですね。

資本収支とは、投資や外国からの借入による資産と負債による収支のことで、要は「資本収支が黒字となるためには、海外からの資金流入が必要」になってきます。

すなわち海外投資家からの国債購入に頼って国家の財政運営が行われていくことを意味します。

海外からの資金流入に頼ることは、好ましくありません。トルコ・アルゼンチンなど経常収支がマイナスの新興国は、政府債務への市場懸念や、通貨安による債務利払い懸念などが生じると、資金調達のために海外投資家の動向をうかがう必要が出てきます。(ただし基軸通貨の米ドルは少し例外で、資本収支が恒常的に赤字でも米国債の需要はあり続けると思います)

今まで日本は国債を大量に発行しても問題なかったのは、政府部門の赤字を上回る民間部門の貯蓄超過が要因として挙げられます。家計金融資産1,800兆円に代表されるように、民間部門の貯蓄率が高くあってきたわけですね。

つまり、この家計金融資産の伸び率は日本にとって重要であり、だからこそより適切な資産運用が、ここ日本において広まることは意義あり、情報発信を続ける一因でもあります。

まとめ:日本円のみにベットするというリスクをどう考えるか

ということで、以上述べてきたようなマクロ環境下、そして日銀がGDPが3倍以上の国である米FRBよりもバランスシートを拡大させ、マネタリーベースを増やし続けている今、日本円のみに資産をベットすることは、それ自体がリスクという考え方も可能です。(米ドルのみも然り

米国株投資を始めるにあたり、確かに日本で生活している以上、通貨の異なる株式に投資をするのは、リスクと感じるかもしれません。

しかしそもそも「米国の株式に投資することは、直接的な通貨分散も意味する」という意識が1つあってもよいかと思います。(もちろん、円高は直接的に円建て資産の目減りになるので、それ自体はやはりリスクなのですが)

1つの見方に過ぎず、実際にどうなるかは別として、いずれにしても為替リスクは米ドルにも常にあります。よって、あくまで単一通貨(米ドル・日本円、どちらか1つだけ)に寄せるのではなく、通貨分散は図っておきたいですね。

ご参考になりましたら幸いです。

Best wishes to everyone!

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公開日:2019年10月31日

コメント

  1. 鈴木 より:

    いつも参考にさせていただいております。
    最近話題のMMT理論についてはどのようなご見解をお持ちでしょうか?
    もしよければお聞かせいただけますと幸いです。

  2. 鈴木 より:

    すみません、失礼しました。
    MMT理論については過去の記事に書いてありましたね。
    ありがとうございます。