高金利通貨は高金利よりリスクが大きい理由

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保有しているだけで高い金利収入を得られるため、高金利通貨は一見魅力的な投資対象のように思えるかもしれません。

しかし個人的にはあまりおすすめできません。本記事はその実例です。

高金利通貨のトルコリラや南アフリカランドが一貫して下落

トルコリラ/円 (出所:Yahoo!Finance)

上図の通り、2019年現在もトルコリラの下落が止まりません。同じ高金利通貨では南アフリカランドも一貫して下落しています。

南アフリカランド/円(出所:Yahoo!Finance)

8年で75%下落したトルコリラ

8年間でトルコリラは対円で1/4まで価値が毀損しました。対ドルも同じ傾向です。

低金利の円と対照的に、トルコリラはその金利の高さを魅力に感じて大きくポジションを持ってる日本の投資家もいます。

一方でリスクも高いわけですが、そのリスクについては後段で詳述します。

年率17.6%という金利水準

私の以前利用していたセントラル短資というFX会社のスワップを見てみましょう。TRY/JPY↓

2018年8月11日現在で、1万トルコリラ(=約17万円)を保有していると、毎日80円の金利収入を得ることができますから、1年で約3万円の金利スワップ収入になります。(尚、2019年9月現在は49円までスワップ収入も減少)

年率にして17.6%です。平素から投資に携わっている方からすると、目にすることは少ない数値ですね。

1000万円分のトルコリラを購入するだけで、176万円の金利収入が生まれるという夢のような話です。仮にトルコリラの価値が底の時期で拾えれば大きな果実をもたらすでしょう。

8年間の金利収入はいくらか?

しかし反転するとして、更に上手く底で拾わない限りは、時間軸を伸ばすとなかなか厳しい結果になります。

仮に8年前の2010年に1万トルコリラを購入していたとして、金利収入が8年間でいくらか算出してみます。

スワップは日々変動しますが、ざっくり現在の水準の1万通貨あたり1日80円とする(1TRY=40JPYの時も80円台でしたね)と、80円*365日*8年=約23万円が8年間の金利収入となります。

8年間トルコリラを保有してると得した?損した?

8年前の1万トルコリラは63万円ですが、2018年8月11日時点で1万トルコリラは17万円です。

よって46万円の損失となり、金利収入23万円と相殺して、23万円の損失。つまり、仮に8年間トルコリラを保有していると、金利収入を得ても、投資元本の1/3を失ったことになります。

トルコリラなどの高金利通貨はハイリスクなデメリットがある理由

高金利通貨というのは魅力的な不労所得に思えるかもしれませんが、リスクは非常に大きいです。

理由・背景は以下が挙げられます。

高金利にはそれなりの理由がある

高金利に設定するということは、それなりの理由があるということですね。

仮に自分が資金を誰かに貸す際、つまり金融機関の融資を考えてみればイメージしやすいかもしれません。年収が300万円の人と年収2000万円の人に同額貸し付けるのであれば、信用力の差から前者への貸出利率の方が後者より低くなることはまずないですよね。

高金利通貨を買うということは、インフレで通貨価値が毀損するリスクも、信用力が低いリスクも、自ら負っているということです。

金利平価説という考え方

金利平価説は、高金利通貨のリスクに関わる興味深い為替レート決定理論なのでご紹介しておきますね。

まず通貨価値というのは「株式と異なり、それ自体が投資などの媒介や資金調達手段となることで利潤を生むことにより価値が逓増していくものではない」ですし、「需給・中銀政策・通貨同士の相対評価・売買によってレートが決まる」という性質ですよね。直物であろうと先物であろうと同じです。

円とドルを用いて、以下前提条件で行動経済学ちっくに説明を試みます。

前提条件
円金利1% ドル金利3%

投資家の行動
  1. この前提条件において、円で持っておくよりドルで持っていたほうが金利収益が大きいので、投資家は貨幣市場で円資金を調達し、ドルに換えようとする。(いわゆるキャリートレードですね)
  2. 円への需要が高まり、円金利が上昇する。(金利と資金需要は反比例)
  3. この円を外国為替市場で売ってドルに換える。円売りドル買いにより、為替レートは円安ドル高に動く。
  4. 投資家はこのドル資金を貨幣市場で運用する(資金需要発生)ので、ドル金利が下落する。
  5. 将来的にポジションを手仕舞う際、円買いドル売りが行われるので、予想直物為替レートは円高ドル安方向に動く。

つまり、金利平価説とはざっくり言えば、「高金利通貨に換えると、円をドルに換えただけで儲かったと思いがちですが、世の中うまい話はなかなかないもので、金利差を打ち消すように為替は動き、裁定取引(さや抜き)の余地はないという理論」です。

リーマンショック前に低金利の円を調達してドルやユーロで運用する「キャリートレード」が席巻、スワップ金利収入による外貨投資が日本の個人投資家の間でも隆盛を極めました(私もその1人でした)。

しかし、リーマンショックで一斉にその巻き戻しが起こり、大幅な円高が起きたのは記憶に新しいところです。

高金利通貨に投資しても長期的には儲かりにくい理由まとめ

高金利通貨というのは、タイミングよく通貨価値が反転する(ことが長期的に起こるかは疑問も)際に仕込めれば良いですが、結局先述のキャリートレードの巻き戻しのように、通貨価値の下落により金利収入以上の損失がまま出ますから、非常にリスキーではある、というお話です。

以上、学生時代にトルコリラでロスカットをくらったことがある私からでした(笑)。

Best wishes to everyone!

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公開日:2018年8月12日