【MO】アルトリア・グループ、配当3~8%、高配当・連続増配50年の配当王

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2019年決算データを一部反映です。

たばこ株には以下事項

  1. たばこ販売数量の減少
  2. 米当局FDAによる規制リスク
  3. 電子たばこの弊害

など、2019年9月18日には直近高値77ドルから50%近い暴落、配当利回りは8%台に到達。

2020年2月14日時点で、株価はやや反落、配当利回りは7.4%の水準まで再度上昇中。

【MO銘柄分析】アルトリアグループ、たばこ事業の逆風にもがく高配当な配当王

【MO】基礎データ

MOの基本情報は以下の通り。

社名(和文) アルトリア・グループ
社名 Altria Group Inc
ティッカー MO
設立日 1985年3月
本社所在地 米国・バージニア州
従業員数 8,300人
セクター 一般消費財
連続増配年数 50年
直近配当利回り 7.4%
直近4年平均配当利回り 4.5%
直近3年平均増配率(年率) 11.4%
直近5年平均増配率(年率) 10.3%
配当月(支払日ベース) 1, 4, 7, 10
1株配当 $3.36
1株調整後利益(2020年予想) $4.41
配当性向 76.1%
PER 10.2倍
株価 $45.17
  • 配当性向・PER:調整後EPSベース
  • 連続増配年数:フィリップ・モリスのスピンオフ前も算入
  • 2020年2月14日時点

連続増配年数は50年の配当王。過去50年間で54回の増配を実施。

2019年8月23日に発表された増配率は5%に留まり、直近5年間に比べ低調な増配率です。

「調整後EPSの8割を配当支払に充てる」という同社配当政策に則った数字という意味では妥当な数字です。逆に言えば、EPSの増加率が例年より低かったとも言えます。

電子たばこも結局健康リスクが顕在化したりと様々な懸念が付き纏う同社ですが、今の株価水準が続く限りは、配当再投資を変わらず続けます。

【MO】セグメント別売上高

2016 2017 2018 2019
Smokeable 22,851 22,636 22,297 21,996
Smokeless 2,051 2,155 2,262 2,367
Smokeless比率 9.0% 9.5% 10.1% 10.8%

従来型タバコと無煙タバコのうち、従来型が全体の売上高の9割を占めます。

以下2点がわかります。

  1. 全体として微減
  2. 無煙たばこ事業、同事業が占める比率が継続的に上昇

【MO】たばこ出荷数の推移

全体としてたばこの販売数/出荷数が漸減しています。出荷本数のうち9割を占めるのは、トップブランドであるマルボロ(Marlboro)です。販売本数の減少を、値上げで補う構図が続いてきました。

Marlboroが米国のたばこ小売シェアのうち実に43%を占める同社主力ブランドであってきました。

【MO】売上高・営業利益・純利益

MOの業績推移(①売上高・②営業利益・③純利益・④営業利益率・⑤営業キャッシュフローマージン)を見てみましょう。

会計上の営業利益は堅調に見えますが、売上高は先述の通り頭打ち状態が続いています。

直近は販売数量減の幅が年間5%程度と以前の3%程度より大きくなってきており、そのあたりも不人気銘柄に拍車がかかっている一因と思います。

【MO】株価と配当利回り推移(2007年~)

(2020年2月14日時点)

2007年からの平均配当利回りは5.3%です。直近の配当利回りは平均値を大きく上回ります。

株価は2017年まで右肩上がりで非常に高いパフォーマンスを残してきましたが、2018年から凋落傾向。

株価の下落および増配に伴い、2019年8月に配当利回りは9年ぶりの8%台、その後やや反発。

【MO】株価と配当利回り推移(過去5年)

(2020年2月14日時点)

過去5年間の平均配当利回りは4.6%です。

株価は行ってこいの横ばい気味。配当利回りが7%に達したのは、以下3局面。

  1. 2018年末の市場全体の暴落
  2. たばこ株全体的に下落した2019年8月
  3. そして直近2020年2月

【MO】配当金と配当利回り推移

今までは順調に増配を継続中。ただし直近増配率は5%とやや落ち込み気味です。

【MO】キャッシュフロー推移

「①営業キャッシュフロー・②投資キャッシュフロー・③フリーキャッシュフロー・④営業CFマージン」を見てみましょう。

たばこ銘柄ゆえ、装置産業と異なり資本的支出が少ないことが表れています。

ただ高増配率が続いてきたこともあり、配当支払額は相応に大きくなってきていることが次の「主なキャッシュフロー状況」で見えてきます。

【MO】フリーキャッシュフロー・配当支払額・自社株買い・債務増減・配当性向(FCFベース)

  • フリーキャッシュフローは2018年に続き高水準を維持
  • 自社株買いは継続
  • 配当性向(FCFベース)は、調整後EPSベースと同じく80%
  • 2017年以降、借入続く。2018年のJUUL出資用に、短期借入128億ドルに加え、クロノス出資。2019年に債務36億ドル増加

キャッシュフローを見る限り、配当持続性に特段の疑義は生じません。いずれにしても、これらキャッシュフローは引続き要チェックです。

【MO】出資先JUULの減損

今までは「①たばこ販売数量の減少」が主なリスクでした。それに加え、128億ドル出資したJUULの販売する電子たばこが、呼吸器系疾患を誘発しているとの疑念。

結果、2019年下半期に87億ドル(=約9,600億円)の減損を計上出資総額の2/3相当額を、「当初見込んだ収益や価値が得られないと判断し、簿価を切り下げる」減損を認識した形となります。

この減損はキャッシュアウト(現金支出)を伴いません。では、どこに転化したかと言えば、債務増加です。

アルトリアは2018年にJUUL出資用に短期借入金として同額を借り入れ、翌年に長期債務として借り換え、当該勘定項目が増大したことになります。

財務指標では2018年度から大きな変化2019年通年を終えた時点で「Net Debt / EBITDA=2.3」と2018年度末と同等の水準です。

【MO】借入金推移

128億ドルを投じたJUUL出資により2018年以降、財務は悪化しました。2017年に130億ドルだった借入金は、2019年第2四半期に270億ドルと倍加し、のち横ばいです。

DEレシオは2.0と財務優良の基準である1.0を上回り悪化しています。

2020年度以降の見通し

次に、アルトリア・グループの「今後における主要トピック」である以下4点を確認します。

  1. 配当政策
  2. 自社株買い
  3. 調整後EPS成長目標(2020~2022年)
  4. 通年ガイダンス(2020年)

配当政策

  • 調整後EPSベースで配当性向80%目標を維持(2020-2022年)

自社株買い

  • 2019年に8.4億ドルの自社株買い実施
  • 2019年末時点で、10億ドルの自社株買いプログラムのうち残枠5億ドル。2020年末までに、市場状況等に応じたタイミングで実施予定。

過去の自社株買い規模の推移を、下表の通り載せておきます。

2015 2016 2017 2018 2019
自社株買い 5.5 10.3 29.1 16.7 8.4

(単位:億ドル)

アルトリア・グループは、過去5年で年間5.5億~29億ドルの自社株買いを実施していることから、2020年の自社株買いは、過去推移の観点からは、その下限あたりの規模です。

調整後EPS成長目標(2020~2022年)

  • 調整後EPS成長目標を下方修正 5~8% → 4~7%

下方修正の原因として、「JUULへの投資による収益が得られないと想定したため」としています。

現実に即した形の修正であり、納得です。

通年ガイダンス(2020年)

  • 調整後EPS:$4.39~$4.51(=前年比+4~7%、2019年実績$4.22
  • たばこ産業の国内売上本数:前年比-4~6%

売上本数減の一因として「政府規制により、たばこ購入年齢下限が21歳に引き上げられた」ことを挙げています。

引続き「+4~7%成長」を明記と依然強気です。配当性向80%維持見通しから、当該シナリオ維持であれば、増配率も同程度に着地と想定します。

【MO】銘柄分析まとめ

たばこ株に対する市場の見方は2018年・2019年は悲観的だった上にJUULの電子たばこによる健康被害・当局規制リスクが更なる売りを呼びました。

電子タバコに対する規制が実施されたとして、その影響で若年層ユーザーが電子たばこから紙巻きたばこ(MOのマルボロが43%のシェア握る)に回帰する動きとなったとしても、米国当局FDAの紙巻きたばこに対する規制が強くなる可能性もあります。

今の株価水準はさすがに配当金を原資とした買い増しは継続予定です。

Best wishes to everyone!

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公開日:2019年8月25日