【KHC】クラフトハインツの2018年4Q決算内容と教訓
2019年2月21日にバフェット銘柄として有名なクラフトハインツ(KHC)の2018年4Q決算が発表。
そこから得られる教訓を下段に記し、特に相場好調時など定期的に振り返るようにしています。
当時の決算概要は以下通りです。
▶ 1株あたり純利益(EPS)
調整後EPS3.53ドル、基本EPS-8.39ドル
▶ 1株あたり配当(DPS)
62.5セント → 40セント(36%減配)
▶ 年間売上高
262億ドル(前年比横ばい)
▶ 減損損失
159億ドル
決算内容、会計不正疑惑、そして減配というトリプルパンチで株価は前日比27.46%下げとなる34.95ドルで引けました。
27%の株価下落、36%の減配ということで投資家にとってもダブルパンチです。
決算内容で特筆すべきは、のれんと無形資産で159億ドル(約1.7兆円)の減損損失。この減損の中にブランド「クラフト」や「オスカーメイヤー」の減損が含まれます。
減損背景にある数々のM&A
クラフトハインツはクラフトフーズとハインツが合併する前にも、クラフトフーズ時代に以下のような種々のM&Aが行われています。
- フィリップモリス【PM】に買収され、
- PM子会社のナビスコと合併し、
- アルトリア・グループ【MO】から分離され、
- 海外部門がモンデリーズ・インターナショナル【MDLZ】が分離
これが「のれん」の増大に繋がっていきます。
M&Aを行うと、「のれん(Goodwill)」として、買収先の純資産額と買収額との差異が貸借対照表(B/S)に計上されます。
のれんは、少なくとも私が会計研修を受けた2018年時点では、日本会計基準では20年償却(というのも日本の会計基準は国際基準の動向でよく変わる)です。
しかし一方の国際会計基準(IFRS)では償却されず(=つまり平時であれば「のれん償却分」だけ会計上の利益は増える)、大幅な価値の毀損がある時に減損処理というのが原則です。
このブランド価値に大幅な毀損が認められた、あるいは予想されたことから今回の減損に繋がっています。
減損はキャッシュアウトしませんが、期待された利益が生み出せない以上はネガティブ材料です。
減配の予兆はあったか?
「減配の予兆があったか」と仮に今になって問われれば、以下2つが挙げられます。
- 営業キャッシュフローマージンが低下傾向にあった
- 同社の配当性向は米加工食品業界で最も高かった
ブランド力・収益力を測る指標にもなり得る「営業CFマージン」は以下の通り急落しています。
- 2014年:19.6%
- 2016年:10.0%
- 2017年: 2.0%
しかしそれが一時的要因なのか継続的要因なのか完璧に判別するのは困難と思います。
そもそも、四半期ごとに決算内容を詳細にチェックしていても、見落とさなかったかと言われれば、絶対はありません。
改めて個別株リスクが浮き彫りになった結果と言えるのではないかと思います。個別株への集中投資はやはり避けた方が無難と改めて思います。
【KHC】クラフトハインツの減配・暴落から得られる教訓
今回のクラフトハインツから、あえて教訓を導き出すとすれば以下の通り。
- バフェット銘柄や、誰々銘柄というのは主たる判断材料になり得ない
- 個別株への集中投資リスクが改めて浮き彫りに
- ブランド力は過去傑出でも永続的なものではない
どれも当たり前のことですが、改めて認識しておきたいですね。
特に投資の神様とも呼ばれるバフェットさんを信奉する人々も多く、一定の安心感があったはずです。
更に、「高配当銘柄でもあり、ブランド力もあり、生活必需品とも言える銘柄であってきた」ということで投資家に人気の銘柄であってきました。私も高配当株としてウォッチしていた銘柄でもあります。
27%株価暴落・36%減配というのは集中投資していたら悲惨なことになります。
やはり個別株の配分比率は1銘柄あたり10%以下に留めるのが無難とは思います。
Best wishes to everyone!
2019年は、まずたばこ株の低調さが個別株投資へのリスクを改めて問うた形になったとも言えます。
株式投資に全能感ではなく、ある種の諦観が必要と思います。
コメント
いつも楽しく読ませて頂いています。
基準上のれんは、ご記載の通り20年以内の償却で、実務としてはM&Aに費やした資金を回収する期間に渡って償却するケースが一般的です。
国際会計基準では今のところ一気に減損する手法が取られていますが、この手法についても見直しが議論されていて、日本と同じく償却することも検討されているとか。巨額ののれんを持っている会社は一気に減損することもあるので、償却が適用されると先々の利益も見通しやすいのですが。
コメント頂き、またいつもご覧いただきありがとうございます。
そうですよね。一気に減損すると影響大きく、毎年償却していく形が好ましいのではと私も思います。