奨学金返済有りで資産運用、先に繰上返済や完済する必要性はあるか

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奨学金負債がある場合、繰上返済・完済する必要性はあるか

ご質問

題名: 新卒、奨学金返済有りの資産運用について

メッセージ本文:
はじめまして。
いつも楽しく拝読させて頂いております。

私は4月より新卒で社会人となりました。
資産運用に興味があり、まずは積立NISAで「楽天・全米株式インデックス・ファンド」を積み立てていこうと考えておりました。

しかし、恥ずかしながら奨学金の返済が200万円強残っている現状があります。
やはりまずは完済し、その後運用を始めた方がよいでしょうか?

躊躇してしまっている自分がいるので、背中を押す意味でも返信頂けると幸いです。
ご検討お願い致します。

ご質問ありがとうございます。

奨学金債務がある状態で資産運用をする際に、先に奨学金を完済/繰り上げ返済する必要があるか

ということですが、結論から申し上げますと以下の通りです。

「奨学金の完済/繰上返済」必要性

無利子の奨学金

→ 必要なし(むしろ損)、資産運用優先でも大丈夫

有利子の奨学金

→ 高利でない限り、資産運用優先でも大丈夫

奨学金が無利子である場合

ポイントは、リスクフリーレートがプラスである時点で、奨学金が無利子である場合は繰上返済や完済の必要性はないと考えます

まず奨学金と資産運用(株式投資)の優先順位を考えるにあたって、リスクフリーレートという概念を理解することをおすすめします。

リスクフリーレートとは?
リスクフリーレートとは、その名の通り「リスクフリー(無リスク)で期待できるリターン」のことであり、実質的・具体的には「自国通貨建ての国債に投資して得られる期待リターンのこと」と理解しておけばOKです。

国家が財政破綻してデフォルト宣言でもしない限りは、一応元本が保証されるので、国債利回りがリスクフリーレートと言われる所以です。

このリスクフリーレートは、基本的には0%を上回ります。日銀の金融政策で銀行の当座預金残高の一部にマイナス金利が適用されても、個人向け国債は0%を上回る最低金利保証がなされています。

なので、余程の異常事態でもない限り、リスクフリーレートは基本的にプラスです。

つまり、奨学金が無利子の場合は急いで奨学金を返済する切迫した必要性は見いだせません。なぜなら、リスクフリーレートがプラスだからです。

無リスクで期待できるリターンが0%を超えるため、奨学金を完済/繰上返済する余裕資金があるならば、その資金を個人向け国債や投資に回した方が奨学金に返済するよりも、収益を得られやすいです。

なので、資金効率という観点では、奨学金が無利子である以上、その時点でリスクフリーレートの方が期待リターンが高いため、無利子の奨学金を完済/繰上返済するより、国債等の金融商品(勿論、債券や株式も含む)に投資した方が穏当ということになります。

奨学金が有利子である場合

有利子である場合、利率によりますが、余程の高利でもない限りは基本的に有利子であっても私なら奨学金返済を優先せず、資産運用に回します。

株価変動含めたリターンは、マイナスになることも当然あり得ますが、長期的な期待リターンを考えた場合、余裕資金を奨学金返済ではなく株式投資にまわした方が、奨学金の利子負担を上回る可能性は高いと考えます。

ましてやご質問者様の資産運用方針である「つみたてNISAで”楽天・全米株式インデックス・ファンド”」ということであれば、長期的に期待できるリターンはまず間違いなく奨学金の有利子負担を上回ると期待しやすいですね。

まとめ

「奨学金の完済/繰上返済」必要性

無利子の奨学金

→ 必要なし(むしろ損)、資産運用優先でも大丈夫

有利子の奨学金

→ 余程の高利でない限り、資産運用優先でも大丈夫

奨学金が無利子でも有利子でも、高利でない限りは基本的には資産運用優先でOKというのが私のスタンスです。

資産運用と他の債務の優先順位をつけるにあたって、ポイントになるのがリスクフリーレートでもあり、株式の長期的な期待リターンを自分の中である程度見積もっておくことが肝要です。

さすれば、自分が抱える債務の利子率と期待リターンを天秤にはかることが出来ます。

株式の長期的な期待リターンは、過去米国株は7%でした。今後のリターンとしては個人的にはここまで強気にはなれないので、4~5%程度が関の山ということで一応見積もっています。

以上、ご参考になりましたら幸いです。

ちなみに、本記事で述べたのは奨学金が人的保証(全体の53.7%)の場合となります。

読者の方から教えていただいた情報を基に、以下機関保証の場合も記しておきます。

ちなみに、機関保証の場合

機関保証(全体の46.3%)の場合には、毎月一定額保証料が天引きされており、四年間ではそれなりの額に(例えば無利子で総額216万円の場合8万6千円、有利子で総額240万円の場合10万2千円)。普通に返し続けるとこの金額は返ってきませんが、繰り上げ返済すれば返済期間の短縮に応じて返金されるとの由。

仮に全額を返済すれば、保険料はほぼそのまま戻り、詳しくは日本国際教育支援協会へ問い合わせれば算出可能とのこと。

返済期間の長さによるも、機関保証の保証料を考慮し、確実にリターンのある低利の投資と考えると、繰り上げ返済を優先させる考え方もありそうですね。

Best wishes to everyone!

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公開日:2019年4月16日

コメント

  1. 三菱OL より:

    こんにちは、以前から無利子の奨学金を繰り越し返済しようとする彼に、三菱サラリーマンさんの記事を読んでもらいました。
    少し投資を前向きに捉えてもらえたみたいで、本当に感謝です。ありがとうございます。

  2. 若手大学教員 より:

    奨学金が人的保証(全体の53.7%)の場合は、ご論考の趣旨が正しいと思います。

    ただ、機関保証(全体の46.3%)の場合には、毎月一定額保証料が天引きされており、四年間ではそれなりの額になっております(例えば無利子で総額216万円の場合8万6千円、有利子で総額240万円の場合10万2千円)。普通に返し続けるとこの金額は返ってきませんが、繰り上げ返済すれば返済期間の短縮に応じて返金されます。仮に全額をすぐに返済すれば、保険料はほぼそのまま戻ってきます(詳しくは日本国際教育支援協会へ問い合わせれば計算してくれます)。

    返済期間の長さにもよりますが、機関保証の保証料を考慮に入れ、確実にリターンのある低利の投資と考えれば、繰り上げ返済を優先させる考え方もあり得るのではないかと愚考します。

    https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/069/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2016/04/05/1369380_6.pdf
    https://kikanhosho.jees.or.jp/