「FXでトルコリラのレバレッジ1倍にすれば、スワップポイントで、高配当を実現できるのではないかと思いました。この投資手法についてどう思われますか。」
というご質問について、以下回答いたします。
レバレッジ1倍で高金利通貨の買いポジション、旨みはあるか
結論から言いますと、一般的にはおすすめしづらいです(後述しますが、私の経験上も…笑)。
まず、FXを考える際に考慮しておきたいのは
- 「為替(FX)はゼロサムゲームである」
ということです(手数料を考えるとマイナスサムゲーム)。
これが今までプラスサムゲームであってきた株式投資との最も大きな違いです。
確かに、レバレッジを1倍にすればロスカットされるリスクはほぼゼロにはなりますが、利益を上げる難易度は高いと思います。
短中期:買値が重要、上手く売り抜けられるか
短中期的にスワップポイント(≒金利収入)と為替差益を狙うのであれば、まだ一案にはなり得ます。ただしその場合、買値がきわめて重要になります。
上図はトルコリラ円の10年チャートです。買値が重要と書きましたが、上手く売り抜けないと、長期ではこの10年で買い持ちすると、どこで買っても負けます。
ご覧の通り、その後、2018年末時点までの安値を結局割っています。
長期:おすすめしづらい
高金利通貨への長期投資は、一般的におすすめしづらいです。
まず、以下3つのポイントを押さえておきたいところです。
- 高金利にしないとインフレ抑制しづらい国情
- 慢性的な経常赤字や国内機関投資家の資本力不足等により外国人投資家から資金調達する必要があるが、国際信用力が低く、低利で外国人投資家から資金調達(外債発行)できない
- 長期的には高金利による利得は通貨価値の毀損によって減殺される理論(金利平価説という考え方)
①・②:インフレ、経常赤字、資金調達環境
上述の通り、①・②に関して、高金利にして通貨価値を維持しようとする背景には、それなりに理由があるということですね。
③:金利平価説
まず通貨価値は、以下2つの性質を見いだせます。
- 株式と異なり、通貨自体が利潤を生んで自己増殖的に価値が増えていくものではない
- 需給・中銀政策・通貨同士の相対評価によってレートが決まる
これは直物であろうと先物であろうと同じです。
金利平価説は、ドル円を例に挙げると以下のように説明できます。
前提条件
円金利1% ドル金利3%
投資家の行動
- この前提条件において、円で持っておくよりドルで持っていたほうが金利収益が大きいので、投資家は貨幣市場で円資金を調達し、ドルに換えようとする(=キャリートレード)
- この円を外国為替市場で売ってドルに換える。円売りドル買いにより、為替レートは円安ドル高に動く
- 将来的にポジションを手仕舞う際、円買いドル売りが行われるので、予想直物為替レートは円高ドル安方向に動く(=キャリートレードの巻き戻し)
つまり金利平価説とは、ざっくり言えば「低金利通貨を高金利通貨に換えただけで、金利収入が発生するので儲かると思いがちですが、金利差を打ち消すように為替レートは動き、裁定取引(さや抜き)の余地はなく、金利収入は為替差損で相殺されるという理論」です。
これはあくまで理論なので、常に成立するわけではありませんし、この理論で以て高金利通貨が全否定されるものではありません。
しかし高金利通貨の長期チャートが、その難しさを物語っているのも事実です。ゆえに、高金利通貨を保有することは投資とは言い難く、相当上級者でもないかぎり、一般的にはリスクが高い投機と言えると私は思います。
まとめ
日本円は超低金利なだけでなく、政府債務の持続性も考慮した場合、必ずしも金利平価説通りに円高巻き戻しが起こるのかはわかりません。
ただ、少なくとも以下の通り、高金利通貨で利益をあげるのは難しいところです。
- 短中期:買値と売り抜けタイミングが極めて重要かつ難度高い。
- 長期 :理論上おすすめできない。トルコリラは長期右肩下がり。
トルコリラ円のこれらチャートが示唆する通り、やはり短中期のタイミングが重要というだけでなく、長期的にも勝つ見込みは過去大きくない傾向が確認できます。
ちなみに、私も学生時代にトルコリラを保有してロスカットを見事にくらったことがあります(笑)。
一般的にはおすすめしづらい投資対象です。
Best wishes to everyone!
関連記事
逆に株式投資はプラスサムゲームであってきました。
為替を見る際は、対外的に純資産があるのか、逆に対外的に借金をしているのか、または国際収支が黒字なのか赤字なのか、こういった基礎的条件も見る必要があります。
FXは使い方によっては有用ですが、広くおすすめできるかと言うとそれは難しいところです。