米国株への投資が、資産形成に適してきた3つの理由
私は、2016年から本格的に米国株へ投資してきました。
なぜそうしたかを、3つのマクロ的な観点から考えてみます。
まず、米国の経済成長率を見ておきましょう。

出典:社会実績データ図録
中国の高成長が顕著ですが、主要先進国(日米欧)で90年代以降、米国が日欧を上回り続けています。
1970年から1980年代に、日本や西ドイツの追い上げにあって、米国一強は影を潜めました。90年代以降、ソ連崩壊に伴う冷戦の終結からのIT革命、グローバル経済の進展から今に至るまで主要なイノベーションは米国発でした。
2000年代は、新興国BRICsが世界経済を主導。ユーロ誕生により欧州経済も統合する中、米国はITバブル(2000年)とリーマンショック(2008年)の震源地に。
2010年代はユーロ圏が低迷、ブラジル・ロシアの好調さも影を潜める中、米国ダウ平均株価は2万ドル・3万ドルを突破。ペースが速いのが気になりますが、現時点では好調といった具合です。
米国経済3つのマクロ要因
- 人口動態
- 金融システム
- 軍事力
さて、米国経済が強い要因は、主に上述3点に集約されると考えます。
理由①:人口増加率
経済と人口は密接な関わりがありますね。総体的には、経済=人口とも言えるほど、人口増加率は経済の総体的な強さに関わります。
人口が増えると、以下3点の変化があります。
- 国内市場の拡大
- 労働力の増加
- 若年人口の増加、社会保障費の軽減
米国経済の強みの1つは、人口が多く、かつ移民により増加し続けていることにあると言えます。
2010〜2015年の純移民数は500万人と世界最大。そして移民年齢が若い。中南米からのヒスパニック系移民が多く流入し、2014年時点でヒスパニック系人種は人口全体の17%を占めるまでに増加。
国連の人口予測では、米国の人口は今後も増えると予測されています。
国連による、2100年時点の人口予測(TOP10)

国連人口部HPより抜粋 左列:2050年 右列:2100年
- 米国は世界第4位。
- 2050年には3億9,000万、2100年には4億4,700万と引き続き堅調な推移予想。
- 逆にインドと中国は、2050年から2100年に減少。
上位10か国のうち、米国以外はすべて、アジア・アフリカ諸国ですね。
ちなみに我らがジャパンはどうでしょう。
国連による、2100年時点の人口予測(日本)

国連人口部HPより抜粋 左列:2050年 右列:2100年
2016年時点で日本は10位、2050年に17位、2100年では29位と転落。
16世紀のポルトガルのように「今日よりよい明日はない」という、悲観を逆手に取った楽観といきたいものですね。
優秀な移民が集まる米国
米国への移民は、優秀な人材が集まる傾向がみられます。単純労働者ではなく、高質な教育を受けたIT技術者等に代表されます。
米国のハイテク産業の強さはこの優秀な技術者・研究者の集積に在ると考えられます。
日経ビジネスによれば、2014年時点で353名の米国ノーベル賞受賞者のうち、実に90名が移民。4人に1人が移民です。この数は次点の英国109名を大きく上回ります。
なお、日本のノーベル賞受賞者である南部陽一郎氏と中村修二氏は、共に受賞時米国籍です。
米国で活躍するユダヤ人
ユダヤ人迫害の歴史は長く、19世紀の東欧・ロシアでの虐殺、そして20世紀のヒトラーによる虐殺を経て、多くのユダヤ人が迫害のない米国に移住したと言われています。
ユダヤ人が世界人口に占める割合は0.2%ながら、ノーベル賞受賞者の約20%はユダヤ人です。
- アインシュタインや経済学者のミルトン・フリードマン、
- 元FRB議長のアラン・グリーンスパン、ベン・バーナンキ、現FRB議長イエレン女史も、元財務長官のサマーズ氏も、
- Google創業者のラリー・ペイジ、DELLの創業者マイケル・デルも、ユダヤ人。
- ゴールドマンサックスもユダヤ系資本
と、各分野でユダヤ人の活躍が目立ちます。
厚みのある基礎研究、そして生み出されたイノベーションは同国企業価値の源泉でもあります。
理由②:金融システム
米国は金融市場で圧倒的な規模を誇ります。
証券取引所別時価総額ランキング

出所:野村資本市場研究所
例えば株式時価総額で、NYSEとNASDAQを合わせた米国証券取引所は、他国の主要取引所に比べ、圧倒的な時価総額を有します。
資本市場の厚みと、金融システムの中心地・資金の集積地であることを示唆します。
国別個人金融資産

【2018年】国別個人金融資産(Global Noteより抜粋)

【2015年】国別個人金融資産(Global Noteより抜粋)
ちなみに国の金融資本市場の大きさや、事業法人・個人投資家・機関投資家の資金力の規模の大きさは、リスク回避局面での自国通貨高(資金を手元に還流する、或いは特に外債であれば先物で自国通貨買いを行い為替リスクをヘッジし、投資国の信用/デフォルトリスクのみにリスクを限定する)に影響してきます。
なお、為替には他にも経常収支の規模(経常的なフローになる)や対外資産の多さ(手元に還流する資金の規模に影響)も関係してきます。
基軸通貨である米ドル
米ドルが基軸通貨であり、資本市場の厚みも圧倒的なことから、米国の資本市場へ資金が集中しやすく、米ドルでの資金調達もしやすく、さらに米国債による資金調達もしやすくなります。
SWIFTという決済体制を握っていることから、経済制裁も容易であり、米ドル決済の際には必ず経由銀行として米銀が間に入ることから、周縁情報も得やすいでしょう。
握っている部分が多いのです。これは、実際に私が仕事をしている時にも感じました。
歴代ノーベル経済学賞 受賞者
米国の金融界は上述した量だけでなく、質においても数字を残しています。
歴代ノーベル経済学者の受賞者75名のうち、52名が米国人。
リーマンショックの引き金となったABSやMBSといった金融派生商品も米国で開発されたのは、記憶に新しいところです。
理由③:軍事力
歴史的に、経済力と軍事力は表裏一体。
18世紀に、産業革命に成功した英国は、その経済力を背景に、軍事力も一強。その軍事力を以てして、植民地拡大に腐心し、一時的であれ富の獲得を果たしました。
英国はアヘン戦争により香港を獲得、植民地化に成功したインドを綿や茶の供給地とすることで英国経済を発展させます。
その経済力を背景に、英国は金ポンド本位制を確立し、ポンドを基軸通貨とし、パックスブリタニカ(英国の大繁栄)を謳歌します。
その後、二度の大戦と冷戦を経て、米国一強の時代が訪れます。
軍事技術を転用することで新たな技術が生まれる
有名な話ですが、宇宙開発は軍事技術の転用に依るところが大きいとされています。
弾道ミサイルは英国爆撃を目的に開発されたドイツのロケット技術が起源。核爆弾を積んだ大陸間弾道ミサイルを開発するために米ソが宇宙開発を強化する等、軍事・宇宙・民間技術は密接に関係すると。
スキーウェアに使われているゴアテックスは宇宙飛行士の宇宙服の技術が起源、テフロンのフライパンは大気圏に突入する際に高熱から宇宙船を守る技術を起源、ドローンは元々軍事用に開発された技術が民生化されたものです。
GPSも元々は軍事衛星を活用した技術。現在の通信技術も敵に解読されにくい通信技術を元に転用された技術をクアルコムが実用化したものです。
つまり、現在の米国のハイテク技術は軍事大国であることと表裏一体と言えます。
S&P500長期チャートは下図の通りです。
S&P500への投資は、富を築けたことは過去が示しています。将来は不透明ですが、将来に目を向ける際に示唆となるのもまた、過去であります。
まとめ
- 人口動態
- 金融システム
- 軍事力
以上3点が、米国経済に特徴的なマクロ要素と思います。
実際に米国株は強かった;米国株の景気拡大・後退期間の株価騰落率

出所:JP Morgan Guide to the Markets
上図「米国株の景気拡大・後退期の株価騰落率」と「米国景気拡大・後退期間」にある通り、実際に米国株はほとんどの期間においてリターンはプラスであり、景気拡大期間の方が景気後退期間より圧倒的に長いこともわかります。
米国株は、資産形成に適した投資対象であってきました。将来は不透明ながら、参考になる実績です。
Best wishes to everyone!
過去優れたパフォーマンスを見せていても、過信は禁物と思います。適度にニュートラルな視点で投資を長期的に続けていくことが肝要ですね。
「つみたてNISAでインデックスファンドを買う」というのが、初心者の方でも取り組みやすい第一歩と思います。
株式への長期投資、それが資本主義で財を成す1つの最適解であってきました。