第4次産業革命、コストゼロ社会の到来で考える株式銘柄

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第4次産業革命への過渡期か

昨今は人工知能(AI)が台頭し、IT革命からIoTへの進化が起こり、機械化やシェアエコノミーが勃興するなど、第三次産業革命後、最大の変化が訪れていると言えるでしょう。

19世紀以降、英国発の蒸気機関に代表される第一次産業革命。そして20世紀前半には米国を舞台に第二次産業革命が起きました。そしてITや原子力に代表される第三次産業革命を経て、現在はいわば第四次産業革命への過渡期なのではないでしょうか。

(※IT革命を第三次革命としない言説もあり、諸説あります。後述するリフキン氏はIT革命を第三次とカウントしていません)

第一次産業革命では、石炭・蒸気機関の登場により、人類が従前持ち得なかった桁違いの動力を得ます。その結果、機械化により生産性が飛躍的に向上した工場ができ、蒸気機関車で人やモノを多く運べるようになりました。

第二次産業革命では、石油の登場。そして電力が工場へ、そして家庭へと普及しました。そしてこれらの重化学工業や石油エネルギーの利用と相まって自動車の誕生、電話も普及。

第三次産業革命では、原子力という新エネルギー、そしてコンピューターの登場。

そして今後訪れるであろう第四次産業革命(同氏は第三次とカウント)について、「エントロピーの法則」等の著書があるジェレミー・リフキン氏の主張をまとめると以下の通り。

  1. 太陽光や風力など再生可能エネルギーの急速な発展
  2. 車は所有する時代から、1台の車を多人数でシェアするシェアリングエコノミーへ
  3. IoTに代表されるIT進化によるコスト低減化

1つずつ見ていきます。

第4次産業革命 その①:再生可能エネルギーの発展

太陽光発電で1キロワット時の電力を生み出すコストは1977年の76ドルから今や55セントになっていると同氏は言います。そしてそもそも太陽光や風力自体はタダなので、発電の限界コストはゼロに近づくと。ドイツの大手電力会社は既にこうした事態に気づき、業態変換を図っていると。

出所:IEA

IEA(国際エネルギー機関)によれば、現状23%の再生可能エネルギーが占める発電量が、2040年には発電量全体の37%を占めると予測しています。

石油や石炭・原子力の発電量が低迷するのとは対照的にガス・再生可能エネルギーは伸びると予測されています。

電力株を選定する際は、再生可能エネルギーに対する電力会社の方針がどうなっているかは気に留めておく必要があります。

ちなみに投資先の英国ガス供給・送電会社のナショナル・グリッド(NGG)は再生可能エネルギーにも投資を行っています。同社の詳細は下記をご覧ください。

【NGG】ナショナル・グリッドは業績安定・高配当の英国電力会社
【NGG】ナショナルグリッドは業績安定・高配当・配当成長株 まず、ナショナルグリッドの特徴を簡潔にまとめると以下の通りです。 ...

第4次産業革命 その②:カーシェアリングの深化

車を所有する時代から1台の車を多人数でシェアする共有時代へ。

このカーシェアが進めば、必要な車の台数は今の5分の1で済むという試算まであるぐらいですから、実現すれば業態が変わらない限り、自動車産業には痛手となります。

ましてやこれから部品点数が極端に少なくなるEV(電気自動車)に世界の潮流は変わってきているので、自動車産業主体の日本としては歓迎できない状況です。これは、中国やインドなどの自動車産業後進国が、キャッチアップの測りづらいガソリン車やハイブリッド車などの部品点数が多いものではなく、部品点数の少ないEVで巻き返しを図り、国家として推進している為と言われています。

ただでさえ大規模な設備投資が現状必要な輸送機器である、自動車株に長期的に投資する選択肢は現時点ではありません。

一方、電気自動車に使われるセパレーター(絶縁体)は東レや旭化成が強く、住友化学も表面加工に携わっており、素材系は引き続き存在感を示しそうです。

第4次産業革命 その③:IT進化によるコスト低減

ITにより情報処理コスト、データ通信コスト、3Dプリンターにより造形コスト、ものづくりコストが大幅に下がってきていると同氏は主張。大量生産の巨大工場であれば巨額の資本投下が必要になるが、3Dプリンターであれば投下資本の大幅な低減が見込め、コスト低減になると。

より非中央集権的で、資本集約的でない経済が生まれると予測しています。

たしかに、VALUやTwitterのフォロワー数などに代表されるように、インターネットという自由なプラットフォームの登場によって、個人が発信力や価値・信用力を持ち、それが指数化・可視化できる時代になってきています。

資本集約的でなくなるということは、巨大企業の優位性が揺らぐ可能性もあります。

GDPという価値尺度
GDPや働くこと中心の生活から脱却しよう
働くこと中心の生活から、遊ぶこと中心の生活へ いずれそんな風に言われる時代が来るかもしれません。 2016年、社会的にも経済...

この記事でも述べたように、私は以前からGDPという価値尺度を用い続けることに非常に疑問を持っていましたが、いよいよGDPという価値基準以外のものを使う時代が来ているのではないでしょうか。

巨額の投下資本が不必要になり、コストが低減されるとなると、それだけ製品化の過程で価値が付加されなくなります。更にシェアリングエコノミーで自動車などの製品そのものの総需要が落ち込みますよね。

そうなるとGDPの集計要素となる総体的な付加価値という意味では、マイナスに作用します。シェアによって人の幸福感は増すのにGDPにはマイナス要因になるわけです。GDPはますます人々の生活感や幸福度とかけ離れたものになるでしょう。

既存のGDPという価値尺度はどんどん時代に合わなくなってきていると思います。

巨大企業の存在感・株式市場の重要性が低下する可能性

また同氏は他にこのような指摘もしています。

「経済全体における巨大企業の存在感はじわじわと低下し、個人や小規模の事業体の役割が増す。さらに、巨額の資本を集める場としての株式市場の重要性も今よりは低下する可能性がある」と。

既にIPO(initial public offering)ならぬ、ICO(initial coin offering)という形で仮想通貨による資金調達が行う企業も出現し始めています。

仮想通貨と現行通貨の共存は十分にあり得るでしょうし、現に共存していますが、個人的には少なくとも当面は国家の信用力に依拠する法定通貨が消滅することはないと考えています。

本当に未来がそうなるのかどうかは不確実で知る由もありませんが、一方でこういった不確実性を伴う未来に対する見解や国際機関の予測というのは、定期的に注意を払っておく価値があるでしょう。

いずれにしましても、保有株における電力会社の再生可能エネルギーに対するスタンスは一度チェックしてみても良いと思います。


第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来

Best wishes to everyone!

先述のナショナル・グリッド(NGG)は保有株の1つです。

【NGG】ナショナル・グリッドは業績安定・高配当の英国電力会社
【NGG】ナショナルグリッドは業績安定・高配当・配当成長株 まず、ナショナルグリッドの特徴を簡潔にまとめると以下の通りです。 ...

電力株としては、他にもデューク・エナジー(DUK)を保有しています。

以前北陸電力を保有していましたが、日本の電力会社は投資家目線でいう経営効率においては選択肢から外れてしまいます。

更に、昨今ESG投資というEnvironment・Social・Governanceという物差しで企業を評価する動きが広がり、市場の3割を占めるまでになっています。日本のGPIFもESG投資を率先して採用。世界最大の政府系ファンドで日本株の約1%を保有するノルウェー政府年金基金は、石炭火力発電比率の高い中国電力や北陸電力など日本の電力6社を投資対象から外しています。

こういった観点からも再生可能エネルギーに積極的な電力会社の方が比較優位となりそうです。

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公開日:2017年10月18日

コメント

  1. 自動車はまさにそんな未来になると思ってます。
    だから自動車株は手放して以降もう買う気にはなってません。

    未来は案外明るいと思ってまして、こういった技術革新により新しい産業分野も発生するでしょうから。
    ただどの企業が伸びるかは全く分からないので僕は指数全体でも買っておきます。

    • じんたん より:

      そうですよね、ちょっと自動車株は手を出す気にはなりません。設備投資も多額のお金が必要ですし。

      確かに時間対効果の観点からも、指数全体やETFで株式を保有しておくのが一番効率的な気がしています。
      今からだとVTIとか手を出しづらく、出遅れ株やディフェンシブ株をついつい物色しちゃいます笑