なぜ景気回復の実感が湧かないのか
それは端的に言えば、日本においては株式投資をしている人が少ないからです。
アメリカ株は連日のように最高値を更新し、豪州株は6か月ぶりの高値、マレーシアやインドネシアの新興国株式市場も好調、日本は言わずもがなの49年ぶりの15連騰を記録しています。
つい先ほど発表された3Q(7~9月期)における米実質GDPは予想+2.6%に対し+3.0%と予想を上回る数値が発表されています。
日本企業の当期純利益・配当は堅調な伸び
日本企業においても、下図の通り当期純利益は特に2013年以降、非常に堅調な推移を見せています。コーポレートガバナンスやスチュワードシップコードという単語も徐々に日本で浸透してきたように、企業の株主還元も徐々に充実、配当金も伸びています。

出所:財務省・法人統計調査
2016年の当期純利益は日本企業全体(金融・保険業除く)で49兆円と2012年(23兆円)の倍以上となっています。リーマンショック前をも優に上回っています。
配当金もこの5年で14兆円から20兆円と1.5倍です。
日本企業の利益剰余金は増えているが、人件費は変わらず
配当額も増えているものの、当期純利益がそれを上回る伸び率となった結果、下図の通り利益剰余金も堅調な伸びを示しています。
利益剰余金の伸びは堅調なのに対し、人件費はどうでしょう。
見ての通り、人件費が全然伸びていません。つまり企業は経常利益・当期純利益がこの5年間非常に堅調な推移を見せているにも関わらず、賃上げの動きは非常に鈍いということです。
多くの日本人が好景気を実感できないという原因はここにあります。
企業業績が好調なのに、労働者の賃金は増えていない。かつ大半の日本人は株式を保有していませんから、企業業績の好調さを反映した株高も実感できない。
安倍首相が賃上げ要請を数年にわたって行い、今年の春闘でも3%と具体的な数値に言及する背景はここにあります。
小池さんが内部留保課税に言及したことは、世間の目を「企業が流動資産であれ固定資産であれ、とにかく利益剰余金が増加傾向にある」ことに向かわせただけでも、意義あることだと思います。
一般的に経済が好調であるということは、企業業績が好調であることが背景にあったり、経営者の見通しや個人消費が明るいことが背景にあります。
日銀も国内景気に対し、「緩やかに回復」から「回復している」という文言に改め、上方修正をしたばかりです。
企業業績が良好で株高となれば、株を保有する高所得者層や富裕層は消費を増やしやすい為、個人消費にも波及する傾向があります。
「好景気を実感できないのは自己責任だ」とまでは言いませんが、倹約を通じて少額からでも投資をしてみるのも良いのではないでしょうか。
労働者の観点だけではなく、一歩引いた投資家という別の観点から自身が働く企業を見つめてみるのは非常に意義深いことだと思います。
必ず今までと異なった多様な観点が持てるはずです。
今では、AIを活かしてほったらかし投資が可能な手数料も安いウェルスナビ
やTheoに加え、ワンタップバイ(One Tap Buy)など、大変に少額のお金でも株式投資ができる環境が整っています。
とはいえ、現在の株高局面で株式を購入するのは勇気がいるでしょうし、買ったとたんに暴落する可能性もあるので、株式投資を全肯定するわけではありませんが、私は今後とも銘柄は保守的に、キャッシュ比率はリスク選好的にいきたいと思います。
要は労働者ではなく、資本家がこの資本主義では確実に優位です。今はそういうルールの上に世界が成り立っています。
見るだけでわかるピケティ超図解――『21世紀の資本』完全マスター
Best wishes to everyone!