
出所:NGG Official Site
【NGG】ナショナルグリッドは業績安定・高配当・配当成長株
まず、ナショナルグリッドの特徴を簡潔にまとめると以下の通りです。
- イギリス・アメリカ北東部で送電・ガス供給事業を行う英国電力会社
- 売上高:世界15位、時価総額:世界5位
- 過去の傾向:業績安定、高配当
- ニューヨーク証券取引所にADR上場している為、日米で二重課税されず配当税率28%でなく20%。米国企業に比べ適用税率低い。
上述事項を見ていきます。
まず、世界の電力会社の売上高ランキング、及び時価総額ランキングを見てみましょう。
世界の電力会社 売上高ランキング(2016年)

出所:Statista
売上高という観点からはナショナルグリッドは世界で15位に位置しています。
日本の東京電力 約5兆円、関西電力 約3兆円、中部電力 約2兆5000億円よりも少ない約2兆円ちょいの規模感で、そこまで大きくありません。
売上高1位・2位のEDF(フランス)、Enel(イタリア)はコモディティ関係の仕事をしている方はおなじみの企業ですね。
EDFはフランス最大の電力会社、Enel/エネルはイタリアの大手電力会社で国内では独占的なシェアを有しています。
余談ですが、石炭輸入の際にはEnel Inspectionと呼ばれる独自の検船システムを構築し、石炭の安定輸入を図っていることでも知られています。
世界の電力会社 時価総額ランキング

出所:Statista
米国株投資家ではおなじみのDUK、SO、Dなどに次いで世界5位に位置しています。売上高ランキングで15位も、時価総額では5位ということで経営効率に対する市場の評価をうかがわせます。
そして注目すべきは日本の電力会社がどこにも入ってきていません。売上高がある割に時価総額ランキングに顔を出さないということは、経営効率が関係しています。
日本の電力会社が経営効率、或いは事業環境やコーポレートガバナンス・原発を抱える電源割合の観点で市場から評価されていない可能性を示唆していますね。
【NGG】ナショナルグリッドの業績データ
売上高・純利益・営業利益率
売上高は過去10年間横ばい。電力株らしく良く言えば安定、悪く言えば成長性に乏しいと言えます。
営業利益率は20%台と高水準で安定。日本の電力会社は5~8%ですから、対照的です。
純利益は横ばいからやや緩やかに上昇傾向か。2016年における純利益の急伸は、英国内のガス供給事業の61%を豪投資銀行マッコーリー(Macquarie)や中国投資有限責任公司(China Investment Corp)らのコンソーシアムへの事業売却によるもので、一時的要因です。
1株あたりの純利益(EPS)・配当(DPS)・フリーキャッシュフロー
EPSは2016・2017年は共に特殊要因あるも、基本的に堅調に推移。
EPSがDPSを上回っており、OK。DPSは漸増傾向、安定。
1株フリーキャッシュフローは、直近3年間、やや1株配当を上回っている状態。配当支払い余力はおそらく大丈夫といったところか。
配当と配当性向
特殊要因除くと配当性向は60~70%台とこちらも安定しており、配当支払余力はあり。
キャッシュフロー推移
営業キャッシュフローは安定も、電力会社だけあって投資キャッシュフローが多いです。インフラですから設備更新や保守には応分の設備投資負担が生じます。
今後も安定した推移をしていくことが予想されます。
基礎データ(2018年8月15日時点)
予想PER :14.5
予想ROE :10.3
配当月 :1月・8月
配当利回り :5.82%
1月より8月の方が配当が多い傾向にあります。概ね1.5倍ぐらいでしょうか。
再生可能エネルギーへの取り組み

同社が手掛けるBlock Islandからの洋上風力送電事業
同社は足元で洋上風力発電施設からの送電も2016年に着手。Co2排出量の削減も掲げており、再生エネルギー関連事業への投資も積極的に行っています。
NGGはADR(米国預託証券)としてNYSEに上場
我々も今や日本の証券会社から米国市場へのアクセスは容易になっているので、米国市場のADRを通じて、英国や豪州などの企業に投資できるわけです。
そしてNGGはADRであり、英国企業のADRは概して米国での税金が課税されない為、日本の源泉徴収約20%さえ払えば良いので、日本の個人投資家にとっては米国で二重課税される米国本土企業の銘柄に比べて旨味があります。
確定申告で二重課税分は取り戻すことができますが、セミリタイア後の確定申告による国民健康保険料等のコストアップを考慮すると、やはりADRという税制面でメリットのある企業は魅力的なのです。
NGGの株価推移(10年間)
株価は50ドルあたりで一旦反発しているので、この水準が1つの購入目安になりそうですね。
英国の会社なので、現地通貨はポンド(£)です。よって、株価も配当もポンドドルの値動きに影響を受けます。リーマン前には2.0を超える時期もありました。2016年9月のEU離脱ショックの際に1.20まで40%の大幅下落しました。
NGGはS&P500にリターン劣る
2006年8月1日からのNGGとS&P500の株価推移です。
いつを起点にするかで結果が異なりますが、NGGの株価はS&P500に劣後する時期が見られます。上図チャートは配当を含まない単純な株価推移なので配当・特別配当を含めると多少縮まります。
まとめ
電力株ということで、大きな成長は望みにくいですが、個人的にはこういう地味ながらもしっかり配当で株主に還元する企業は好みです。
成長性は乏しくキャピタルゲインはあまり望めないものの、安定して配当が支払われる会社というのが同社の現在の姿です。
このあたりは好みがわかれそうですね。
Best wishes to everyone!
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なぜ高配当株を選好するのかをまとめたものです。
同じくADRのウエストパック銀行(WBK)も高配当かつ人口増加と堅調な経済成長を背景とした豪州でのビジネスということで、準主力銘柄としています。
日本では歯磨き粉のシュミテクトや風邪薬のコンタックでおなじみの、英国製薬会社グラクソ・スミスクラインも高配当ADR銘柄です。