【WBK銘柄分析】ウエストパック銀行は配当6%の高配当豪州銀行

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伝統的に高配当のオーストラリア株であるウエストパック銀行【WBK】についての銘柄紹介です。

本銘柄には、2017年から投資していますが今般減配が発表されています。

2019年末決算において、利ザヤ(Net interest margin)も2.12%と前期比10bpダウンとなったほか、住宅ローンや預金金利における競争が激化するなど外部環境が悪化しました。

今回の件、改めて分散必要性を強く勧めておきたいです。こういうことがあるので、(高配当)株式への長期投資は、私はやはり分散を勧めます。

以下WBKについて、詳述します。

【WBK】ウエストパック銀行とは?

WBKは、オーストラリアの四大市中銀行(ナショナルオーストラリア銀行、オーストラリア・コモンウェルス銀行、オーストラリア・ニュージーランド銀行)の一つで、本店はシドニー。

1817年設立のニューサウスウエールズ銀行に起源を持つので200年超の歴史。

豪州以外にもNZ、フィジー、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツ、シンガポール、香港、中国、インドネシア等に展開。

世界有力企業ランキング76位(Forbes)

日本では馴染みのない同社ですが、Forbesから2017年に発表された世界有力企業ランキングでは以下の通り、米ボーイングやホンダと肩を並べています。

【WBK】ウエストパック銀行の各種データ

【WBK】基礎データ

社名(和文) ウエストパック銀行
社名 Westpac Banking Corp
ティッカー WBK
設立日 1850年
本社所在地 豪州ニューサウスウェールズ州
従業員数 36,373人
セクター 金融
連続増配年数 0年
配当利回り 6.6%
直近5年平均配当利回り 6.1%
直近3年累計増配率 -15%
直近5年平均増配率 -13%
配当月(支払日ベース) 1, 7
1株配当 $1.10
1株調整後利益 $1.44
配当性向(調整後EPSベース) 76.9%
PER(調整後EPSベース) 12.7倍
株価 $19.79

(※2019年11月10日時点、連続増配年数・増配率のみAUDベース、他EPS・DPS等はUSDベース

WBKが減配を発表

WBKはリーマンショックの際に豪ドルベースで22%減配していまして、リーマンショック後は特別配当を除けば2019年まで増配または減配なしを維持していました。

しかし、後述の通り、2019年期末時点で、豪ドルベースで半期配当が94セントから80セントへ10年ぶりの減配となっています。減配後の配当を反映すると、配当性向は76.9%です。

銀行という業態上、信用収縮を源泉とした金融危機には脆弱です。今後も金融危機やリセッションによる業績減速による減配リスクはある程度覚悟しておいた方が良いでしょう。

一方配当利回りは高く、配当性向も高いという状況です。主力にするのは勧められませんが、あくまで分散の上でポートフォリオの一角を占めるには検討に値する銘柄と考えます。

【WBK】株価と配当利回り推移

2007年以降の平均配当利回りは6.1%と伝統的に高いです。減配を反映した2019年11月10日時点と同じ値です。

リーマンショックでは銀行株も売られに売られましたから、30ドル近傍から10ドル以下まで叩き売られた結果、配当利回りは2008年11月20日に13.8%まで高騰しました。

当時株価は9.098ドルです。この辺まで十分下がり得ると頭に入れておきたいですね。

下図は直近5年間の株価と配当利回りの推移です。

過去5年間の配当利回りは概ね5~8%で推移しています。株価は冴えず、買値が心理的に重要な要素にもなってきそうな推移ですね。

こうして見ると、昨年半ばから年末にかけて17ドル前後で低迷していた時期が、買い場だったことがわかります。

個別株では「こういう局面で買えるか」というのが1つのポイントにはなりそうです。しかしこれはあくまで押し目買い前提での買い場であるため、長期下落する場合はこの限りではありません。

【WBK】配当と為替レート(AUD/USD)推移

WBKは豪州の銀行ですので、売上も配当も豪ドル(AUD)建てが基準になります。

上図の通り、リーマンショックによる減配の影響を除くと、1株配当は為替レートAUD/USDに概ね連動しており、豪ドル/米ドルの為替レートに大きく影響されていることがわかります。

【WBK】業績推移

売上高は2018年まで右肩上がり、純利益も堅調でしたが、2019年には海外メディアでも既報の通り、当行の不正行為(融資の水増し、顧客に対する誤った金融面での助言)による訴訟費用の増加等が響き、業績は曲がり角。

また、2019年末決算において、利ザヤ(Net interest margin)も2.12%と前期比10bpダウンとなったほか、住宅ローンや預金金利における競争が激化するなど外部環境が悪化しました。

業績が下がれば相応に減配、という真っ当な結果となっています。営業CFも後述しますが、銀行という業態上、波があります。

【WBK】キャッシュフロー推移

キャッシュフローは不安定です。

ただ、一応そもそも銀行という業態を考えるに、営業キャッシュフローがマイナスであるからといって、本業でキャッシュを稼げていないわけではありません。

銀行の営業CFは、預金や貸付金の増減も変動要因となるため、限定的な参考値と捉えています。

デリバティブを含む有価証券の取得・売却・償還などでもキャッシュフローがブレるため、CFがブレるのは、業態ゆえの特徴と言えます。

【WBK】配当安全性

WBK 配当安全性

1株あたりのフリーキャッシュフロー(FCFPS)が、1株あたりの配当(DPS)を上回る局面は限定的です。2015年~2017年まで3年連続で配当支払いをFCFでまかなえていません。

2018年には盛り返しましたが、結局2019年期末時点で減配が発表されています。

豪州経済をめぐるマクロ環境

豪州経済が引続き堅調に推移しています。「リセッション入りしない期間」が110四半期連続で更新されました。これは現時点で世界において最長不倒の記録です。

リセッションの定義は国によって異なるものの、一般的には「2四半期連続して前期比マイナス成長」となることを指します。

実際に下図 [オーストラリアGDP成長率推移] を見て頂くとわかりますが、

オーストラリアGDP成長率推移

過去20年間で4回マイナス成長を記録しているものの、1四半期のみに留まっているため、一般的に言うリセッションという概念には含まれません。

約30年にわたり成長が継続していることがわかります。背景には、後述する「人口増加」があるのは間違いないでしょう。

高い人口増加率

下表は国連データに基づき、2016年・2060年における人口変化見通しと人口増減率をGDP順に表したものです。

豪州は他の先進国に比べ、人口の絶対規模自体は2500万人程度と多くありませんが、その増加率は1位であり、50%と突出しています。(ピンク色の増減率をご参照)

先進国は軒並み人口が減少する見通しの中、米国と豪州が気を吐いている形です。特に豪州は-30%の日本とは対照的な高い増加率見通しとなっています。

人口は経済規模の源泉であり、人口増加率は経済成長の源泉になり得ます。基本的に人口ボーナス期に高い経済成長率を記録し、人口オーナス期には低迷する傾向がありますね。

人口増に支えられた堅調な経済

下表は2016年までの豪州の人口推移です。

オーストラリアの人口推移(出所:国連)

上図の通り移民流入による人口増が経済成長に寄与しています。やはり経済の総体的な力強さというのは人口増が基盤となります。

先進国の経済成長率(出所:JP Morgan Guide to the Markets)

2012-2018年の先進各国GDP成長率です。他の先進国と比べても、豪州は堅調傾向。

各国・地域の株式予想配当利回り 2018年(出所:JP Morgan Guide to the Markets)

上図の通り、豪州株式全体として配当利回りは高い傾向があります。

豪州の政策金利は未だ下げ余地あり、銀行の収益の源泉となる利ざやは確保可能

上図は先進各国の2011~2018年における政策金利の推移です。

オーストラリアは先進国で数少ない、非伝統的な金融緩和に頼らずに経済運営がなされている国でもあります。

政策金利は日米欧など他の先進国よりは高く、銀行の伝統的収益源となる貸し出し利ざやは確保可能な状況です。豪州の銀行においては貸し出し利ざやの縮小による本業での収益性低下リスクは、あくまで相対的に過ぎませんが、他国よりは低いか。

【WBK】権利落ち日・配当支払い日・配当額

WBKは概して1月・7月の半期配当です。

下表赤太字で示した通り、2019年12月30日支払日の配当において、豪ドルベース(94セント 80セント)の減配により、米ドルベースで前回配当比15.3%の減配

配当落ち日 配当基準日 配当支払日 配当
11/8/2019 11/12/2019 12/30/2019 $0.5518
5/15/2019 5/16/2019 7/5/2019 $0.6518
11/9/2018 11/13/2018 12/31/2018 $0.6678
5/16/2018 5/17/2018 7/16/2018 $0.6927
11/10/2017 11/13/2017 1/2/2018 $0.7242
5/16/2017 5/18/2017 7/14/2017 $0.7126
11/15/2016 11/14/2016 1/3/2017 $0.6775
5/10/2016 5/12/2016 7/14/2016 $0.7014
11/12/2015 11/16/2015 12/31/2015 $0.6729
5/12/2015 5/14/2015 7/13/2015 $0.7065
11/6/2014 11/10/2014 12/29/2014 $0.7476
5/13/2014 5/15/2014 7/14/2014 $0.8491

(配当は米ドルベース)

WBKはADR(米国預託証券)としてNYSEに上場

ADR(米国預託証券)とは、American Depositry Receiptの略称。もともと米国の投資家向けに米国以外の企業に自国通貨(ドル建て)で投資できるように作られたもの。外国企業の株式を信託銀行などの預託機関(シティバンク、ドイツ銀行、JPモルガン等)に預け、これを担保にADRという証券を発行し、通常の米国株式と同様に米国市場で売買可能に。

今や日本の証券会社から米国市場へのアクセスは容易になっているので、米国市場のADRを通じて、英国や豪州などの企業に投資できるわけです。

そしてWBKはADRであり、米国での税金が課税されない為、日本の源泉徴収約20%さえ払えば良いので、日本の個人投資家にとっては米国で二重課税される米国本土企業の銘柄に比べて源泉徴収税の負担は小さいです。

確定申告で二重課税分は取り戻すことができますが、セミリタイア後の確定申告による国民健康保険料等のコストアップを考慮すると、ADRという税制面でメリットのある企業は選択肢の1つ。

WBK銘柄分析まとめ

以上、WBKの銘柄分析でした。豪州という良好なマクロ環境を背景とした潜在成長性もどう捉えるかというところ。

ただし今般の減配にもある通り、業績が減速すれば減配となる企業も相応に出てきますから、集中投資は避け、必ず分散投資を図ることが、心地よい投資を継続する上で必要と思います。

Best wishes to everyone!

WBKが利ザヤ縮小により、株価が下落していることに関して詳述したものです。

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公開日:2017年5月27日