【XOM銘柄分析】エクソンモービル、高配当スーパーメジャーの配当貴族

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本記事は、スーパーメジャーやオイルメジャーとも呼ばれる国際石油資本の筆頭格であるエクソン・モービル【XOM】の銘柄分析です。

何かと石油業界には逆風や懸念が支配的な昨今ですが、スーパーメジャーが今後も事業構造を変えつつエネルギー業界でのポジションを維持という想定の下で投資している方もおられるかもしれません。

【XOM銘柄分析】エクソンモービル、高配当スーパーメジャーの筆頭格・配当貴族

特徴
① オイルメジャーでは財務最良、業績安定
② 連続増配37年
③ 原油価格と株価に強い相関性
④ ダイベストメントは他社より遅れ気味か

エクソン・モービル【XOM】は米国最大手のエネルギー会社であり、下段に示した図中にあるスーパーメジャーの一角。

主に原油と天然ガスの探鉱・開発・生産・輸送・精製、石油製品の製造・輸送など上流部門から下流部門まで一貫して行う垂直統合型の巨大企業。

オイルメジャーの直近の歴史・変遷については下図(出所:経済産業省 資源エネルギー庁)が一瞥してわかりやすいと思います。

エクソンモービル最大の特徴は同業他社のシェブロン・ロイヤルダッチシェル・BPよりも業績・キャッシュフローが現時点では安定していることです。

背景には、下図の通り部門別利益は上流部門が60%と過半を占め、下流部門と石油製品が全体の40%を占める形で、部門ポートフォリオが分散されていることが挙げられます。

出所:2018年 Annual Report

上流部門はやはりWTI先物(原油価格)など商品市況と概ね連動するボラティリティの高い事業構造ですが、下流部門と石油製品の利益は原油価格との連動は見られず、特に石油製品は一定の逆相関が見られます。

【XOM】基礎データ

XOMの基本情報は以下の通り。

社名(和文) エクソン・モービル
社名 Exxon Mobil Corp
ティッカー XOM
設立日 1882年8月
本社所在地 米国テキサス
従業員数 71,000人
セクター エネルギー
連続増配年数 37年
減配なし年数 78年
直近配当利回り 5.4%
直近4年平均配当利回り 4.1%
直近3年平均増配率(年率) 4.8%
直近5年平均増配率(年率) 5.1%
配当月(支払日ベース) 3, 6, 9, 12
1株配当 $3.48
1株利益(2020年予想) $3.52
配当性向 98.9%
PER 18.4倍
株価 $64.74

(2019/1/28時点)

連続増配37年の配当貴族・78年間減配なしという過去の実績です。

2019/1/28時点で、株価は2010年10月以来の安値

ただし、背景には2019年の冴えない通期予想EPS(2.46ドル)があると思われます。Q3 EPSは市場予想を僅かに上回ったものの、Q1(予想$0.73/実績$0.55)、Q2(予想$0.71/実績$0.61)とも市場予想を下回り、株価は直近軟調。

更に、昨今投資に積極的で、年間300億ドル規模で石油・ガスに投資しており、資産売却による配当支払いをまかなうとのアナリスト観測も見られます。直近ではシェブロンが減損するなど業界全体でも逆風下という状況です。

【XOM】株価と配当利回り推移(2007年以降)

株価はリーマンショック前と比べてもさほど伸びていません。ただし2015年にかけての原油価格暴落期には、株価は60ドルあたりまでの下落ということで、よく持った方という印象。

株価は概ね横ばいながらも、配当利回りは上昇傾向。後述の通り、背景に継続的な増配があります。

2007年以降の平均配当利回りは3.5%。直近配当利回り5%超は、配当利回りという数字上は過去平均を上回る、20年来の水準。

【XOM】株価と配当利回り推移(直近5年間)

直近5年間で株価は横ばい。筆者算出の、直近5年間の平均配当利回りは4.11%です。

2015年から続く原油価格低迷以前は配当利回りは3~4%も、2015年以降は3.5~5.0%近傍で推移。

【XOM】購入タイミングの目安

エクソン・モービルの購入タイミングの一例として、以下が挙げられます。(ただし、あくまで押し目買い前提

配当利回りから見る買い目安

1-1)配当利回りが平均値を超えた時

→ 配当利回りが4.1%を超えた時

1-2)配当利回りが一定値を超えた時

→ 配当利回りが5.0%を超えた時

VIX指数から見る買い目安

・VIXが20を超えた時

・VIXが30を超えた時

配当利回りの直近5年間の平均値は4.11%です。少なくともこの水準を上回る配当利回りの際に買いたいところです。(繰り返しながら、あくまで押し目買い前提)

下図はXOMとVIXの関係を示したものです。

VIX指数が20を超えた局面は下押し局面であり、更にVIX指数が30を超えた局面は良い買い場であってきました。

ただ、リーマンショック級の暴落となると、配当利回り・VIX共にかつてない数値まで高まる形にもなります。

基本的に上で挙げた数値というのは、あくまで押し目買い前提の参考値・水準と考えます。

【XOM】配当と配当利回り推移

2015年の原油価格低迷以降は増配幅が縮小しています。

軸の値を取る幅にもよりますが、配当と配当利回りが軌を一にしています。「増配+株価横ばい」に起因して漸増する配当利回りが背景にあります。

【XOM】業績推移

XOMの①売上高・②営業利益・③純利益・④営業利益率・⑤営業キャッシュフローマージンを見てみましょう。

後述しますが、売上高・営業利益・純利益・利益率など概ねほぼ全ての経営指標は原油価格に連動します。これらも2015年以降の原油価格低迷の影響を受けています。

【XOM】キャッシュフロー推移

XOMの①営業キャッシュフロー・②投資キャッシュフロー・③フリーキャッシュフロー・④営業キャッシュフローマージンを見てみましょう。

営業CFマージンが2015年の原油価格低迷以前の水準まで回復していることがわかります。原油価格が以前の水準まで回復していないにも関わらず、です。

同社の資産売却や優良資産の購入など事業ポートフォリオの見直しやコスト削減策の効果が表れているとも見てとれます。

2020年に同社は資産を大きく売るのではないかとの市場観測あり。

【XOM】配当安全性

原油価格が急落した2015年・2016年を除いて、1株あたりのフリーキャッシュフロー(FCFPS)が、1株あたりの配当(DPS)を上回っています。

【XOM】オイルメジャーとのFCFマージン比較

XOMのフリーキャッシュフローマージンは概ねRDSB・BPを上回るなど安定。

【XOM】株価と原油価格との相関性

XOMは、RDSBやBPほどではないにせよ、原油価格(WTI先物)との相関性は、上図の通り高いです。

冒頭の通り、上流部門の利益が直近では60%を占めますから、原油価格の業績へのインパクトも依然として高位です。

【XOM】財務状況・レバレッジ

米格付け会社「S&P」「Moody’s」のレーティングともに、オイルメジャーの中では最良のAaa/AA+。

上図の通り、BPやロイヤルダッチシェルより財務レバレッジも最低位と業界内では良好な立ち位置。

【XOM】エクソン・モービルの特徴と歴史

次に、同社を特徴付ける事象を一部振り返ります。

果断なリストラ政策

同社繁栄の陰にはリストラ有り、無傷で成されたものではないようです。

1982年、同社は18万2000人を雇用していました。しかしその後予期せず原油価格が下落すると、合理化キャンペーンを推進。

同キャンペーンにより、1989年までに8万人を解雇。全雇用の4割以上。当時のNY本社の人員は1,362人から330人に減少。

これにより、1987年、同社の財務成績は浮上し、従業員1人あたりの年間収益は他のアメリカ主要企業を上回ることに。

このようにリストラは株主価値の向上に貢献し、一方従業員は職を失うという、資本主義を特徴づける両者の利益相反が起こっています。

資本主義の世界で生きている以上、留意していてもよさそうです。

石油ガスという事業自体が長期投資

同社の展開する石油ガス事業は、生産期間が40年にも及ぶ長期スパンのものもあります。

その間に首脳交代や、投資先は政情不安定な国が多く、クーデターや政変リスクがあるわけですが、当該リスク判断を国に全ては委ねず、自社でリスク管理を行なっているのが凄いと感じます。

それでも同社高級幹部は身代金誘拐事件の被害者となり、殺されたケースもあり、その後の徹底的な同社のリスク管理体制の確立に繋がっていきます。

リスク管理体制

同社は以前、エクソン・バルディーズ号による原油流出事故を起こしており、多額の補償金や世間の厳しい目・環境保護団体からの強烈な批判に晒されていました。

加えて、80年代後半の原油価格低迷により同社のキャッシュフローは著しく締め付けられ、一時は配当を支払うために借り入れまで実施。

そして政情不安定国からすれば、エクソンが石油やガスを生産する土地は、クーデターやゲリラ活動による恰好の捕獲や盗みの対象となりやすく、同社には当該地域を物理的にコントロールする力が求められます。

そして上述した身代金誘拐事件も幾度となく起こり、抜本的なセキュリティ改革を行う必要性も。

社内のグローバル・セキュリティ部門が改革され、シークレット・サービス調査・情報担当副長官が採用され、同社の上級幹部は大統領候補者や政府関係者並みの身辺警護を受けるようになります。幹部が電話を掛ける際は、セキュリティ部がチェックして会話盗聴を防止するなどの徹底具合。

リスクマネジメント手法は以下通り、

  • 社内の掲示板、オフィスの壁面、世界中の社用車の上に「誰も怪我しないように」という掘削現場から採用されたモットーがくまなく貼られ、
  • 交通事故防止の為、電子式監視装置を車両に装備し、運転手の位置を遠隔で追跡、速度制限を超過させないようにし、1度でも違反すると即解雇
  • アフリカではマラリアの血液検査に異常があると即解雇、帰りの航空券は自腹
  • オフィスで紙で指を切らないように手袋をはめてペーパー作業を行うか議論がされる

等々、一部行き過ぎている程の徹底。同社は一つの国家のような側面を持つ企業体という印象さえ受けます。

ESG投資の浸透。環境問題では逆風か。

2017年5月、エクソンモービルの株主総会で次のような株主提案への株主の賛成が過半に達しました。

「気候変動規制の業績への影響を更に詳しく開示すべき」

石油産業は油濁事故の可能性があるなど、環境負荷は潜在的に高いため指弾されやすく、以前まで年金基金によるこの手の株主提案は否決も、米ブラックロックなどの運用会社が賛成に回り、可決。

ESG投資の額は世界で約23兆ドルを超え、資産規模の増加と共に投資先企業への影響力も強い米ブラックロックやバンガードなどの有力運用会社は、企業との対話や議決権行使でアピールせざるを得ず、環境保護や人権問題の分野にまで関与し始めており、XOMとも関連のあるトピックになっています。

【XOM】銘柄分析まとめ

以上、エクソン・モービル【XOM】の業績や沿革を振り返りました。

個人的に2020年はエネルギーセクターは良くも悪くも注目対象の1つです。その浮沈やいかに。

Best wishes to everyone!

原油価格と石油メジャー株価の関係についてです。強い相関性が見られます。

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エクソンモービルがどのような会社かを知るには「石油の帝国」がオススメです。相当詳細に同社の沿革が滔々と語られています。(繰り返しながら、図書館で借りれば無料です


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公開日:2017年4月1日