高値から72%下落、高配当株となった「セリア(2782)」は買いか
注目していたセリア、ようやく買ってもよいと思える水準になったので買いました。
2018年につけた高値7,390円から72%下落し、成長株ですが配当利回り3.4%。高配当株の領域です。
昨今の日本の成長株は、数年に一度のたたき売られ具合だと思うので、買い進めています。
注目していた理由:消費者目線の競争力
なぜセリアに注目していたかというと、実際に利用していて、以下のように「消費者目線で競争力を感じるから」です。
- 質で勝負できる「ダイソーの上位互換」
業界1位のダイソーは店舗数と品揃えでは圧倒的ながら、業界2位のセリアは100均のなかで品質・デザインともによい。「同じ100円でどっち買う?と言われたら、セリア」(妻談) - 新商品が消費者ニーズをとらえている
セリアは品数が少ないせいか、シーズンごとに商品を入れ替える。新商品は「あー、これほしかった!」というものが多い - 100円均一で戦えている
ダイソーは危機感を覚えたか、「Standard Products」という高級志向な「無印の下位互換」を打ち出して対抗軸を出している模様も、セリアはある意味、まだ100円で戦えている - 未出店地域で転売屋
たとえば毛糸。今の流行りを把握したうえで品質も悪くない。セリアは店舗数が少なく流通量が多くないので、近くに店舗のない田舎では、転売屋の割高な毛糸でも買う人がいるなど質に定評あり
ダイソーとセリア、質でセリアに軍配
たとえば、「左:ドイツのオパール毛糸(1,600円)、右:ダイソーの毛糸(300円)」ですが、素材の違いはあれ、手触りは同じ。このダイソーのコスパをさらに上回るのが、以下セリアの「カッペリーニ」
ダイソー300円に対し、セリア100円です。そりゃこっち買いますよね。これは前述したように、未出店地域では転売もされている商品です。
このように「セリアは価格に対する質がよい」というのが競争力を感じる点です。
では、以下からは同社の決算資料をもとに業績面を見ていきましょう。
2023年3月期 通期予想
まずは、最新の決算資料となる、2023年5月の2023年3月期決算の内容を確認します。
現状:売上高は成長継続も、利益が減っている
セリアの下落は比較的わかりやすくて、「売上高は伸びているが、原材料高と円安の影響で利益が減っている」という状況です。
- 店舗数は着実に増加
※未出店地域に転売屋が出現するように、新規出店余地は大きいと考えられる
新規出店で売上高は着実に伸びている一方で、以下に示すように「減益」という状況です。
- 減益の要因は、「原材料高・円安の影響」と示されています。
減益の原因は、原価上昇
- たしかに、原価上昇によって利益率が下がっていることが見てとれます。
原価のうち、水光熱費の上昇幅が大きい
- なかでも、「その他」に含まれる「水光熱費」の上昇幅が最も大きいことが見てとれます。
減益要因は、あくまで「一時的な現象」か
- 実際に、原価と水光熱費の上昇、つまり「原材料価格の上昇、および円安によるエネルギー単価の上昇」が影響していることが見てとれます。
であるならば、円安と原材料高が反転すれば、業績の回復が見込めるという判断につながり、構造的な要因というより、円安・資源価格の上昇による一時的な現象となる可能性を念頭におきたいところです。
ほかリスク要因として「業界の飽和感」の再来
あとはリスク要因として、たとえ原材料高と円安が解消されたとしても、「業界に飽和感があった2018~2020年の再来が今後起きるのか」という点です。
この点は、「消費者目線で競争力のあると思えて、セリアの新規出店での増収・増益に賭けられるかどうか」という点に帰着するかと思います。
減配の可能性は、現時点では見られない
- 配当金の支払い額は営業キャッシュフローの半分以下
したがって、キャッシュフローの観点からは、ただちに減配の必要に迫られる状況は見えません。
ただし、来期予想は純利益が17%減なので、その影響のみを加味すると「営業CF 8.8億円」へ減る計算になります。
依然として配当支払い額5億円よりは多い水準で、ただちに減配の必要性に迫られるとは見えないものの、継続して減益となるといずれはというところでしょう。
2024年3月期 通期予想
ではここから、来期の会社予想を確認します。
来期は更なる原価率上昇で、減益予想
来期も減益予想となっています。背景には、やはり原価上昇がみてとれます。
この10年、同社の原価率は56.6~58.1%でした。しかし来期予想は58.6%と更なる原価上昇を見込んでいます。低原価商品の開発により、下期に改善を見込むかたち。
今後の展望:原価抑制努力で、あくまで100円を維持
「原材料価格の上昇を受け、売価へ転嫁する」というのがもっとも考えやすい対策ですが、セリアはあくまで原価上昇の抑制に努め、100円を維持して顧客層拡大に注力する構え。
この方針が個人的に注目。商業でも人としても、既存顧客を大事にする姿勢がたいせつだと思います。
補足
よく「テレビに取り上げられた結果、一過性で物見遊山の客が大挙してやってくるので短期的には好影響となったものの、既存顧客の居心地が悪くなって中長期的には客を失った」なんてことがありますね。
セリアは意図してかせざるか定かではありませんが、あくまで既存顧客を重視する姿勢を見いだせます。
指標面:実績PBRは過去5年で最も割安
PBRは1.6倍と、過去平均3.08倍の約半分程度。
2022年に底をつけたときと同程度の水準です。
増配傾向、株価下落で配当利回り3.4%へ
- 着実に増配を継続。もっとも、直近の減益を受け、増配は足踏み状態
2018年につけた高値7,390円から72%下落したことで、配当利回りは3.4%へ。もともと成長株のセリアが、もはや高配当株になっています。
まとめ
- 昨今の日本株は成長株が叩き売られており、セリアも同様
- セリアの商品は、消費者目線で、100均のなかで競争力を感じられる
- 未出店地域に転売屋が出現するなど、新規出店余地が感じられる。売上高は着実に伸長も、円安・原材料高で減益
- 円安・原材料高による水光熱費などの原価上昇が、一時的な現象となるかが焦点
- 来期も原材料高による減益見込みも、あくまで値上げせず100円維持の方針
- PBRは過去5年で最も割安
- 株価下落により、成長株にもかかわらず配当3.4%の高配当株となっている
今まで中国が安い人件費をてこに安い製品をつくり、世界的にデフレを輸出してきました。
ところが現在、米中対立による米中経済のデカップリングが起きています。これは、構造的なインフレ要因であり、原材料高が続く可能性があります。
円安はさすがにこれ以上大幅に進むと、通貨の信認が懸念されたり、海外の短期筋から投機的な対象になってもおかしくないことから、政府・日銀も看過できないはずですが、どうでしょうか。
このように、とくに原材料高は依然としてリスク要因はありますが、いったん指標面の観点から、買いたいと思います。
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