現在の米国株に対する相場雑感と展望

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現在の米国株に対する相場雑感と展望

Apple、Microsoft、NVIDIAといった指数に影響を大きく及ぼす銘柄群の好調に連れるかたちも相まって、割高に推移している印象を持っています。

一部ハイテク企業とは対照的に、景気に敏感なシクリカル銘柄である、農業機械大手ディア(DE)や航空機大手ボーイング(BA)などは株価調整が続いているといった状況です。

金融引き締めによる投資の抑制

金融引き締め(高金利)が長引くほど、企業と家計は新規の借金コスト(例:企業の借り入れ・起債の利率、家計の住宅ローン金利)が上昇し、新規投資はその借金コストを上回る収益率を期待できるものにかぎられるようになります。したがって、投資が抑制されます。

※ただし、「新規」の借金コストと記したように、すでに長期の固定金利で借りているものに関しては影響がないので、引き締めの影響はただちに出ず、時間差で表れることになります。

投資が抑制されるということは、経済活動の一部が阻害されることなので、一般的に経済活動が縮小します。言い換えると、景気は冷やされることになります。

なお強い米国経済

しかし現在の米国経済は、労働市場が依然として強いです。

先月の雇用統計では雇用者数・失業率・平均時給はすべて強く、昨夜発表のADP雇用も強い結果でした。今晩の雇用統計が注目されます。

一方で、住宅市場は鈍化傾向が続いています。

米20都市の住宅価格(前年同月比)

金融引き締めによる住宅ローン金利の上昇に素直に反応しているようで、住宅価格の伸びは急速に鈍化しています。

コロナ禍以降(2020年~)の現金給付に呼応するように騰勢を強め、金融引き締め(2022年~)に呼応するように鈍化しています。

今後、労働市場がどうなるか

FRBはとりわけ「平均時給がインフレに対して粘着的に影響する」というスタンスで、労働市場が強いかぎり、利下げにはなかなか踏み切れないと考えられます。

その場合、金融引き締めが続くことを意味し、米国株の上値は本来おさえられやすくなります。

ただし、株価は単純化すれば「企業利益」と「金利」で構成され、企業利益が伸びれば高金利でも、高い株価が正当化されます。

物価上昇率が6%で、金利が4%ならば、実質金利は-2%です。この場合、企業も家計も4%の金利で借金をしたほうが、6%よりマシなので、お得です。つまり冒頭で述べたような「投資や借金の抑制」が起こらないことになります。

つまり、インフレ率より低い政策金利は、景気を冷やすどころか加熱することになり、インフレが高止まりしてしまうことが考えられます。

したがって、もし今後も米国経済が強く、インフレが沈静化しなければ、FRBは「今の政策金利は緩和的である」と判断して、さらに引き締める可能性が高いと思います。

よって、今夜の雇用統計(≒米国経済)が前月に続いて強く、さらには次のCPI(物価指数)の結果も前月に続いて高止まりが続けば、利下げ期待はしぼみ、理論的な株価にはネガティブにはたらきやすいと思います。

現時点では引き続き楽観を控えた慎重姿勢といいますか、一部は短期の公社債(MMF)で金利を得るかたちです。

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