FIREにおける「4%ルール」をどうとらえるか
FIREにおける通説・理論的根拠のひとつに、「4%ルール」なるものがあります。
(冒頭からいきなりですが、個人的には4%ルールを参考にしたことはなく、これからもないと思います。理由は後述します)
4%ルールとは、平たく言うと「米国では過去、米国株S&P500と債券に投資をして毎年4%ずつ取り崩して資金が枯渇しなかった」という、いわば過去一定期間のデータから導き出された傾向です。
具体的には、「1926~1995年の70年間において、株式50%・債券50%のポートフォリオで年率4%取り崩し、30年後に資産が95%の確率で残った」という過去データです。
この4%ルールは、拙著「本気でFIREをめざす人のための資産形成入門」では触れていません。理由があります。
以下ご質問。率直に記してみたいと思います。
題名: Fireの前提条件についてお尋ねします!
メッセージ本文:
穂高さん、こんにちは。いつも楽しく拝見しております。
お尋ねしたくてご連絡さしあげました。
私はS&P500を中心に投資を継続しており、fireに関心があります。もうすぐ視野に入りそうです。
そこで、お尋ねですが、4%ルールってありますよね。
総資産の4%を毎年取り崩しても、資産は減らない(はず?)という説ですが、日本でも通用するのでしょうか。
ルールというか経験則でしょうか。穂高さんのお考えをよければお聞かせください。
よろしくお願いいたします。
穂高さんでしたら、日本でfireするとして、何パーセントに設定されるでしょうか?
4%ルールというのは、冒頭の通り、あくまで過去の傾向であり、将来を規定できるものではありません。
これは配当金や米国株の将来も同様ですね。将来を保証できるものではありません。
たしかに数字というのはわかりやすく、また期待を持たせやすいものでもあると思います。
「4%ずつ米国株と債券を取り崩していけば、資産を枯渇させないことが期待できる」というのも、FIREにおける一種の通説と言えるでしょう。もっと言うと、いわば「大衆にインパクトを与えやすいセンセーショナルさ」という意味では看板のようなものかもしれません。
ただし誤解を恐れず率直に言うのであれば、あまり依拠しない方がよいと私は思います。
- あくまで過去の
- 米国の物価上昇率や株式収益率をもとに導かれた数字
日本に当てはめるには、物価上昇率の違いや為替リスクなど、追加的な仮定や前提条件が増え過ぎます。本当に「参考程度」にとどめた方がよいというのが私の率直な考えです。
私が今でいうFIREをめざしていた頃は、4%ルールなるものが耳に入ってきていなかったということもありますが、たとえ耳に入っていても参考にはしていなかったでしょう。
元も子もないかもしれませんが、なぜなら、人様は人様、自分は自分であり、人によって何%が必要かは「FIRE後の収入・支出・家族構成・人的資本の運用具合などあまりに変数が多すぎる」からです。
一律に数字を使って将来を想定することは私はしなかったと思います。
他者の他者による過去の統計から導かれた数字を参考にするのではなく、自分なりに考えたアプローチの方が、あらゆる面で応用が効きます。
拙著「本気でFIREをめざす人のための資産形成入門」で4%ルールに一切触れていないのは、そういう理由からです。
情報を色々と入れてしまうのはよい面もあり悪い面もあります。
先に情報を入れてしまうと、他者の良いとこを取り入れることはできますが、自分なりの考えは醸成されにくくなります。
4%ルールひとつ取っても、その裏に前提条件が多々あります。米国株の成長性・税制・インフレ率・政策など。私は変数が多いシミュレーションには参考程度にとどめるのがよいと思います。
では変数が少なければ良いのかというと、そうでもありません。変数が少ないと一般化することになるので、やはり一個人の参考にはならないと考えます。
ハードルは高く感じるかもしれませんが、ゼロベースで一から考えて、自分ならどういう数字を設定するか、そもそも何%という数字を設定するよりも「自分にとって興味ある活動が何かを追求する」ことが、収入につながり、将来の取り崩しにおける不安を覆せることかもしれないですよね。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone.
関連記事
どんな常識・通説・統計も、まずはある程度は疑ってかかることが肝要と思います。
通説が個人にとって参考にならない好例です。
主体的に考えることは、どんな局面でも生きてくると思います。