JT減配から、わずか2ヶ月で株価が元通りになった理由
2021年2月にJTが減配を発表しました。
そして2か月後の3月30日時点で、株価は元通りに回復しました。
様々な思惑や要素が、1つの数字として株価に収れんされます。そのため、原因を1つに絞りづらいという前提を踏まえつつも、以下記します。
配当自体の純粋な増減は、本来的には中立
何度か述べてきている通り、減配も増配も、それ自体の影響としては株価に対して中立です。
なぜなら会計理論上、配当は株主資本から払い出されているので、単に株主由来の財布から株主に移転しているだけです。その配当が増えようが減ろうが、株価には中立です。
この辺りは拙著で詳述の通りです。
本来中立でありながら、なぜ株価に影響が生じるか
では本来中立にもかかわらず、なぜ株価が影響を受けるのかといえば、以下を要素として挙げることができます。
- 市場参加者全員が会計知識を備えているわけではない
- 増配・減配が、業績堅調・悪化を示唆する兆候になるケースがある
①については、昨今の米国ロビンフッドの件で、個人投資家が市場価格を歪めることができる事実が顕在化したばかりです。
このことからも、市場価格は常に適正に反応するとは限らず、だからこそ以下記事で「こういった減配はむしろチャンスになり得る」と記していた通りです。
②については、配当それ自体の純粋な増減は、株価に対して中立的です。ただし、その配当の増減が、当該企業の将来キャッシュフローの見通しの増減を示唆する内容であれば、株価に影響が生じる原因となりますね。
ただし、今回のJTに関しては、配当政策の変更(配当ではなく投資に回す)による減配であり、現時点で業績の著しい悪化が明瞭ではありません(同社発表の資料をみるかぎり)。
むしろ、成長資金に回したという解釈が可能な内容です。よって、減配による株価の下げは過剰反応・市場の歪みであり、正常な値に戻った、と言うことは可能です。
配当増減の背景にあるものを探る
ただこういった評論は株価の後付け的に行えてしまうので、要は「こういった解釈はできる」、そして「減配=悪とはかぎらず、その裏にチャンスは存在し得る」ということが本記事のポイントと思います。
もっと言うと、減配が発表された時は、その事実が重要なのではなく、なぜ減配に至ったのかという原因が重要であるということですね。
その原因が、同社の将来キャッシュフローを減じるものなのか、単に配当政策の変更によるものなのか、業績見通しに変化があったのか等が本来は重要であるということです。
しかし全員がそこまで考えて売買判断をするわけではないので、市場では常に歪みは生じ得ます。
その歪みを突くことができれば、相場環境や市場全体の動きにかかわらず、リターンを得ることも可能ではあるということですね。
「減配=ネガティブ・売り」とはかぎらない
個別株投資(ETFもそうですが)をやる上では、減配=ネガティブ、減配=売りとはかぎらず、むしろそこで冷静に購入機会を見るという判断も合理性を帯びてくるのです。
もちろん、インデックス投資では、こういったことを考える必要は必ずしもありません。
ただし、市場が歪む要因は常に転がっているということは、投資対象にかぎらず普遍的に言えることだと思います。
Best wishes to everyone.
関連記事
投資対象には種々あり、人を選ぶものもありますが、その際に意識しておきたい身もふたもないこともありますね。
投資は本当に目的次第ということですね。ゴールを設定することがまず先決と思います。