配当金で資産形成の実感を得たい。米国株ETFと投資信託、どちらが適しているか。
年齢・価値観・金銭感覚・投資期間・資金規模・家族構成 … etc.
資産運用は、多分に色々な要素が反映されて、各人に合った手法が形成されます。
大筋を外れていない限り、どれが正しくてどれが間違っているわけでもないですね。
今回は、以下ご質問をいただいています。
題名: 米国ETFの配当金についてのご質問
メッセージ本文:
突然のご連絡失礼します。はじめまして。
標記の件でお尋ねさせていただきたくご連絡いたしました。
私は、2年ほど前から積立投資を始め、楽天VTIを積立NISAで月3万円、特定口座で月5万円積み立てております。
現状、資産額は増えていっておりますが、その実感は全くなく、配当金に興味が出てきております。
そのため、積立NISAはそのまま継続予定で、特定口座の5万円分を投資信託から米国ETFへ変更を考えております。
ただ、米国ETFに投資をした場合、配当金はドルで入金されることになるかと思います。
生活上必要な通貨は円であり、ドルが増えても、都度円転するのであれば、投資信託のある程度含み益が出たタイミングで利確するほうがいいのではと悩んでおります。
投資の方針としては、銀行に預金をしておくぐらいなら、少しでも増やして、その増えた金額を旅行や食事等の日々の多少の贅沢に使用したいと考えております。
ひとまずのゴールは給与以外のキャッシュフローを年10万円にすることです。
このような場合、
- 投資信託を積み立て、含み益があるタイミングで利確するのか
- 米国ETFを積み立て、配当金を都度円転するほうがよいのか
助言いただけないかと思いお問い合わせをさせていただきました。
長文となりましたが、ご回答していただけたら幸いです。
よろしくお願いします。
上記ありがとうございます。以下回答いたします。
資産額が増えても、実感がない。配当金でプチ贅沢。
現状、資産額は増えていっておりますが、その実感は全くなく、配当金に興味が出てきております。
(ご質問文より抜粋)
資産額は日々変動するので、「配当金というキャッシュフローが実際に生まれることで、実感が生まれやすい」というのは、確かにあると思います。

「目に見える形」でのキャッシュフロー
配当金を積み上げる心地よさは、私もセミリタイアをめざす過程で実感・機能したところです。
実感が生まれれば、モチベーションになります。モチベーションが生まれれば、継続が容易になりますね。
「資産が増えても実感がない。給与以外のキャッシュフローを得て、日々のプチ贅沢をしたい場合、以下どちらがよいか」ということですね。
- 投資信託を積み立て、含み益があるタイミングで利確
- 米国ETFを積み立て、配当金を都度円転
結論としては、理論上、決定的な分水嶺となるほどの大差はありません。私なら②です。
①・②、いずれも20.315%の税金(以下)が発生しますし、円建て・外貨建ての違いはあれど為替リスクは両者ともあります。
- 利益確定:譲渡所得に係る所得税・住民税
- 配当金 :配当所得に係る所得税・住民税
では、以下メリット・デメリットを述べます。
① 投信つみたて、含み益があるタイミングで利確
- メリット:円転の手間が省ける
- デメリット:利益確定タイミングを計る難しさ
「含み益があるタイミングで利確する」という方法は、言葉にするのは簡単ながら、規律を持って実践するとなると、心理的に難度があると私は思います。(定期自動取り崩しサービスを利用する場合は、その懸念はないもののタイミングを計ることはできない)
というのも、実際にやってみて感じるかと思いますが、たとえば上昇トレンドにあるとき、
- まだもう少し待てば、さらに高値で利益確定できるかも
こういう気持ちが、程度の差はあれ、どうしても人間には出てくるものです。
では上昇が続いたとして、「次どのタイミングで利確するのか」に意志力を割く必要もあります。
逆に、その後下落した場合、さらに厄介なのが
- 下落するなら、あのとき利確しておけばよかった
こういう後悔の念が、生じやすいです。
こういう心理的な反応・メカニズムは、投資行動における規律を乱します。「規律がある=良い」とは必ずしも限りません。しかし、「規律があると、結果的に良い結果に繋がりやすい」ことも事実と感じます。
結論のみ書きますが、行動心理学上、人間の心理に率直に行動すると、投資では負けやすくできています。
この「心理的なメカニズムを、投資においてできるだけ作用させない仕組み」が、以下②です。
② 米国ETFをつみたて、配当金を都度円転
- メリット:投資行動に意志を介在させる余地をなくせる
- デメリット:都度円転の手間
拙著でも理論面に詳しく触れていますが、配当金はいわば「自動的に利益確定」となる仕組みです。
これは、投資行動に意志を介在させる余地をなくせるので、心理的に配慮された仕組みです。タイミングを計る必要や、意志力を割く必要がありません。長期的に続けやすい仕組みにもなり得ます。
ただし、ご記載のとおり、日本円での消費に配当金を原資とする場合、都度円転する手間が生じます。為替変動の影響も、相応に「目に見える形で」生じます。(円建て投資信託も為替ヘッジタイプでもない限りは、為替リスクは目に見えにくい形で生じます)
高配当株ETF【VYM】【HDV】【SPYD】といった有力な選択肢のほかにも、東証上場の【1665】【2558】という米国S&P500に連動するETFがあります。
iシェアーズ S&P500 | MAXIS米国株式 S&P500 | |
---|---|---|
証券コード | 1655 | 2558 |
設定日 | 2017年9月27日 | 2020年1月8日 |
純資産 | 185億円 | 49億円 |
運用会社 | ブラックロック | 三菱UFJ国際投信 |
信託報酬 | 0.165% | 0.086% |
※2020/12/30時点
これらは、高配当株ETFに比べて分配金は少ないですが、「円建て」「外国税額控除の手間が省ける」といった特徴があります。
まとめ:メリット・デメリットで天秤にかける
以下の通り、まとめます。
「資産が増えても実感がない。給与以外のキャッシュフローを得て、日々のプチ贅沢をしたい場合、以下どちらがよいか」
- 投資信託を積み立て、含み益があるタイミングで利確
- 米国ETFを積み立て、配当金を都度円転
① 投信つみたて、含み益があるタイミングで利確
- メリット:円転の手間なし
- デメリット:利益確定タイミングを計る難しさ
② 米国ETFをつみたて、配当金を都度円転
- メリット:投資行動に意志を介在させる余地をなくせる
- デメリット:都度円転の手間
「これら主な要素を天秤にかけて決める」ということですね。よほど多額の資金を運用していない限り、決定的な差異は生じません。
私なら②ですが、「自分はどちらが心地よいか」「どちらなら実践・継続しやすいか」という観点が重要になってくると思います。
ですから、ご自身にしっくりくるのがどちらなのかを、検討されるとよいのではないかと思います。
配当金でプチ贅沢。生活に彩りを添えますね。投資は手段なので、素敵なご活用のされ方ではないでしょうか。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone!