恐らくあらゆる事象において、表と裏があり、表だけ見ていても実情は見えませんし、裏だけ見ていても実情は把握しづらいと思います。
高配当株や配当金には多数のメリットがありますが、一方でデメリット・注意点にも改めて焦点を当てておきたいと思います。
昔から弊ブログを読まれている方は、私が高配当株または連続増配株への投資に際して注意してきた点などご覧になっていたかもしれません。
しかし、特に私がセミリタイアして以降、弊サイトに訪れた方は、そんな過去記事までいちいち読めないと思いますし、記事数が多すぎて追い切るのは当然ながら現実的ではないと思います。
私も今までのスタイルを築くにあたり、デメリットとなり得る性質を承知の上で投資をしてきましたが、もしご承知でない方は、やはり留意した方が望ましいと思います。
弊ブログをきっかけに株式投資など投資全般に興味が湧く、これは有難いことです。
しかし、あくまで注意点も踏まえて投資することが、冷静にマーケットに臨むことに寄与します。
完全無欠の投資手法は世の中には基本的に存在しませんし、それは高配当株だけでなくあらゆる投資対象もまた然りです。
尚、ご存知とは思いますが「Disclosure(情報公開;立場の明示)」として、私個人はセミリタイアに至るまで高配当株や連続増配株を選好してきたこと、申し添えておきます。
高配当株のデメリット・注意点を改めてまとめておきます。
では以下、高配当株投資をする際にデメリットとなり得る事象や注意点を述べます。
①「配当を多く出す=良いこと」ばかりではない
まず、「配当を多く出す=良いこと」ばかりではありません。
あくまで配当の主たる源泉は、「株主資本」です。配当が吐き出されると、理論的には株価は配当分下がります。なにか錬金術的に配当金が生み出されているわけではありません。
あくまで配当の主たる源泉は、業績であり、利益であり、キャッシュフローです。これが大前提です。
特に個社においては、個々の業績や財務に目配りすることが欠かせません。(そして、目配りしていたつもりでも、リスクの顕在化を事前に把握するのが困難でもあります)
税金の観点からは、リターン押し下げ要因になるケースがある
そして、配当を吐き出すたびに、課税されます。課税されるたびに無配株と比べて税金を先送りにできず、その点に限れば、理論上リターンを押し下げる要素にもなり得ます。(ただし、あくまで配当控除を無視した場合、および事業への再投資が効率的であるという場合に限るので、必ずしもそうとは限らないことに注意)
配当が多ければ、そして数十年単位の長期にわたると、その影響は応分に大きくなることもあります。
また、配当利回りが極端に高い(4~5%以上)銘柄は、将来見通しが悪いために株価が下がり、結果的に高配当になっていることもあります。「配当利回りが高い=よい」とは限りません。
② あくまで業績・利益・キャッシュフローが大事
配当という「定期的な不労所得・キャッシュフロー」の主たる源泉は、あくまで業績であり、利益であり、キャッシュフローです。
そのため、高配当株であればなんでも良いわけでは当然ありません。
「今後も業績・利益・キャッシュフローが見込めると思しき企業」に投資を試みるのが基本です。
仮に「沈みゆく可能性のある船に投資する」ということであれば、沈むリスクを承知の上で投資したり、分散を徹底することが必要になってきます。
③「配当利回りが高い=買い時」とは必ずしも限らない
配当利回りが高いということは、背景に「潜在的なリスクをマーケットが織り込み始めている」可能性があります。(一方、市場に短期的な「歪み」や「行きすぎ」がある可能性もあります)
つまり、減配リスクや業績低迷、セクター由来あるいは景気サイクル由来・市況サイクル由来の低迷期の端緒を反映する場合もあります。
配当利回りの上昇は、購入タイミングの材料になり得ます。なり得ますが、株価下落のクッションにもなり得るその一方で、当然ながら更に下落するリスクもあります。
ですから、個別株において「配当利回りが買い時の目安になるケースもあります」が、「配当利回りが高いというそれだけの事象で以て、買い時になる」とは必ずしも限りません。
尚、ETFでは経験上、配当利回りが目安になることは散見されます。
④ 買値・資金管理・買い増し余資の有無、重要
これは特に個別株に言えることですが、買値は重要です。
「長期的に右肩上がりが望める」と思えるようなETFであれば、淡々と積み立てていくことで、その期待が実現した際には恩恵が享受できます。
しかし、特に個別株では株価が上昇するものもあれば、横ばいのものもあれば、低迷期が長く続くものなど千差万別、そのボラティリティは比較的高いものになります。
低迷期が続いて上昇を描くパターンを例に挙げると、この場合、資金管理・買い増し余資・心理面も非常に重要になってきます。
「その株式が低迷期を挟んでも長期的に上昇する」というシナリオにBETする場合、下落途中に買い増し余資が尽きると、買値が高くなってしまいがちです。
ゆえに、入金力や配当の多さなどが心理面でも買値面でも大きく関係してきます。
例えば、直近ではタバコ株はその最たる実例として挙げられます。
BTIなんかは、底で大きく買い増しできたケースとして、高配当株かつ短期間で+40%という大きなキャピタルも得られました。
ただし、このタイミング投資は、あくまで資金管理や現金比率、当人の心理面などあらゆる要素が絡んできます。
⑤ 配当金は増えることもあるが、減ることもある
配当金は増えること(=増配)もありますが、減ること(=減配)もあります。
業績・利益・キャッシュフローが継続的に低迷すれば、金利や社債発行状況など資金調達環境や、経営陣の意思決定次第ではありながら、減配を余儀なくされることもあります。
ですから、「必ずもらえる」とは限りません。最近では、日産自動車が好例と思います。
⑥ 損することもあるし、株価が下がり続ければ不味
株式投資をやっている以上、含み損となる可能性は厳然としてあります。
長期投資、つまり投資期間を長くとれば、損失が限定的になる傾向が過去ケースで見られますが、含み損に堪えかねて売ってしまえば、その傾向の果実を享受することはできません。
いくら高配当だからと言って、株価が下がり続けて当人が生涯を終えてしまうと、配当というキャッシュイン(フローに着目)の観点からは意味がありますが、資産形成(ストックに着目)の観点に限った場合、好ましいとは言えないでしょう。
そのため、特に固有の値動きをする個別株では買値が非常に重要です。そして、これは高配当株に限りませんが先述の通り資金管理、給与などその他キャッシュフローの有無、当人の心理面なども重要になってきます。
高配当株のデメリット・注意点まとめ
以上、高配当株のデメリット・注意を要する事象をまとめました。
- 「配当を多く出す=良いこと」ばかりではない
- あくまで業績・利益・キャッシュフローが大事
- 「配当利回りが高い=買い時」とは必ずしも限らない
- 買値・資金管理・買い増し余資の有無、重要
- 配当金は増えることもあるが、減ることもある
- 損することもあるし、株価が下がり続ければ不味
恐らくあらゆる事象において、表と裏があり、表だけ見ていても実情は見えませんし、裏だけ見ていても実情は把握しづらいと思います。
つまり、米国株あるいは株式投資、これらを殊更に美化することは不味ですし、マーケットに臨む行動そのものが、やはり冷静であるべきと思います。冷静でいるには、デメリットも把握しておくことがその要素の1つです。
そしてこれらデメリットを部分的に補え得ると思しき投資対象の1つがETFです。(もちろん、ETFにも減配や株価下落のリスクがあり、万能ではありません)
私の場合、逆張り気味の個別株投資が、セミリタイアに至るまでは運よく機能しました。しかし、過去を分析すれば、年代によって奏功する手法としない手法があるのも事実です。
たとえば、2010年代はバリュー株全盛の時期があり、2020年代もそうなるとは限りません。つまり、今後は機能しないケースも当然あり得ますから、あくまで分散を徹底するという形です。
以上のような背景もあり、「一般的に一案としておすすめできるのは、(高配当)個別株よりも(高配当)ETF」という結論の背景にもなります。
そして念のため述べておきますと、本記事で述べたことは「傾向」です。つまり個々人の投資成績という個別事象まで語り切ることは不可能です。
同様に、投資手法を論じるということは、傾向や過去からの帰納的な事象・理論を語るに過ぎず、個々の実践や今後を論じることは事実上、不可能です。
そのため、本記事の内容も「傾向」であり、基本的な「理論」の要素が多分に含まれること、ご承知置き頂ければと思います。
高配当株投資を始めようと思う方は、これら勘案の上で、承知の上で、始められることをおすすめします。
セミリタイアに至るまで高配当株や連続増配株へ投資してきたからこそ、今の私の大きな一部があります。もし私と同様の手法で、人生の潜在的な選択肢を増やすことを目指される際には、これら勘案の上で実践された方がよいとも思い、改めてまとめました。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone!
分散については、以下のようなことも書いています。
幅広い層に親和性があるのは、ETFであり、投資信託だと思います。結局、総合的に勘案の上で、自分の投資目的に沿った・好適な手法を採る形が一案です。
逆に配当金のメリットを「実感」として焦点を当てたものは、以下です。