米国株においてレバレッジ型ETFの代表的なものとして、SPXLやTECLがあります。
これらレバレッジ型ETFに関するご質問について、以下回答いたします。
レバレッジ型ETFの長期積立を検討する際、認識したい3つの注意点
題名: レバレッジETFへの中長期投資について
メッセージ本文:
いつもブログ愛読させて頂いています。
ひと月ほど前に三菱サラリーマン様のブログを見つけた時、本当に目から鱗が落ちる思いで、その日からFIREに向けた手段について日々勉強をしております。
陳腐な表現ですが、今の日々が人生のターニングポイントとなっているという実感があります。夢の実現に向けた新たな道を示してくださった事、深く感謝申し上げます。
さて、題目にも書かせて頂いたレバレッジETFについて、三菱サラリーマンさんのご意見をお伺いしたく問い合わせさせて頂きました。
要点としましては、今後15年程度の積立を前提として、レバレッジETF “Direxion デイリーS&P500ブル3倍 ETF(SPXL)”への投資可能性について三菱サラリーマンさんのご意見をお伺いしたいです。
個人的な背景とはなりますが、質問に至った経緯を記させて頂きます。
~状況~
社会人4年目25歳、貯金300万円程度、過去投資歴はありません。
夢の実現の為、40歳までの15年の間で6,000万円の資産を築き、配当金/或いは年4%の資産切り崩しによるFIREを目標としています。
~レバレッジETF検討の経緯~
現在支出の最適化/転職活動などで投資余力の最大化に取り組んでいますが、シミュレーション上の目標積立額(月23万円)には遠く及ばない状況です。
※積立期間15年、年利5%、複利再投資で計算しました
種銭が目標に及ばない中、少しでもリターンを上げる為の施策としてレバレッジETFに活路を見出しております。(個別成長銘柄への投資についても勉強しておりますが、銘柄選定や購入タイミングの判断、購入後の定期的な決算分析等考慮すべき点が多く、初心者にはレバレッジETFの方が良いのではと感じています。)
しかしながら、レバレッジETFの長期積立は実践されている方をほとんど見かけず、何か大きな見落としがあるのではないかと不安を覚えています。
長文となってしまい恐縮ですが、ぜひご回答頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。
大変恐縮です。ご質問、ありがとうございます。
25歳からFIREをめざす場合、支出水準・家族との価値観次第ながら、いずれFIRE自体は十分可能と思います。ポイントはやはり支出水準ですね。
さて、レバレッジETFへの投資を検討する際に、押さえておきたい主なポイントは、以下の通りです。
- 指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る傾向
- やや高めの経費率
- 暴落局面で耐えられるのか
ポイント①:指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る傾向
そもそもレバレッジ型のETFとは、
- 連動する指数が、+1%(-1%)なら、+2%(-2%)
- 連動する指数が、+2%(-2%)なら、+4%(-4%)
ように設計された金融商品です。
では、レバレッジ型ETFの値動きの特徴を把握するために、3日間で以下値動きのケースを考えてみましょう。
Day 1 | Day 2 | Day 3 | |
ケース① | +2% | -3% | +1% |
ケース② | +2% | +3% | +1% |
ケース①:市場が上下するケース
Day 1 +2% |
Day 2 -3% |
Day 3 +1% |
|
指数 | 102 | 98.94 | 99.93 |
レバレッジ型ETF | 104 | 97.76 | 99.72 |
このように、レバレッジが乖離なく機能した前提(…※)でも、レバレッジ型ETFは、3日を終えた時点で指数よりパフォーマンスが劣ることが確認できます。
※厳密にはETFは需給によって市場価格が基準価格から乖離することがあり、その場合、パフォーマンスが落ちます
ケース②:市場が一本調子のケース
Day 1 +2% |
Day 2 +3% |
Day 3 +1% |
|
指数 | 102 | 105.06 | 106.11 |
レバレッジ型 | 104 | 110.24 | 112.44 |
市場(指数)が下落を挟まずに上昇するケースでは、理論的にはレバレッジ型は有効に機能することになります。ただし、このケースは長期的には起こり得ません。なぜなら、短期的には一本調子の上昇はあっても、長期的には必ず上下動を繰り返すからです。
ケース①で「このように、レバレッジが乖離なく機能した前提(…※)でも、レバレッジ型ETFは、指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る」と記載しました。この傾向は、投資期間が長期になるほど、影響が大きくなり、レバレッジ3倍だからといって長期で指数の3倍のパフォーマンスを上げることは難しいです。
ポイント②:やや高めの経費率
レバレッジ型のETFは、基本的に経費率が高くなります。
理由は、先物との値動き差・最低取引単位・金利など多々ありますが、わかりやすい一例を挙げると、「レバレッジとは、倍以上の資金の値動きをめざすわけなので、そのためには相応の資金調達コストが必要」とご理解いただければと思います。
たとえば、経費率0.1%以下のインデックスファンドが多い中、米国株のレバレッジ型ETFである【SPXL】の経費率は0.95%と高めです。
ポイント③:下落局面で耐えられるか
①で示した通り、レバレッジ型は下落幅も相応に大きくなります。
昨今のコロナショックで、暴落局面で早々とレバレッジ型ETFの投げ売りが見られました。
変動幅が大きくなるので、単純に下げた時の心理的負担が、ほかの商品よりも大きいことが要因として挙げられます。
長期投資とは、「長期的に右肩上がりを描くであろう投資対象に賭けることで、その果実を享受しよう」とする行為です。そして、長期的に暴落は必ず起こります。
そのため、長期投資では暴落局面で投げ売りしないことも重要になってきます。この観点においては、レバレッジ型ETFは、心理的に負担が大きくなるので予め注意が必要です。
まとめ
- 指数の倍率分よりパフォーマンスが劣る傾向
- やや高めの経費率
- 暴落局面で耐えられるのか
レバレッジ型ETFへ投資する際は、以上の3つの注意点は押さえておきたいところです。
これらのポイントを押さえた上で、以下のように「S&P500を上回ってきた良好な過去パフォーマンス・実績にBETする」ことを検討されるとよいかと思います。

青:SPXL、赤:S&P500
レバレッジ系の商品それ自体は、悪いものでもありません。
ただしその特性や傾向を押さえた上で取り組まないと、マーケットの変動が大きくなった時に冷静な投資行動につながらないリスクが増えがちです。
私は個人的にはレバレッジ型ETFに投資しません。しかしご質問者さまのように、ご自身の投資のゴールと現状を照らし合わせて同商品を活用して目標達成を早めることを狙うという選択肢も、やはりあるかと思います。
やや中上級者向けながら、逆相関性の傾向が見られる債券のレバレッジETFと組み合わせ、暴落時に債券レバレッジETFを売り、株式レバレッジETFを買い増すというリバランスも一案ですね。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone!
同じくレバレッジ系の商品であるCFDについて、記しています。
レバレッジを利かせるという意味では、モーゲージREITも同類と言えます。こちらも投資にあたっては注意点があります。
高金利通貨、私も学生の時に手を出していました(笑)。経験上も手出し無用です。