トータルリターンを比較し、気にすること。そこに弊害はあるか。
三菱サラリーマン様、はじめまして。
いつも興味深く拝見させて頂いております。
生き方や、モノの考え方、その精神性に至るまで数々の感銘を受けました。感謝しています。
私は株式投資を2年前から始め、ディフェンシブ銘柄で固めると共に、トータルリターンも追求してきました。市場平均を上回り、最速で資産形成をしたいという欲望も正直あります。
しかし、なかなか上手くいかず、トータルリターンを頑張ってほかの人や市場平均と比較しているうちに、だんだん疲れてきました。
最初から市場平均やアマゾンに投資をしておけばよかったのかと自問自答することもあります。
しかし、ディフェンシブとも言われるヘルスケアセクターのETFなどを主力とするのは自分にとってとてもとても心地よく、分配金はもっとうれしいのです。
自分の投資手法は、自分に合っていると思いながらも、市場平均に劣る自分に対してネガティブな感情を抱くのも事実です。
まとまりのない文章ですみませんが、お時間ある時にでも何かアドバイスいただけたら幸甚です。何卒よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。こういうお悩みは、もしかすると結構多いのかもしれません。
率直に申し上げますと、「相場環境や切り取る時期で如何様にでも変わり、更に自分のコントロール可能な領域が限定的なトータルリターンというものには、あまり気を揉まない方が吉」です。
気を揉まないようにするには、そもそも計算しないようにするか、注目対象を変えるか、市場平均連動のETFを買うことです。
私はとにかく経済的自由を達成したかったので、「配当収入>生活費」の状態を達成することが最優先課題であり、資産額の優先順位は、配当というキャッシュフローより低かったです。
資産運用の要諦。コントロール可能な領域とは。
資産運用の要諦は以下2点です。
- 収入ー支出の最大化
- 運用利回りの最大化
①は自分のコントロール可能な領域です。
②は自分のコントロール不可な領域です。
②より①に注力した方が、期待値の絶対値は別としても、確実です。効果は如実に素直に現れます。如実な効果はモチベーションを保ちます。
対して外部環境に左右されるコントロール不可能な領域に注力すると、消耗しやすいです。
投資手法には各々メリット・デメリットがあり、完全無欠の投資手法を見出すのは困難と思います。
結局、いかに自分に腹落ちさせ、納得することができ、自分の目指すゴールとの親和性が高いのか、このあたりを自分なりに探る作業が必要です。
そして、トータルリターンとは、数字であり理論です。実践は、少しニュアンスが異なってきます。
どういうことかと言うと、例えば仮にアマゾンが5年前に500ドルで、今2000ドルだったとすると、累積リターンは+300%です。これは理論と実践の2つで言えば、理論の範疇と思います。
一方、5年前にAmazonの潜在価値を見抜き購入し、今現在もホールド保有できているという事象。これが、理論と実践で言えば実践の範疇と思います。
この両者は分けて考えた方が私は良いと思います。実践部分の行動は誰にでも可能というわけではないからですね。
過去から現在に至る数字というのは、S&P500であってもアマゾンであっても、その数字以上でも以下でもありません。数字は数字です。自分がその数字を実現できるかどうかはまた別のお話になってきます。
この点は、資産運用を長期的に継続するにあたり、頭の片隅に置いておいても良い点だと私は思います。
トータルリターンの比較という行動
トータルリターンの算出自体はなんら悪影響を及ぼすことではありません。しかしこれを何かと比べだすと、果たしてどうでしょうか。
トータルリターンを算出するということは、1つの数値で可視化できる事象ができることです。これ自体は素晴らしいことです。
しかしその数字を特定の人や銘柄・セクター・市場平均と比べだすと、期間の取り方によっては恐らくどうしてもデメリットの方に目が向きがちと思います。人はないものねだりだと思います。隣の芝生は青く見え、その青々しさは必要以上に青く映り、自分の青さより目立つのです。必要以上の青々しさというのは、精神衛生上は好ましくありません。
上図のような配当金のグラフを作る方を目にすること、これは4年前に比べて格段に増えました。このグラフの有用性の1つは、「自動的に過去の自分と比べることになる」ということにあります。比較対象が他人ではありません。他人の額と比べる必要は必ずしもありません。
比較対象を、「他者」とせずに「過去の自分」とすることは1つの解です。
トータルリターンも同じです。別の人や別の銘柄・セクター・市場平均と比べるのは、私はしたことがないので想像に過ぎませんが、してもあまり精神衛生上は好ましくないだろうと推察します。
市場平均を上回ろうとすることは非常に立派です。上回れたらそれは素晴らしいことです。しかし比較することで、わざわざ負の感情を自ら抱え込むのであれば、その必要性には疑義が生じてきます。
たとえ同じ投資手法、同じ資金、同じ銘柄を保有していても、市場局面の変化に際する当人の感情の変化は人によって千差万別です。そのため、売買行動も千差万別です。
冒頭に挙げた通り、あまりにトータルリターンの比較で気を揉むようであれば、以下2案またはその両方を採ることが考えられます。
- 市場平均に連動するETFを主力とする
- 今まで通りの手法を採りつつ、トータルリターンは厳密に算出せず、資産額ではなく配当をKPIとする
市場平均に連動するETF、例えばVOOがあります。VTIも似た性質です。これらを主力とする形でも、長期的にプラスサムゲームを享受するという目的であれば、問題なく合致しています。
一方、今まで通り、うれしいと感じる分配金や心地よいと感じるETFに投資し、資産額ではなく配当に力点を置くという形も、精神性も重視した1つの形です。
まとめ
今や投資情報を発信する人は格段に増え、その成績や資産額も多様化し、上を見ればキリがないと思います。
つい比較したくなってしまうかもしれませんが、「学ぶことはないか」、「自分に応用できることはないか」。こういった観点で見ると、また見方も変わってくると思います。必ずしも比較する必要はないですね。
他人と比較すること自体に有用性がないわけではありません。場合によっては奮起材料になることもあれば、モチベーションになることもあります。
反面、その彼我のギャップに、モチベーションが減退することもあり得ると思います。
表があれば裏もあり、そこに表の部分を見出すのか、裏の部分を見出すのかは自分次第と思います。上手くコントロールしたいですよね。
情報があふれる現代では、そのような観点の重要性は更に増していると思います。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone.
理論と実践のお話は、以下記事にも共通するものがあります。
VTI・VOOについては、以下をご参照ください。