米国株の魅力の1つに、連続増配に限らず長期にわたって減配していない会社の存在があります。
その象徴的な企業が公益セクターに属する米電力会社、サザンカンパニー【SO】です。私もその株主還元姿勢に魅力を感じ、1万ドルをサザンに割いています。
本記事では、そんなサザンカンパニー【SO】を特徴づける6つの要素についてご紹介です。
【SO銘柄分析】サザンカンパニー、高配当かつ71年減配なき米電力会社
1.70年以上減配なし
2.配当に対するスタンス
3.株価の下方硬直性・ディフェンシブ性
4.フリーキャッシュフロー赤字
5.ボーグル原発
6.継続的に増加する債務
特徴①:70年以上減配なし
まず同社を語る上で外せない事実として、「1948年から71年間にわたって減配していない」ことが挙げられます。
サザンの会社HP(こちら)で、配当履歴が実際に記載されており、下図の通り1948年から減配なしで断続的な増配がなされています。
1株配当は以下の通り推移しています。
- 1948年 : 0.15 ドル
- 1968年 : 0.55 ドル
- 1988年 : 1.07 ドル
- 2008年 : 1.66 ドル
- 2018年 : 2.38 ドル
約70年間で160倍に増加と、過去においては素晴らしい実績です。
特徴②:配当に対する積極的なスタンス
サザンの「配当に対する姿勢」を表す象徴例として、2016年の年次報告書に記載された下図を挙げます。
上図は、「過去20年間において、同社株式の配当および配当再投資が、同社株式価値の増加のうち約69%を占めた」ことを示します。
「Over the past 20 years, dividends and dividend reinvestment have accounted for approximately 69 percent of the increase in our shareholder value, compared with approximately 40 percent of the increase in shareholder value for the S&P 500.」
(出所:Annual Report 2016)
当該文言を載せること自体に、同社の配当に対する自負・コミットメントが示唆されるとも解釈できます。
特徴③:株価の下方硬直性・ディフェンシブ性
リーマンショックを挟む2006年1月~2019年11月時点における累積利益(トータルリターン)の推移は下図の通りで、S&P500を上回ります。

青:サザン、赤:S&P500
リーマンショック近傍における最大ドローダウン(投資資産の累積利益が最も下落した時の下落幅を示すもの)は以下の通り。
- S&P500 :51.0%
- Southern:21.6%
サザンの下落率は、S&P500の半分以下の値に留まります。背景に株価の下方硬直性があります。
サザンは2018年の下落局面でも、その株価の下方硬直性を存分に発揮しました。当該特徴は、投資家心理的にはポジティブ要素です。
2020年1月には株価は70ドルを突破。約1年で1.6倍まで伸長。公益セクターの高配当株という地味な属性ながら、株価は大変に堅調。
伴い、1年前の当時5.4%あった配当利回りは、2020年1月末時点で3.5%へ。
特徴④:フリーキャッシュフロー赤字
上図の通り、2014年から2018年まで5年連続でフリーキャッシュフローが赤字です。背景に、投資キャッシュフローの慢性的な多さがあります。
投資CFの主な内訳は、電力会社の主たる経費とも言える「環境基準に適合する機器の導入、発電所・変電所・送電所の建設、および設備更新などの資本的支出」です。
しかしこの現象は、私のもう1つの保有電力株であるデュークエナジー【DUK】も同様です。他の電力会社も同様に、電力会社は投資キャッシュフローが増大しがち、FCFも赤字になりがちです。
FCFが赤字の場合、株主還元や事業継続のためのファイナンスが限定的になるため、投資する際はネガティブ要因です。
特徴⑤:ボーグル原発の存在
同社へ投資する際に留意しておきたいのは、「原発が事業ポートフォリオ内にあること」です。今となっては後述の通り良い面もあり悪い面ともなる一面です。
米国で約30年ぶりの新設計画であるボーグル原子力発電所3、4号機の増設工事を進めているジョージア・パワー社は、サザン傘下企業。
ボーグル原発は東芝の子会社だったウェスチングハウス(WH)が設計から建設まで担うも、WH倒産により、東芝は経営危機に陥ることになったのは記憶に新しいところです。
その後、東芝がWH社の債務保証金を2017年中に完済し、原発増設は継続。
2019年に入って、3、4号機の工事進捗率は現在、約77%とジョージア・パワー社からアナウンスあり、WH破綻以降は工期の大幅な遅れなど懸念されていましたが、目下建設作業は進行中との由。
ボーグル原発への懸念&利上げで大底を形成(2018年10月)
ボーグル原発に対する懸念が和らぎ、2019年の株価は下図の通り大変堅調。2020年初には70ドルを突破。
ボーグル(Vogtle)原発3・4号機の稼働遅延(2018年10月時点)
東芝の子会社だった米ウエスチングハウス(WH)が同原発建設を請け負っていますが、なにせ34年ぶりの原発建設ということで、工期は延びに延び、建設コストも見積より上昇。
2018年Q2決算で、10億ドルのコスト増を発表。同社は何度もボーグル原発のコスト負担悪化をこれまでも発表しており、累計で既に270億ドルに膨れ上がっています。
これは10年前に見込んでいたコストの倍額です。元々2016年に稼働するはずが、現在は2021年稼働予定。既に5年も工期が遅れています。
2016年にAGL Resourcesを120億ドルでの買収もあり、同社の負債は500億ドル、年間売上高の2倍に相当。(▶高配当電力株のサザン【SO】を40万円分買い増し!)
上述原発懸念&利上げのダブルパンチで株価は40ドルまで下落。結局そこが大底だったということになります。こういう局面での投資行動は結果次第で良くも悪くも大きなポイントになりそうです。
特徴⑥:債務が継続的に増加
フリーキャッシュフローが赤字であることと反作用の形で、債務が増えています。
下図は同社の現金・債務・純有利子負債・フリーキャッシュフローを年次報告書から抽出したものです。
2011年以降、債務は継続的に増加、2018年にようやく下げ止まりという状況。
減配なし71年間は偉業ながら、借金は継続的に増加しながらの増配ではあります。
ただし上図の通り、純有利子負債を総資産で除した「有利子負債依存度」は概ね0.3~0.4で推移しており、比率としては急増しているわけではありません。
サザンへ投資する際は、現在の「社債バブル」が大きな懸念点の1つです。
FRBの金融政策を背景として低金利が常態化する現在、社債への多額の資金流入により、企業は低利での起債が可能であってきました。
低利での起債によるファイナンスが困難となった際、企業の資金繰りにはネガティブです。
起債に頼って株主還元を行ってきた企業は、金利上昇に対する脆弱性が顕在化しますから、この点は留意しておきたいところです。
【SO】高配当かつ71年減配なき米電力会社まとめ
特徴を以下再掲します。
- 70年以上減配なし
- 配当に対するスタンス
- 株価の下方硬直性・ディフェンシブ性
- フリーキャッシュフロー赤字
- ボーグル原発
- 継続的に増加する債務
71年間減配なしという偉業は、やはり投資する際に魅力的です。連続増配だけでなく、このように長期にわたって減配していない企業があることも、米国株の大きな魅力の1つと思います。
自社HPにその配当ヒストリーを載せている姿勢自体が、投資家にとってはやはり好意的に受け止めることが可能な要素です。
一方で、同社へ投資する際には、少なくとも上述6つの要素には留意しておきたいところではないでしょうか。
目下、公益セクターは全体的に堅調なため、今から入るには躊躇する水準ながら、ポートフォリオの一角を占めるに値するセクターと思います。
以上、ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone!
同じく米電力大手デュークエナジーです。こちらも高配当で株価は大変堅調です。
ボーグル原発への懸念・利上げ時期に記したものです。